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調査と方法Ⅰ(アクション・リサーチ論)

最終変更日時 2009年03月23日 11時11分


【授業概要】

 担当は浅見靖仁教授です。アクション・リサーチでは、調査対象者をただ単に情報提供者としてだけ見なすのではなく、調査の立案や調査結果の分析・解釈、さらにはさまざまな社会問題に取り組む際の重要な協力者としても見なします。アクション・リサーチについて学ぶことは、アクション・リサーチ以外のタイプの調査を行う場合でも、調査者と調査対象者との関係を意識化し、自分が行う調査が調査対象者やさらには社会全体にとってどのような意味をもつのかについて考える上で、貴重な手がかりを与えてくれます。この授業では、(1)調査者と調査対象者との関係についてのさまざまな考え方を知り、(2)インタビュー技術や映像資料や音声資料の収集・作成・編集などの具体的な技法についても学び、(3)受講生のこれまでの調査経験を再検討し、実際にいくつかのチームに分かれて調査を行うことによって、質的調査のおもしろさと難しさについての理解を深めてもらいます。


【授業の目的・到達目標と方法】

 アクション・リサーチの方法論について学ぶとともに、アクション・リサーチに必要なスキルを身につけることを目的とします。アクション・リサーチにおいては、状況をただ客観的に描写したり、分析したりするだけではなく、問題解決のための具体的な取り組みを常に念頭に置き、被調査者にも調査や調査結果の分析に参加してもらったり、また調査者が問題解決のためのアクションに自ら参加し、そのアクションの結果をも分析対象にすることが求められます。このような調査を行うためには、通常の調査とはやや異なる配慮や工夫が必要となりますが、アクション・リサーチに関する学説史の検討、ケーススタディーの分析、さらには実際に調査を行ってみることによってアクション・リサーチに対する理解を深めることを目指します。


授業のスケジュール】

課 題

内 容

1

アクション・リサーチ論の系譜

Janet Masters, "The History of Action Research," Action Research E-Reports, No.3, 2000 をテキストにして、アクション・リサーチが生まれた背景やその成果と問題点について学びます。なお受講希望者の数が16名を越えた場合は、受講者の数を16名にするための抽選を第1回の授業の中で行いますので、受講希望者は必ず第1回の授業に出席して下さい。

2

調査対象者との関係(1)

Ledford, Jr. Gerald E., "Transference and Countertransference in Action Research Relationships" を題材にして、調査者と調査対象者の関係について考える。

3

インタビュー実習

インタビュー実習:受講者同士で模擬インタビューを行い、その様子をビデオで撮影し、インタビューのさまざまなスタイルについて考えます。

4

インタビューの技法

第3回の授業で撮影したビデオをもとに、インタビューの技法と「アクティブ・インタビュー」という考え方について学びます。

テキスト:ジェイムズ・ホルスタイン/ジェイバー・グブリアム/ 山田富秋他訳『アクティブ・インタビュー』せりか書房、2004年。

5

ビデオ撮影と編集の基本

アクション・リサーチにおいて重要な役割を果たすことの多いビデオ作品作成のために必要な撮影と編集の基本的な技能を学びます。

6

映像資料の作成とその効果的な利用方法

アクション・リサーチのためのビデオ作品の作成方法と論文作成方法を対比しながら、映像資料の作成方法とその効果的な利用のしかたについて学びます。

7

調査対象者との関係(2)

Dickson, G. et al. "The External Researcher in Participatory Action Research"を題材にして、調査対象者との関係と調査結果の分析、発表方法との関係について考えます。

8

社会問題へのアプローチ方法

調査者が調査対象者とさまざまな関係をもちながら社会問題について考察する際の調査者の「スタンス」のとり方について考えます。

テキスト:金森修『社会問題の社会学:構築主義アプローチの新展開』世界思想社、2000年。

9

ビデオ作品制作実習(1)

アクション・リサーチ的な短編ビデオ・ドキュメンタリー制作のための実習を行います。

10

ビデオ作品制作実習(2)

アクション・リサーチ的な短編ビデオ・ドキュメンタリー制作のための実習を行います。この日は通常の授業時間終了後、午後から夕方にかけても作業をしてもらうことになります。

11

アクション・リサーチの理論

アクション・リサーチについてさまざまな立場から理論的に考察した文献を読んで、アクション・リサーチの意義と問題点について考えます。

テキスト:Fals-Borda, O. The Application of Participatory Action Research in Latin America(PAR Vol. III, 33); William F. Whyte, “Advancing Scientific Knowledge Through Participatory Action Research,” Sociological Forum, Vol. 4, No.3 (Sep., 1989)

12

実習の成果の発表

受講生が作成した短編ビデオ・ドキュメンタリーを見ながら、ビデオ・ドキュメンタリー作成の過程で、取材対象者とどのような関係を築いたか、また取材や調査結果の社会的還元についてどのような可能性を感じたかについて報告してもらいます。

13

調査者の社会的役割

授業全体のまとめを行います。