「一橋大世界史・東欧史研究奨励基金」お知らせ

   ・2025年9月10日:2025年度「世界史・東欧史優秀論文」の選考結果を発表しました。
   ・2025年3月14日:2025年度「世界史・東欧史優秀論文」学部卒業論文の部/大学院生論文の部の募集を開始しました。
   ・2025年2月21日:一橋大学世界史・東欧史研究奨励基金を設立しました。

  

世界史・東欧史研究優秀論文」 2025年度 選考結果

  一橋大学世界史・東欧史研究奨励基金は、世界史または東欧史の分野での学生による優れた論文を表彰します。

この度、2025年度「学部卒業論文の部」「大学院生論文の部」について、委員会による厳正な審査選考の結果、下記の論文を、各部の表彰論文として決定しました。講評を付して、ここに発表します。




【学部卒業論文の部 2025年度優秀論文】

佐藤 史人

「バートリ朝トランシルヴァニア侯国とポーランド=リトアニア共和国の同君連合―形成と維持(1576-1586)」
(早稲田大学文学部2023年度)

講評
 ヨーロッパ近世史研究の複合国家研究の動向を視野に入れつつ、16世紀後半のトランシルヴァニア侯・ポーランド王バートリ・イシュトヴァーンの分析を目指す意欲的な卒論であると評価できる。近世ハンガリー・トランシルヴァニア史の基本史料集所収の一次史料の読解を試み、ハンガリー語による研究文献も複数参照するなど、近年の研究動向に照らして「同君連合」の形成・結合維持の実態分析を試みており、学部卒業論文として高く評価できる。バートリの遠隔統治の実態をより具体的に明らかにすることができれば、これが「同君連合」と呼ぶべきものであるのか、近世中欧の複合君主政の諸形態の中でどのような位置づけになるのかを考察することができるだろう。近世史料の読解、概念の吟味の精度をより一層高め、また、英独語・中欧各国語で近年活発に展開されている関連研究文献を精力的に読み込んでいくことで、研究の意義を高めていくことを期待する。



【大学院生論文の部 2025年度優秀論文】

佐藤 健人

「諸身分反乱期ボヘミア王冠諸邦における連合形成―事前交渉と連合規約の分析から―」
(『東欧史研究』47号、2025年、3-20頁)

講評
 三十年戦争初期の諸身分連合(ボヘミア連合)を、先行研究の吟味と連合規約等の一次史料テキストの丁寧な分析を通じて、中世ボヘミア王国と周辺諸邦の従属性・水平性を再検討し、ボヘミア連合における結合の様態を明らかにした労作であり、上質な論文である。先行研究や史料・文献がしっかりと検討されており、論旨・構成も明快である。16-17世紀の中東欧における君主―諸身分関係、諸身分・諸領邦間で形成される「連合・連盟」の思想史・国制史的な位置づけをめぐっては、近代国家形成にかかわる議論に直結する形で活発な議論が行われており、本論文は、そうした研究動向に貢献できるものといえる。一部に、論旨の明快さが機械的で単純化された議論との印象を与えることに工夫の余地がある。また、ヨーロッパ史規模、世界史規模での本論文の位置づけをより視野に入れた議論へと発展させることが期待される。




 「一橋大学世界史・東欧史研究奨励基金」とは?

 一橋大学大学院社会学研究科秋山晋吾研究室は、2024年度に世界史・東欧史研究の第一人者である南塚信吾氏(千葉大学・法政大学名誉教授、NPO法人世界史研究所元所長)からの寄附金を基に、「一橋大学世界史・東欧史研究奨励基金」(通称:南塚基金)を設立しました。基金では、世界史・東欧史研究の発展のために、大学院生を対象とした優秀論文の表彰、ならびに、大学院生の日本国外への調査研究渡航費の助成をおもな事業として実施します。基金の運営、論文表彰・渡航費助成の審査は、一橋大学内外の世界史・東欧史研究者によって構成される運営委員会が担います。論文表彰・渡航費助成の募集は、毎年度、ウェブサイト上で告知します。
運営委員会
 ・秋山晋吾(委員長:一橋大学教授)
 ・貴堂嘉之(一橋大学教授)

 ・戸谷浩(明治学院大学教授)
 ・南塚信吾(千葉大学・法政大学名誉教授)
                  (2025年度 50音順)