2023年学部基礎科目「政治学」



【担当教員の専門分野】

政治学、比較政治経済学、政治理論

【授業科目の概要】


政治学の入門講義です。日本と先進諸国の政治を学術的に分析するための理論と概念を身に着けることを目指します。毎回の講義では、欧米諸国の経験から発展してきた政治学の理論と概念を紹介し、それらを用いて日本の現状を分析します。

日本を含め、先進諸国はグローバル化の波にさらされ、国内制度の変革を迫られています。政治のリーダーシップ強化が唱えられる一方で、既存の政治への不満が鬱積し、ポピュリズムと呼ばれる既存の政治勢力への挑戦も生まれています。

政治の仕組みはどのような変化を遂げているのか。現在の変化はデモクラシーという観点からどのようにとらえられるか。その中で日本政治の現状をどのように評価できるか。これらの問いをともに考えたいと思います。

【授業科目の到達目標】

(1)日本と先進諸国の政治を学問的に分析するための基礎的な理論・概念を理解すること。

(2)合理的選択論、制度分析、レジーム比較など、政治学の複数のアプローチの特徴を理解し、それらを用いつつ政治のニュースや出来事を分析できるようになること。


【他の授業科目との関連】

本講義は政治学の入門に相当します。政治学の発展科目に進むための基礎を提供します。

【授業の概要】

(1)オリエンテーション;政治とは何か
政治と経済
政治学の方法(合理的選択論、制度論、言説・アイディア)

(2)戦後日本の政治経済体制
目的:レジーム論を参照し、日本の特徴と現状の問題点を考える
先進国の現状
政治経済体制=レジーム論
戦後の日本型レジーム
日本型レジームの変容

(3)現代日本の政治過程
目的:1994年政治改革以降の流れを概観し、政治改革の成否を考える
55年体制とは
55年体制の崩壊
自民党政治の変容
民主党の挑戦と挫折
第二期安倍政権以降

(4)政党は機能しているか
目的:現在までの政党研究を参照し、政党システムがどのように変化しているか、なぜ主要国の政党が苦境に陥っているのかを考える
政党と政党システム(サルトーリ)
政党システムの分類
政党の変容(カルテル政党、ポピュリズム政党)
日本の政党と将来像

(5)選挙と投票行動
目的:選挙制度の違い、投票行動に関する研究を参照し、日本の選挙制度改革の評価、若年層の低投票率の要因などを考える
選挙と政党システム
日本の選挙制度改革と政党システム
選挙と投票行動

(6)リーダーシップ(1)政府と議会
目的:日本の統治機構改革を、議院内閣制と大統領制の比較、中核的執政論を参照しつつ考える
日本における統治機構改革
議院内閣制とは何か
中核的執政と大統領制化
議院内閣制の現在
日本政治の課題

(7)リーダーシップ(2)政官関係
目的:官僚制比較とNPM論を参照し、日本の政官関係、官僚が果たすべき役割を考える
政と官の役割分担
各国の官僚制
国家―社会関係の変容(NPM論)
日本の政官関係(官僚主導論をめぐる論争、政治主導への改革)

(8)利益政治と市民社会
目的:コーポラティズムと多元主義、社会関係資本論を参照し、社会集団と政治の関係を考える
コーポラティズムと多元主義
現代の変容(自由主義の終焉論、コーポラティズムの変容)
戦後日本の利益政治
社会関係資本とデモクラシー
日本における社会関係資本(市民社会の二重構造)

(9)メディアと政治
目的:メディア・システム論とメディア効果に関する研究を踏まえ、マス・メディア、ソーシャル・メディアとデモクラシーの関係を考える
メディア・システム論
マス・メディアの政治的効果(強力効果論、限定効果論、フレーミング論)
インターネットの民主主義への影響(e-democracy論、フィルタリングとエコーチェンバー)
日本のメディアと政治(記者クラブ制とコーポラティズム・モデルとの親近性、ネット選挙の解禁、ポータブルサイト)

(10)現代政治の対立軸
目的・1970年代以降の対立軸の多元化、近年のポピュリズム研究を踏まえ、現代政治の対立軸について考える
右と左、保守と革新
1970年代の文化変容(新自由主義、脱物質主義)
1990年代以降の対立軸(GAL-TAN、ポピュリズムの勃興)

(11)日本政治の対立軸
目的:欧米諸国との比較から、日本における政治的対立の変遷について考える
戦後日本の保守と革新
1970-80年代の文化的対立と保守回帰
1990年代以降の政治的対立(イデオロギーの弱体化、保守・革新のねじれ)

(12)政治体制
目的:先進諸国以外の国々の政治体制を、民主化論、権威主義体制論を参照しつつ考える
国家とは何か(国家成立の要件、破綻国家)
権威主義体制の広がりと下位類型
自由民主主義体制の下位類型

(13)グローバル化と政治;授業のまとめ
目的:グローバル化の国内政治への影響、グローバル・ガバナンスの形成について考える
グローバル化とは何か
グローバル化と国内政治
グローバル・ガバナンス
自由民主主義は危機にあるか

(14)確認テスト

【テクスト】

特定の教科書は指定しませんが、毎回の授業の補助として、政治学の基本文献から10〜20ページ程度のアサインメントを用意します。あらかじめ目を通したうえで授業に参加してください。

詳しい参考文献は毎回の授業で示しますが、標準的な教科書を以下に挙げておきます。
久米郁男ほか『政治学(補訂版)』有斐閣、2011年
建林正彦ほか『比較政治制度論』有斐閣アルマ、2008年

リーディング・アサインメントは以下から抜粋します。

飯尾潤『日本の統治構造』中公新書、2007年
上神・三浦編『日本政治の第一歩』有斐閣、2018年
久米郁男ほか『政治学』有斐閣、2011年
新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
田中拓道ほか『政治経済学』有斐閣ストゥディア、2020年
谷口将紀『政治とマスメディア』東京大学出版会、2015年
真淵勝『行政学』有斐閣、2008年
宮本太郎『福祉政治』有斐閣、2008年
ミュデ、カルトワッセル『ポピュリズム』白水社、2018年
フランツ『権威主義』白水社、2021年

毎回の参考文献は以下を参照。 → 参考文献リスト

【成績評価の方法と基準】

以下の三点で評価します。
(1)毎回のコメント(30点)
(2)確認テスト(20点)
(3)学期末レポート(50点)

以上の合計で60点以上をCの目安とし、単位取得者の1/3がA、Aの1/3がA+となるよう相対評価とします。

【受講生に対するメッセージ】

どんな進路に進むにせよ、政治は私たちの生活と密接にかかわってきます。現代の政治にどのような問題があるのかを理解し、日々の政治現象を学問的・体系的に分析する力を養えるような講義にしたいと思います。