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博士論文要旨

論文題目:20世紀初頭のアメリカにおける家族をめぐるポリティクス
著者:後藤 千織 (GOTO,Chiori)
博士号取得年月日:2013年3月13日

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本論文は、19・20世紀転換期のアメリカ合衆国で連邦・州政府が制定した家族を管理・統制する法体系を、いかに貧困層や人種・移民集団を含む一般庶民が脱文脈化した形で流用したのかを分析する。既存の研究は、なぜ近代国民国家にとって家族の規律化が重要だったのか、また、どのような手段を用いて国家が家族に介入してきたのか、という点に力点を置いてきた。しかしながら、貧困・性的不道徳・公衆衛生問題といった社会問題に関わる行政当局や社会改革家がこれらの法体系を一方的に使用し、ジェンダー化された支配的社会規範から逸脱していると見なした労働者階級や移民・人種集団の私的領域に介入したわけではない。注目すべきことに、社会の底辺に生きる様々な集団が自らの家族やコミュニティの構成員の行動を規制するために、結婚・セクシュアリティ・再生産を統制する法体系を活用し、司法や福祉行政の介入を招く事態が見られた。本論文は、20世紀初頭の南カリフォルニアの裁判所記録と福祉政策資料を活用することで、公権力の私的領域への介入が持つ暴力性に注意を払いつつ、家族を管理する法律群を自らの目的に即して流用する貧困層や移民・人種集団のエージェンシーを描く。
本研究の目的は以下のとおりである。第1に、19世紀後半から20世紀初頭にかけて連邦政府やカリフォルニア州政府が結婚・再生産・性行為を管理する法律を制定するプロセスをたどり、どの社会集団がこれらの法律群の運用の対象となったかを分析することで、アメリカ合衆国の生権力の特質を明らかにする。その際、本論文は特に連邦政府と州政府の権限の違いに注目する。第2に、私的領域を統制する法体系が体現する理想的市民像や国家のイデオロギーが、人々が法律を自らの目的に即して利用する過程で、いかに草の根レベルに定着したのか、あるいは、読み替えられたのかを理解する。第3に、なぜ司法や福祉行政の介入に依存してまでも、家族メンバーの経済的・性的行動を監視し家族の結束を強めることが、移民や労働者階級にとって重要であったのかを明らかにする。ミシェル・フーコーらの研究は、家族は国家による市民の規律化・人口管理の結節点であったと論じているが、家族紐帯の管理が、なぜ一般市民にとっても重要であったのか、その動機と背景を考察する。

1. 20世紀初頭のアメリカにおける家族を統制する法律の生成
フーコーは『性の歴史』の中で、生殺与奪の権利に象徴される君主権力と対比させながら、近代国家権力の特質は「生権力」、すなわち、「生命に対して積極的に働きかける権力、生命を経営・管理し、増大させ、増殖させ、生命に対して厳密な管理統制と全体的な調整を及ぼそうと企てる権力」にあると論じている。生命に働きかける生権力は、個人の身体を規律化する技術と、人口を質的・量的に管理する技術から成り立っており、セクシュアリティはその二つの局面に同時に関与しているため、近代社会ではセクシュアリティが常に重要な政治課題となってきた。アメリカ合衆国でも19世紀末から20世紀初頭にかけて、性病・出産率・若い女性の性非行・異人種間の親密性・同性愛・精神薄弱など、人口やセクシュアリティに関する問題が政治課題となり、連邦政府や各州は婚姻・再生産・セクシュアリティを管理・統制する法律を次々に制定した。本論文の第1部はアジア人移民に関する政治言説や政策(第1章)と、南カリフォルニアの福祉活動を分析することで(第2章)、連邦政府と州政府の権限の違いに注意しながらアメリカ合衆国の生権力の特質を明らかにした。
 第1に、南北戦争後、連邦政府が移民・帰化政策を通じて、人口の質的・量的管理やセクシュアリティの管理に積極的に関与してきたことを示した。アメリカ合衆国では伝統的に各州が結婚や離婚の条件を定め、地域の状況を反映した福祉政策を独自に展開してきた。しかしながら、連邦政府も私的領域に属する結婚・再生産・セクシュアリティの管理に無関係ではなく、連邦レベルの移民・帰化政策を通じて特定の人種や階級に属する人々の家族形成や再生産を促した。南北戦争を通じて連邦政府の権限強化が進行し、出入国を管理する権利は州から連邦へと正式に移行した。連邦政府は移民・帰化政策を通じて、誰が移民する権利を持つのか、どの移民が家族を呼び寄せることができるのか、誰がアメリカ市民に帰化できるのかを定めることで、アメリカ市民の境界線を画定する役割を担った。本論文は中国・日本・インド・フィリピンからの移民に対する政治言説や移民帰化政策に着目し、アジア人移民排斥論が常にアジア人移民のセクシュアリティを問題化したこと、そして、連邦の移民帰化政策がアジア人の単身男性労働者の家族呼び寄せや家族形成を困難にすることで、彼らを安価な労働力として使い捨てる機能を持っていたことを明らかにした。アジア人移民の家族形成や再生産を防止する代表的な連邦の移民・帰化法案としては、アジア人女性を売春婦と同一視して渡米を禁止するページ法(1875年)や、「帰化不能外国人」であるアジア人と結婚したアメリカ人女性からアメリカ市民権を剥奪するケーブル法(1922年)があった。
第2に、19世紀末から20世紀初頭のアメリカの生権力において、州政府は「人種の自殺」を防止するために、結婚・再生産・セクシュアリティを管理・統制する種々の福祉政策を展開し、「白人」人種の質的・量的管理を目指した。白人中産・上流階級は奴隷制廃止・東南欧やアジアからの移民の増加・海外植民地の獲得・白人の出生率低下によって「白人」の覇権が揺らぐことを危惧し始め、人種別の出生率や幼児死亡率が政治的関心事となった。各州の福祉政策は、母性主義的福祉政策や禁絶的優生学を通じて、優秀な白人人口の割合を高めようとした。母性主義的福祉政策としては、女性労働者の労働時間を短縮し最低賃金を定めた女性労働者保護法、家庭で子どもを養育する母親(主に寡婦)を経済的に支援する母親年金、妊婦や乳幼児に特化した医療サービスがあった。また、禁絶的優生学に基づく福祉政策は、「精神薄弱」などの問題を抱えた「不適者」の再生産の防止を目指した。貧困家庭に介入した福祉団体は、乳幼児に医療サービスを提供した一方で、知的障害や精神障害を持つ子どもを専門施設に収容した。また、福祉関係者は女子の性的不道徳の根源に知的障害があると考え、性非行を犯した女子を矯正施設に収容した。不適者が収容された州立病院やソノマ州立ホームでは、彼らの欠陥が次世代に遺伝するのを防止するために断種手術が適応されることもあり、1920年までにカリフォルニア州では2558件の断種手術が行われた。これらの人口の質的・量的管理を目指す福祉政策は、すべての人々に等しく適応されたわけではなく、人種・国籍・居住権といった要因に左右された。南カリフォルニアでは、福祉政策を介した人口の質的・量的管理はメキシコ系住民を含む広義の「白人」を対象としており、アジア系住民は母性主義的福祉政策の恩恵を受けない一方で、禁絶的優生学の対象にもならなかった。
第3に、19世紀後半から20世紀初頭のアジア人移民を批判する政治言説は、アジア人移民のセクシュアリティを逸脱として描くことで、アメリカ的な家族規範を明確にした。19世紀後半の排華運動は中国人女性を売春婦と同一視し、中国人男性は家族を形成しない単身労働者と見なされた。20世紀初頭の排日言説は、写真結婚は当事者間の同意に基づかない不自由な制度であり、日本人女性は「過剰出産」を通じてカリフォルニアを植民地化し、無給労働者として働いていると批判した。また、インド出身の男性労働者は白人少年との間に親密な関係性を築いていると危険視され、1920年代から1930年代初頭にはフィリピン人男性がダンスホールなど公共空間で白人女性との親密性を提示して社会問題となった。アジア人移民の結婚・再生産・セクシュアリティを逸脱視する政治言説は、アメリカ的家族規範の輪郭―異性愛に基づく婚姻・男性ブレッドウィナー規範・家事と育児に専念する妻・適度な再生産・プライバシーの確立・衛生的な居住空間・家族で楽しむ余暇―を明確にした。19・20世紀転換期の急激な工業化や都市化の影響で貧困・売春・青少年非行などの社会問題が深刻化し、その原因を不道徳な家庭環境に見出した社会改革家は、アメリカ的家族規範が埋め込まれた福祉政策を通じて「白人」貧困層の私的領域に介入し、「白人」家族を強化することで社会問題を解決しようとした。
 本論文はアジア人移民に対する連邦の移民・帰化政策や州レベルの福祉政策を総合的に分析することで、連邦政府がアジア人移民の家族形成や再生産を防止し、各州は福祉政策を通じて「白人」人口の質的・量的管理と家族強化に関与していたことを明らかにした。

2. 家族を統制する法律群を飼い慣らす
 第2部は、南カリフォルニアの福祉団体の活動記録・裁判所資料・移民局資料を活用することで、先行研究では公権力による家族介入の犠牲者と見なされていた労働者階級や移民・人種集団が、家族を統制する法律群を利用してどのように自らの領域を管理しようとしていたのかを検討した。20世紀初頭の革新主義運動の結果、貧困・青少年非行・性的不道徳などの社会問題の発生を未然に防ぐために、裁判所は福祉行政と連携しながら、かつてコミュニティ・教会・家族が管理していた社会的領域への介入を強めた。これは公権力による家族への介入を支えると同時に、草の根の人々が公的資源を用いて自らの家族を必要に応じて管理する機会を得たことを意味した。また、19世紀後半から20世紀初頭は、連邦政府が出入国管理の権限を独占し、書類による移民管理行政を発達させた時代でもあった。「社会化した」裁判所へ持ち込まれた家族関係の訴訟や、出入国や家族呼び寄せをめぐって移民局と接触した中国系移民の事例を分析することで、法律に埋め込まれた中産階級的な家族規範やジェンダー規範を、多様な社会集団が内面化あるいは再解釈するプロセスを分析した。
 第3章はカリフォルニア州サンディエゴ郡の福祉団体の活動記録に基づき、家族扶養を怠った男性家長を処罰する法律を脱文脈化して利用しようとする労働者階級女性の戦術を分析した。19・20世紀転換期のアメリカ合衆国では、男性家長による家族遺棄や扶養義務不履行が貧困や青少年非行の原因として問題化され、ほとんどの州が家族を扶養しない男性家長を犯罪者として矯正・処罰する法律を制定した。貧困層の支援に必要な経費を削減するために、各地の福祉機関はこれらの法律を用いて男性労働者を規律化し、自立した家族を形成しようとした。福祉機関は男性家長による家族遺棄/扶養義務不履行を処罰する法律を貧困層の女性に知らしめ、貧困家庭と裁判所を媒介する役割を果たした。福祉機関が接触した貧困家庭の女性は、裁判所の権威や福祉機関の介入を利用して、男性家長に家族扶養を要求しただけでなく、家庭内暴力や過度の飲酒などの問題行為の是正を求めた。また、家族を扶養しない男性家長を処罰する法律の存在は、新聞などのメディアを通じても社会に浸透しており、必ずしも経済的苦境に陥っているわけではない女性が、家族遺棄や扶養義務不履行という法的概念を独自に解釈し、家庭を離れて各地を放浪している夫や、消費文化を謳歌するに足る経済的資源を提供しない男性家長の矯正を裁判所に求めた。家族遺棄/扶養義務不履行で訴えられた男性家長らは、実刑を回避するには家族扶養だけでなく、禁酒を誓うなど生活態度の改善を裁判所に確約する必要があり、女性たちは自らを「犠牲者」化して裁判所の権威を利用することで、限定的ではあるものの家庭内の権力関係を揺さぶった。
第4章は1920年代のロサンゼルスの日系コミュニティに注目し、移民法や結婚を管理する州法が、家族やジェンダーをめぐる対立に利用されたことを明らかにした。男性移民指導者層は家族形成と二世の誕生を日系コミュニティの発展の要と見なし、安定した家族形成を妨げる姦通や駆落ちなどの性非行の防止を目指した。1920年代を通じて日系移民女性が提起する離婚訴訟が続発し、男性指導者層はその背後に姦通があると論じ、離婚訴訟を起こす日系移民女性を性的に不道徳な女性として表象した。男性指導者層は市警・移民局・シティマザー・日本人会ネットワーク・探偵などの公的機関と協力し、性的不道徳を取り締まる移民法や州法を利用して、日系移民のセクシュアリティを統制しようとした。その一方で、離婚訴訟を起こした日系移民女性は、虐待・扶養義務不履行・家族遺棄といったアメリカの法的概念を独自に解釈することで、家庭で体験した精神的/身体的暴力や長時間労働などの困難を言説化し、離婚と性非行を同一視する男性指導者層を批判した。
 第5章では、移民局の出入国管理資料を用いて、中国人労働者の渡米やアメリカでの家族形成を禁じる移民政策を飼い慣らす中国系移民の戦術を分析した。1875年のページ法や1882年以降の排華移民法は、第6項証明や居住証明書といった身分証明書を導入し、連邦政府による書類を使った出入国管理が始まった。中国人の不法入国を規制するはずのドキュメンテーションの制度は、書類を不法に入手し虚偽のアイデンティティを使って渡米する中国系移民を増加させた。特に、アメリカ市民権の出生地主義や、国外で生まれたアメリカ市民の子どもにも市民権を与える制度を利用して、中国系移民はペーパー・ファミリーと呼ばれる書類上の親族関係を作り出して移民を非合法に入国させ、複数世代に渡る虚構と現実が混ざり合った中国系移民家族を形成した。また、メキシコ国境地帯に住むメキシコ系住民を念頭に置いて導入された「越境カード(border crossing card)」を獲得して身分証明書として利用し、国境地帯を往来する権利を得るなど、中国系移民は排華法だけでなく他の移民集団を対象とした移民政策も熟知しており、これらの制度を脱文脈化して利用していたことを明らかにした。
 以上のように、労働者階級やアジア系移民は、連邦政府や州政府が制定した結婚・再生産・セクシュアリティを統制する法律を独自の文脈で利用し、積極的に公権力の私的領域への介入を求める場合もあり、福祉機関や移民行政が一方的にこれらの法律を押し付け、家族を管理・統制したわけではなかった。家族を統制する法律を飼い慣らす草の根レベルの戦術の一つとして、法概念の独自の解釈が挙げられる。労働者階級やアジア系移民は、家族遺棄・扶養義務不履行・白人奴隷取引・虐待といった法律用語を自らが抱える家庭内部の問題に合わせて独自に解釈し、政策決定者が法律に込めた本来の意図を無化した。例えば、1920年代のロサンゼルスの日系移民指導者層は、「白人奴隷取引」と呼ばれる売春目的での女性の国際取引を禁止するマン法を、駆け落ちする男女や人種の境界を越えた親密性を取り締まるために利用した。また、書類による出入国管理や家族再統合を優先する移民法を利用し、現実と虚構が入り混じった家族の歴史を作り上げる中国系移民の戦術は、血縁を最重視する20世紀初頭のアメリカの家族概念を読み替えていたと言える。第2の飼い慣らし戦術としては、裁判所や移民局の権威を、家庭内部やコミュニティのパワー・ポリティクスに利用した。労働者階級女性や移民女性は家庭問題の「犠牲者」として公権力の介入を要請することで、裁判所や福祉機関の権威を利用して家庭内暴力や過度の飲酒といった男性家長の問題行動に挑戦することに成功した。また、移民コミュニティの指導者層は、「望ましくない移民」の出身国への送還を定めた移民法を利用し、コミュニティの異分子と見なされる人々を移民局へ通報して統制しようとした。第3に、労働者階級やアジア系移民は私的領域のコンフリクトを頻繁に裁判所・福祉機関・移民局に持ち込むことで家庭内部の対立を増幅させたため、福祉政策の本来の目的であった家族関係の強化を困難にした。
 私的領域を管理・統制する法律群を積極的に利用した労働者階級やアジア系の人々は、法律を自らの文脈に置き換えて飼い慣らした側面もあるものの、同時に法律に埋め込まれたアメリカ白人中産階級的な家族規範やジェンダー規範に部分的に取り込まれていった。家族を扶養しない男性家長を処罰・矯正するように福祉機関や裁判所に申し出た労働者階級女性は、福祉機関や保護観察官などの公権力を私的領域に招き入れることで、自らの日常生活も監視下に置かれ、中産階級的な価値観から逸脱した家事・育児・性行動が見つかれば、子どもを育てる権利を失うこともあった。日系移民男性は、セクシュアリティを管理する州法や移民法を利用してコミュニティの性非行を取り締まる一方で、排日言説や離婚訴訟の言語を用いて日系移民男性の態度を問題化する日系移民女性の戦略によって、アメリカ的なジェンダー規範や家族規範と折り合いを付ける必要性に直面した。中国系移民はペーパー・ファミリーと呼ばれる虚偽の親族関係を作り上げ、新たな移民を呼び寄せ続けたが、その戦略があまりにも成功したために、すべての中国系移民家族が「不法移民」と同一視された。中国系移民はアメリカに滞在する権利を証明するために出生証明書や婚姻許可証を取得する必要性に直面し、アメリカにおいて合法的かつ正当と見なされる家族関係、すなわち、一対一の男女の婚姻関係と血のつながった子どもからなる家族を形成するに至った。
 本論文は20世紀初頭のアメリカ合衆国において、結婚・再生産・セクシュアリティを統制する法律群が人口の質的・量的管理を通じて社会問題を解決しようとする公権力によって用いられただけでなく、労働者階級や移民が脱文脈化しながら積極的にこれらの法律群を活用していたことを明らかにした。アジア系移民がこれらの法律を積極的に用いたのは、アジア系移民が家族を形成する能力を欠いていると見なされていたためである。アジアからの移民を批判する政治言説は、中国系コミュニティは「売春婦」・単身男性労働者・「ペーパー・ファミリー」から成り立つ家族不在の世界であり、日本人男性が妻を呼び寄せるために用いた写真結婚は、「売春婦」を輸入する手段、あるいは、当事者間の同意を欠いた非アメリカ的な関係であると論じた。アジア系移民のセクシュアリティを常に逸脱視する政治言説に対抗するために、日系移民や中国系移民は家族を統制する州法や移民法を脱文脈化して用いながら、コミュニティ構成員の性非行を管理し、家族関係の正当性や合法性を証明する必要があった。
また、家庭のプライバシーは一部の人種や階級に与えられた特権であり、婚姻・再生産・セクシュアリティが政治化された19世紀後半から20世紀初頭のアメリカを生きたアジア系移民や貧困層は、プライバシーの権利を享受することは許されなかった。私的領域を統制する法律群に絡み取られた人々にとって、これらの法律を自らの文脈に置き換えて利用することが、彼らに残された唯一の飼い慣らしの戦術だったのである。

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