2015年度
学部ゼミナール


【研究分野】

政治学、政治理論、比較政治経済学


【概要および指導方法】

目的

 グローバル化の下で、先進国は雇用、福祉、教育、家族などさまざまな仕組みの変革を迫られています。現代は、今後の社会のゆくえを決める大きな「選択の時代」と言うことができます。このゼミでは、現代政治の諸課題を扱いながら、それらを総合的に分析する力を養い、自分なりのビジョンを持てるようになることを目指します。その際、(1)欧米諸国の現状を踏まえ、レジーム比較の観点から日本の政治や社会を分析すること、(2)「公正な社会とは何か」「どこまでの平等が望ましいのか」「デモクラシーとは何か」など、できるだけ根源的な視座から自分なりのビジョンを作りあげること、の二点を重視したいと思います。


概要


 日本の政治は過去20年にわたって漂流をつづけています。経済停滞、少子高齢化、財政赤字、格差拡大、地方分権など多くの課題に直面しながらも、それらへの対応は遅々として進んでいません。このゼミでは「統治構造」「労働」「社会保障」という三つの柱を設定し、比較の視座を活用しつつ、今日の政治が抱える問題を学問的に分析し、将来の展望を考えます。

・3年夏学期
 先進国の現状、政治学・政治経済学・政治理論の基礎について幅広く学習します。新書レベルから出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。毎回文献の報告者を決め、それ以外の参加者はコメントペーパーを用意し、内容についてディスカッションを行います。4年生と合同で時事問題に関するディスカッションも行います。

・3年冬学期
 より専門的な英語論文を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れ、よりグローバルな視点を持てるようになることです。11月には筑波大学との合同ゼミを行います。これらと並行して個人研究を進めていただき、学期末には学術的な作法に沿ったゼミ論文を提出していただきます。

・4年夏学期
 各自で選んだ研究テーマを踏まえ、日本語もしくは英語の専門書について報告します。適時3年生との合同ゼミを行い、時事的なテーマに関するディスカッションも取り入れます。

・4年冬学期
 卒論の研究報告と個人指導(チュートリアル)をくり返すことで、学術論文レベルの卒業論文を仕上げていきます。過去の卒論の一部は担当者のウェブサイトに公開されています。


【使用するテクスト】

 今のところ下記の文献を考えています。詳細は開講時にリストを提示し、受講者と相談のうえで決定します。

1. フレームワーク

久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすすめ』有斐閣、2013年
新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
伊藤光利、田中愛治、真渕勝『政治過程論』有斐閣アルマ、2000年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年

2. 日本と欧米の政治

増田寛也編『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』中公新書、2014年
豊下楢彦、古関彰一『集団的自衛権と安全保障』岩波新書、2014年
飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書、2007年
宮本太郎『福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー』有斐閣、2008年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年(1、3〜5章、6〜8章)

3. 発展

遠藤乾『統合の終焉―EUの実像と論理』岩波書店、2013年
岩崎育夫『アジア政治とは何か―開発・民主化・民主主義再考』中央公論新社、2009年
ジョン・ロールズ『公正としての正義再説』岩波書店、2004年

冬学期は、上記Thelenの本のほか、Oxford Handbookシリーズや、American Political Science Review, Comparative Politics, Journal of European Social Policyなどの学術雑誌から文献を選択します。


【計画(回数、日付、テーマ等)】

1 オリエンテーション
2 政治学方法論
3 比較政治経済学の基礎
4 統治構造
5 政党
6 福祉政治
7 経済政策
7 ヨーロッパとの比較
8 ヨーロッパとの比較
9 政治理論
10 政治とは何か
11 政治とは何か
12 国際秩序
13 戦後日本 
14 戦後日本
15 まとめ


【成績評価の方法と基準】

 ゼミでの報告と討議によって評価します。
課題文献の内容を理解しているか。それに対する自分なりの論点を付け加えているか。他のメンバーの疑問点や論点に対して応答し、討議に貢献しているか。ゼミをつうじて自分なりの意見を作りあげているか。


【卒業論文タイトル事例】

「世代間格差是正への政策転換の可能性―日英の党組織統一の比較から」
「生活保護制度における扶養義務維持・強化の要因―家族に関わる制度・規範・現実の相互関係」
「マスメディアの政治的影響力の決定要因−いじめ問題に関する報道を事例として」
「地方自治体存続の可能性―雇用創出はなぜ進まないのか」
「政党組織と政党システム―1990年代以降の日本の政党システム」
「1980年代〜2000年代の労働政策過程の変容―トップダウン型の政策過程を左右するのは誰か」
「日本の男女共同参画はなぜ前進しないのか―資源動員論による女性運動分析」
「ゆとり教育政策導入期の政治過程分析―教育政治の三極モデルを用いたアクターの動向の整理」
「地方分権改革を規定する政治過程要因の国際比較分析−1980年代以降の日本・欧州における改革過程の検証」
「社会的排除の視点から見るハルツ改革後のドイツ社会−労働市場と教育制度の関連性」
「現代の日本における母子家庭の貧困―職業能力訓練による改善の可能性」
「政官関係の比較政治学的分析―日本の政官関係が政権交代に対応するために」
「ユルゲン・ハーバーマスの討議倫理学―道徳的普遍主義と道徳的相対主義の止揚の成否」

過去の卒論の一部はこちらを参照。


【その他】

政治とは多様な価値を持つ人びとによる討議と共存の営みです。このゼミでも、できるだけ多様な価値観を持つ学生が自由に討議を行い、対立点を認めつつ、各々社会のビジョンを構築していくことを目指します。学生による自治を尊重し、教員はそれを手助けすることを役割とします。