社会学研究科の授業について

社会学研究科での学修と学位取得

 社会学研究科のカリキュラムの最も大きな特徴は、社会科学を中心に、人文科学や自然科学関連にまたがる多様な授業科目が、社会と人間、社会と文化の関わりについての今日的な問題への関心を共通の核として、幅広く用意されているという点にあります。大学院での学修は、おのずといずれかの学問(ディシプリン)に足場を置いて行われることになります。しかしそれとともに、今日では多かれ少なかれ学問横断的(学際的)なアプローチを取ることもごく普通のこととなっています。社会学研究科では、学生が自らの問題関心にしたがって、自分自身の専門的な学問について深く学ぶと同時に、関連の或隣接分野の演習・講義や専門分野を越境する諸プログラムに参加することで、学際的な研究の足場をつくることができます。

第一演習と指導教員

 社会学研究科では、入学に際して、原則として出願時に希望した教員が指導教員となり、また志願した「研究分野」(社会学研究分野・共生社会研究分野・歴史社会文化研究分野・超域社会研究分野のうちの一つ)に所属することになります。また、指導教員の担当する専攻に応じて、総合社会科学専攻もしくは地球社会研究専攻のいずれかにも所属することになります。
 指導教員の主宰する演習(ゼミナール)は社会学研究科では必修科目の一つで、「第一演習」と呼びます。第一演習の運営のしかたは教員によってさまざまですが、基本的にはゼミナールに所属する院生が一堂に集まって相互の研究発表を検討し、討議し合う場です。第一演習は、ゆるやかな学問共同体のような性格をもっており、教員のみならず先輩の院生の学問や院生生活についての助言は、非常に参考ともなり、励みともなります。第一演習は、教員と院生の全員の協同的努力によって形づくられるものですから、積極的な態度でコミットしてゆくことが重要です。いずれにしても、この第一演習が院生生活の基本的な足場となります。

第二演習の履修

 第一演習のほかに、もうひとつの演習を第二演習として履修することができます。第二演習は必修ではなく、各院生が自らの学修と研究のために必要であると考える場合に、自発的に選択し、履修するものです。特に複数のディシプリンや研究分野にまたがる研究課題を追究している院生には、第二演習の履修が非常に有効です。また第一演習と異なり、第二演習は研究分野、専攻、さらには研究科を超えた自由な選択が可能です。ただし、あらかじめ参加が可能かどうかを当該教員に確認する必要があります。また第二演習は、半期ごとに変更することも、特定の学期にのみ履修することも可能です。第二演習はこのように、一般の講義のような形で履修することができますが、演習としての積極的なコミットメントが求められますので、熟慮のうえ選択するように心がけてください。

講義の履修

 演習とともに学修の土台となるのが、講義への出席です。社会学研究科の授業科目の多彩さについてはすでに触れたとおりですが、社会学研究科の履修規定の特徴は、その自由度にあります。原則として院生は、自らの属する研究分野に縛られることなく、専攻全体の講義を自由に選択することができます。修了要件を満たす上で、総合社会科学専攻と地球社会研究専攻との間に若干の違いはありますが、その違いは大きいものではありません。2023年度から、両専攻の垣根をより低くし、より統合的に研究・教育を行う体制へと移行するのに伴い、専攻間のカリキュラム上の違いは、総合社会科学専攻に属する院生のみ「社会科学研究の基礎」2単位、地球社会研究専攻に属する院生のみ「地球社会研究の基礎」2単位が別個に修了要件となっている点のみになりました。ただし、この必修科目は分野や専攻をまたいで複数履修することも可能です。

特色あるプログラム

 演習と講義に加えて、社会学研究科には特色ある授業プログラムがあります。

先端課題研究と学際共創研究(東京外国語大学連携)

 現代社会で生起している具体的な問題をテーマに設定し、1テーマ毎に3年間の研究期間を設け、研究分野の枠を超えた教員(5~10名)と院生とが共同で行う学際的研究プロジェクトとして先端課題研究があります。これは授業科目として実施されるので、単位修得も可能です。通常は月に1回の研究会という形で行われ、教員と院生が交互に成果を発表したり、外部からゲストスピーカーを招いたり、またテーマによっては、全員でフィールド調査に出かけたりします。2023年度からは、東京外国語大学の教員や院生も加えた同種の共同研究プロジェクトとして学際共創研究がスタートします。専攻や研究分野を問わず、社会学研究科の大学院生はいずれのプロジェクトにも自由に参加することができます。特定年度のみの参加も可能です。このプロジェクトでは、様々な領域の先端的な研究成果に触れることができるだけでなく、問題志向的・課題志向的な研究の進め方、リサーチワークやプレゼンテーションの方法などを、実践的に学ぶことができます。

アーカイヴスカレッジ・発信英語力

 社会学研究科では、国文学研究資料館との連携に基づいてアーカイブズ関連科目を履修することができ、史資料の保存・利用に関する専門知識を取得したり、アーキビスト関連の資格を取得したりすることができます。また、ブリティッシュ・カウンシルの協力を得て、学術的な英語コミュニケーション能力を鍛えるプログラム「発信英語力」科目も用意されています。

社会調査士・教員免許

 社会学研究科の授業科目に基づき、全学にもひらかれた資格取得プログラムとして、社会調査士(学部卒業者向け)・専門社会調査士(修士修了者向けのプログラムがあります。また、社会学研究科の院生は、中学社会と高校地歴、高校公民の専修免許を取得することも可能です。研究職を目指す院生には、教育力強化を目指す「ティーチングフェロー・プログラム」として「教育技法の実践」も開講されています。さらに言語社会研究科の提供するプログラムを利用することで、学芸員資格を取得することもできます。