大学院社会学研究科の紹介

 一橋大学の大学院社会学研究科(1953年設置)は、社会科学・人文科学の幅広い諸分野を横断する教育と研究の拠点としてその歴史を紡ぎ、2023年に創立70周年の節目を迎えました。社会学研究科は創設以来、社会科学の総合的な研究教育を牽引する国内最高水準の研究教育拠点として唯一無二の役割を担ってきました。

 本研究科には、現在、総合社会科学専攻と地球社会研究専攻の二専攻があります。両専攻はそれぞれに特色ある教育実践を展開してきましたが、さらなる発展を目指して、2023年度よりあらたな組織改編を行うことになりました。この背景には、ディシプリンに基づき個別分野の先端的な知と方法を学ぶ総合社会科学専攻と、グローバルな視点から問題を発見し、解決に向けた知と方法を学ぶ地球社会研究専攻の教育が、20年余りの間に互いに融合し、その垣根が低くなり、一体的なものとなってきたことがあります。21世紀に入って以降、社会科学全般がグローバルな課題に取り組み始め、グローバルイシューを扱う研究や領域横断的な学際研究への志向性が、研究科全体に広まっていきました。一橋大学が「指定国立大学法人」として世界最高水準の研究教育拠点を目指す中、全学のグローバル教育推進の大方針にそって、社会学研究科も一体となって、グローバルな課題に応える組織になっていくことが求められたこともあります。
 こうした背景から、社会学研究科は両専攻を有機的に統合し、4つの研究分野に再編して、教育研究にあたることにしました。第一に、国境を越えた人の移動や性現象を含みつつ社会学を軸として社会と人との関わりの解明を目標とする「社会学研究分野」 、第二に、教育、スポーツ、文化精神医学、社会政策等人びとのウェルビーイングの達成を目標として政策・理論研究を行う「共生社会研究分野」 、第三に、歴史学、社会思想史、哲学・倫理学、文芸思想研究、言語社会学からなり人文科学を探究する「歴史社会文化研究分野」、第四に、環境・社会・政治・人間行動を人文・社会・自然科学横断的に探究する「超域社会研究分野」です。

 専攻にかかわらず、すべての教員は上記の4分野に所属しています。新しい地球社会研究専攻は、研究教育に3本の柱――①学際的な移民・難民研究、②学際的なジェンダー・セクシュアリティ研究、③アメリカ史・グローバルヒストリー―を立て、総合社会科学専攻とともに、グローバル社会科学の研究拠点となるべく教育・研究を進めていきます。

 今日、日本と世界が直面している多くの複雑な課題に立ち向かっていくためには、豊かな教養、高い倫理性、高度の専門的知識をもって、確かな批判力、豊かな構想力と問題の分析・解決能力を有する研究者、職業人が欠かせません。半世紀以上にわたり総合的な社会諸科学の教育研究拠点としての歴史を刻んできた社会学研究科は、新しい時代に向けて、総合性・専門性・人間性・国際性の涵養を重視し、これらの基盤的能力を備えた大学院生を育成することをめざしています。

大学院社会学研究科分野(2023年度より)