2016年度学部ゼミナール


【ゼミの研究分野・領域、研究テーマなど】

政治学、政治理論、比較政治経済学

【ゼミの概要(内容・運営・特色など)】

目的
 グローバル化の下で、先進国は雇用、福祉、教育、家族などさまざまな仕組みの変革を迫られています。現代は、今後の社会のゆくえを決める大きな「選択の時代」と言うことができます。このゼミでは、現代政治の諸課題を扱いながら、それらを総合的に分析する力を養い、自分なりのビジョンを持てるようになることを目指します。その際、(1)欧米諸国の現状を踏まえ、レジーム比較の観点から日本の政治や社会を分析すること、(2)「公正な社会とは何か」「どこまでの平等が望ましいのか」「デモクラシーとは何か」など、できるだけ根源的な視座から自分なりのビジョンを作りあげること、の二点を重視したいと思います。

概要
 日本の政治は過去20年にわたって漂流をつづけています。経済停滞、少子高齢化、財政赤字、格差拡大、地方分権など多くの課題に直面しながらも、それらへの対応は遅々として進んでいません。このゼミでは「統治構造」「労働」「社会保障」という三つの柱を設定し、比較の視座を活用しつつ、今日の政治が抱える問題を学問的に分析し、将来の展望を考えます。

・3年夏学期
 先進国の現状、政治学・政治経済学・政治理論の基礎について幅広く学習します。新書レベルから出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。毎回文献の報告者を決め、それ以外の参加者はコメントペーパーを用意し、内容についてディスカッションを行います。4年生と合同で時事問題に関するディスカッションも行います。夏合宿では、夏学期の学習のまとめとなるグループ発表を行っていただきます。

・3年冬学期
 より専門的な英語文献を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れ、よりグローバルな視点を持てるようになることです。11月には筑波大学との合同ゼミを行います。これらと並行して個人研究を進めていただき、学期末には学術的な作法に沿ったゼミ論文を提出していただきます。

・4年夏学期
 各自で選んだ研究テーマを踏まえ、日本語もしくは英語の専門書について報告します。適時3年生との合同ゼミを行い、時事的なテーマに関するディスカッションも取り入れます。

・4年冬学期
 卒論の研究報告と個人指導(チュートリアル)をくり返すことで、学術論文レベルの卒業論文を仕上げていきます。過去の卒論の一部は担当者のウェブサイトに公開されています。

【使用するテキストなど】

参加者と相談のうえ決定しますが、以下のようなテクストを候補として考えています。

1. フレームワーク
久米郁夫ほか『政治学[補訂版]』有斐閣、2011年
新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年
久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすすめ』有斐閣、2013年

2. 日本と欧米の政治
宮本太郎、山口二郎編『リアル・デモクラシー―ポスト「日本型利益政治」の構想』岩波書店、2016年
飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書、2007年
待鳥聡史『代議制民主主義―「民意」と「政治家」を問い直す』中公新書、2015年
増田寛也編『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』中公新書、2014年
宮本太郎『福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー』有斐閣、2008年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年(1、3〜5章、6〜8章)

3. 発展(案)
ロドリック『グローバリゼーション・パラドクス』白水社、2013年
アセモグル、ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』早川書房、2013年

冬学期は英語文献を輪読します。テクストは未定ですが、2014年度、2015年度はそれぞれ以下のテクストを読みました。
Miura Mari, Welfare through Work, Cornell University Press, 2012.
Pablo Beramendi et al., The Politics of Advanced Capitalism, Cambridge University Press, 2015.

【卒業論文タイトル事例】

「日本におけるNPOと政府の協働関係を築く要因」
「なぜ日本の教育格差是正策は定着しないのか―英米との政策過程比較」
「医療政策決定過程における二極化構造の影響―日本医師会と厚生省の分析を通じて」
「世代間格差是正への政策転換の可能性――日英の党組織統一の比較から」
「生活保護制度における扶養義務維持・強化の要因――家族に関わる制度・規範・現実の相互関係」
「政治主導の条件――議院内閣制を機能させるために」
「政党組織と政党システム―1990年代以降の日本の政党システム」
「1980年代〜2000年代の労働政策過程の変容―トップダウン型の政策過程を左右するのは誰か」
「日本の男女共同参画はなぜ前進しないのか―資源動員論による女性運動分析」
「地方分権改革を規定する政治過程要因の国際比較分析−1980年代以降の日本・欧州における改革過程の検証」
「ユルゲン・ハーバーマスの討議倫理学―道徳的普遍主義と道徳的相対主義の止揚の成否」
など。

過去の卒論の一部は、「卒論秀作」のページで全文を公開しています。

【選考方法、学生への要望・注意、など】

 志望理由書と面談によります。志望理由書は、これまで勉強してきたこと、ゼミで研究したいことをA4一枚にまとめ、面談前日までに教員のメールアドレスにお送りください。面談は教員と4年ゼミ生代表によって行います。

 ゼミでは、教員―学生の関係よりも、学生同士の自由な議論と学びあいの方が重要だと考えています。そうした意欲を持ち、できるだけ多様な価値観やバックグラウンドを持つ方に参加していただければと思っています。