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新プログラム「キャリアデザインの場としての大学院」について

最終変更日時 2008年03月18日 15時40分

1. これまでの経緯

 一橋大学には、社会学研究科が代表する研究者養成を主体とする大学院と、MBAコースや法科大学院のような資格取得を目的とする専門職大学院とが併設されています。このように大学院の人材養成目的が複線化するなかで、社会学研究科は、大学院教育の充実にむけ、これまでさまざまな努力を積み重ねてきました。優れた研究者養成を目的とした博士論文作成指導体制の強化(論文指導委員制度、博士論文計画書審査制度等)は、そのひとつです。その結果、年度あたりの博士号取得者数が平成12-15年度平均8.25名から平成16-18年度平均18.3名へと飛躍的に増加し、本研究科は全国の社会科学系大学院のなかでも卓越した博士号輩出研究科になりました。
また、社会学研究科は、平成18年度に「社会科学の先端的研究者養成プログラム」(文部科学省「魅力ある大学院教育」イニシアティブ)を発足させました。アカデミックキャリア志望、ノン・アカデミックキャリア志望を問わず、大学院修了者に必要な基盤的教育と専門応用的教育の場を用意し、かつ先端的で実践的なスキル訓練の機会を提供するためです。同プログラム(通称「魅力」)の履修院生は、平成197月末までで延べ400名に上りました。博士後期課程に在籍する院生の、3名に2名が同プログラムを利用してきたことになり、院生のニーズが掘り起こされ、活発な研究活動を促すことができたといえます。また、留学生の利用率も2人に1人と高く、同プログラムが国際的に魅力的である点も特筆すべきでしょう。
「魅力」プログラムは、平成19年度をもって終了しました。それを継続発展させるために、本研究科は
新しい大学院教育プロジェクト「キャリアデザインの場としての大学院(入口・中身・出口の一貫教育プログラム)」をもって文部科学省「大学院教育改革支援プログラム」に応募し、昨年採択されました。新プロジェクトは、平成19年度から平成21年度まで、院生の皆さんに様々なプログラムを提供していきます。

2. 「キャリアデザイン」プログラムの新しさ

 本プログラムは、つぎの3点において、本研究科にこれまでなかった新しい視点や方法を打ち出します。

(1) 院生自身が主体の「キャリアデザインの場」という新たな発想
(2)
入口・中身・出口を一貫して捉える教育プログラムの提示
(3)
キャリアデザイン支援の充実

1. 院生自身が主体の「キャリアデザインの場」という新たな発想
 従来の大学院教育の主体は、もっぱら教員でした。新プログラムでは、これを院生自身が主体の「キャリアデザインの場」という新しい発想に切り替えます。院生には、産官民学間の職業的流動化がいっそう進む21世紀社会に十分貢献しうる研究者・高度職業人として、自らを育ててもらわねばなりません。院生自身が大学院での研究活動を自立的に構想・立案して実施し、それを完遂して成果を出すトレーニングが肝心なのです。本プログラムは、そのような独立的研究を、さまざまな形で支援することを目的としています。

2. 入口・中身・出口を一貫して捉える教育プログラムの提示

 「魅力」すなわち「社会科学の先端的研究者養成プログラム」は、後期博士課程の教育内容充実に特化したものでした。それに対し、新プログラムは事業対象を拡大し、大学院がキャリアデザインの場であることを博士後期課程・修士課程双方のすべての入学者にいかに自覚させるかという入口、教育内容の充実という中身、就職・進学支援という出口、これらを一貫させて初めて、大学院教育の実質化が組織的・体系的に完成すると考えます。したがって、本プログラムでは修士課程院生の幅広い参画を歓迎します。

3. キャリアデザイン支援の充実

 研究者養成は時間がかかるものとされ、修士修了者のキャリアデザインにこれまで十分な意が用いられてきませんでした。その結果、人文社会系の大学院では休学者や留年者が少なくないという状況が常態化しました。本研究科も例外ではありません。しかし、産官民は、高度な学術能力(基盤力+専門応用力)を備えた人文社会系院生に大きな期待を寄せるようになりつつあります。その期待に応え、院生のキャリア意識を高め、院生と社会や企業の連携をはかるには、専門的なキャリアデザイン支援者が必要です。本プログラムでは、それを側面支援する専門家を修士課程、博士後期課程のそれぞれに配置します。
院生の皆さんが、これらの新しい視点や方法にもとづく「キャリアデザインの場としての大学院」プロジェクトを十分に活用し、21世紀にふさわしいキャリアデザインとはどのように構想可能、実現可能なのかを自覚し、
モチベーションある大学院生活を送ることを、本研究科は期待しています。それは、休学者や留年者の少ない、新陳代謝のよい教育課程を作り上げていくことでもあります。本プログラムの目的は、ひとりひとりの院生が豊かな将来を切り拓く支援を行い、多くの有為な人材を社会に提供するという本研究科の教育的使命を果たすことを措いてほかにありません。