連続市民講座

一橋大学社会学部・読売新聞立川支局共催 連続市民講座

「現代」という環境—10のキーワードから

講義概要

4月22日(土) 渡辺雅男:下流社会—格差という社会環境

昨今話題の格差論議、いったいなにが問題になっているのか。その一方、なにが見落とされているのか。では、格差の現実はどのようなところに見られるのか。経済・政治・教育・文化・意識など、さまざまな分野に目を向けてみます。最後に、格差社会のかなたにはなにが控えているのか。また、わたしたちは格差とどう向き合ったらよいのか。社会>科学の立場から、考えてみます。

5月20日(土) 嶋崎 隆:エコロジー—地球生命圏という自然環境

環境問題は、地球温暖化問題に関する京都議定書が話題になったように、全地球規模で待ったなしの状態です。とはいえ、何か即効の対策があるわけでもなく、まずは人間−自然関係を「生命」と「健康」をキーワードに、見直すことから始めることが望まれます。そこにエコロジーの課題があり、それは一方で社会批判となり、他方で自然への沈潜とな り、さらに、エコロジカルなライフスタイル形成の問題にもつながるでしょう。

6月17日(土) 尾崎正峰:ワールドカップ—グローバル化の中のスポーツ環境

FIFAワールドカップは、オリンピックと並んで、世界の人々の耳目を集める大イベントといえるでしょう。このように、民族、言語、文化の違いを越えて人々に親しまれているスポーツですが、グローバル化が進む現在、さまざまな変容がもたらされています。その姿を、越境、混淆、メディア、などをキーワードに、ドイツ大会の予選リーグで日本と>同組になったオーストラリアのスポーツとサッカー事情を取り上げながら見ていきたいと思います。

7月15日(土) 林 大樹:まちづくり—参加と協働の人間環境

多摩地域のような成熟した都市地域では、すでに街にある様々な<資源>の活用で、安全で暮らしやすい生活環境の形成が可能なはずです。ところで街の<資源>には、水辺や緑の自然環境、道路や鉄道などの交通環境、住宅や公園などの生活環境がありますが、最も重要な<資源>は住民のパワーです。この講義では、参加や協働、社会起業など住民>のパワーを活用した「まちづくり」を考えます。

9月16日(土) 木村 元:少子化—歴史の中の教育環境

多産多死から少産少子という大きな人口動態の変動の中に日本(先進国)の現代があり、そうした動向が教育の環境を大きく規定しています。その過程にどのような産育行動が取られたのか。教育の枠組みを広げつつ考えると同時に、一方で、就学、進学、不登校の動向といった教育人口自体が新しい教育の環境を作り上げて教育の性格を定めている点>に注目して考えたいと思います。

10月21日(土) 古茂田 宏:ミーム・プール—遺伝する文化環境

生物の進化については遺伝子レベルの解明が急速に進んでいますが、人間の社会や文化の多様性と変容はDNAだけでは説明できません(イスラム教徒の遺伝子など存在しない)。しかし変異・淘汰というプロセスによって進化を説明する機械論的発想は、狭義の生物遺伝子(ジーン)以外にも適用可能なようです。広義の自己複製子のひとつとして文化的 遺伝子(ミーム)を仮定すると、現代の様々な社会現象はどのように読み解けるでしょうか。

11月18日(土) 木本喜美子:雇用平等—職場というジェンダー環境

現代社会において男女間の雇用平等の達成が大きな課題になっています。それを阻んでいるものはいったい何なのか。従来、家事・育児といった女性の家庭内役割から説明されることが多かったが、果たして本当にそうなのか。もっと職場それ自身に目を向け、職場組織をジェンダー視角から解剖してみる必要があるのではないか。実態調査にもとづい>て考えてみます。

12月16日(土) 宮地尚子:トラウマ—日常生活のメンタルヘルス環境

トラウマという言葉からは、戦争や犯罪、災害や事件、事故など「非日常」を連想することが多いかもしれません。けれど、日常環境のなかにもたくさんのトラウマが埋もれています。いじめ、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、セクシュアル・ハラスメントなど数え上げればきりがないですが、そのうちの幾つかを題材に、「人の心が傷つく>」ということについて、社会科学と精神医学の両側面から考えてみたいと思います。

1月27日(土) 加藤哲郎:インターネット—情報という擬似環境

情報社会といわれて久しい昨今です。テレビやファクスの段階からインターネット、携帯電話の時代に入って、くらしのあり方も大きく変わりました。職場や学校ばかりでなく家庭にも溢れる情報が入りこみ、こどもたちのコミュニケーションもメールやケータイを介するようになりました。かつてマスコミの伝える現実が疑似環境とよばれ、リアルと>バーチャルという区分がありましたが、いまやバーチャルな情報環境がリアルな現実の重要な一部となっています。

2月17日(土) 渡辺 治:憲法改正—憲法という環境の現在

現在、憲法改正が政治日程にのぼっています。ふだん私たちは、憲法が私たちの生活をいかに規定しているかを感じずに過ごしています。しかし、実は憲法は、私たちの日々の生活から人生設計までを規定する「環境」を構成しており、憲法によって社会や生活のあり方は大きく異なっています。現に、明治憲法下と日本国憲法下では、私たちを取り巻>く平和や自由、福祉、教育のあり方は一変しました。講義では、現行憲法がいかなる環境を作ったかを平和と福祉、自由に焦点をあてて明らかにし、それが憲法改正でいかに変えられようとしているかを検討したいと思います。