2014年度
学部ゼミナール


【研究分野】

政治学、政治理論、比較政治経済学


【授業科目の目的】

 グローバル化の下で、先進国は雇用、福祉、教育、家族などさまざまな仕組みの変革を迫られています。このゼミでは現代社会の諸問題を政治的な観点から考察し、それらの問題を生みだした要因とは何か、どのように変えることができるのかを考えていきます。できるかぎりトータルな視点から社会をとらえなおし、変革の可能性を具体的に探ることがゼミの目的となります。


【到達目標】

(1)現代政治学の主要な理論を踏まえ、現代社会の諸課題を政治学的に分析し、理解できるようになること。
(2)とりわけ国際比較を重視する。欧米諸国の現状をふまえ、なぜ日本が今日のような困難を抱えるようになったのか、どのような変革の可能性があるのかについて、自分なりの考えを持つこと。
(3)「公正とは何か」「自由と平等をどう調停するか」「よりよいデモクラシーとは何か」など、政治理論の伝統を踏まえ、原理的な視座から政治を考えられるようになること。


【授業の方法】

・3年夏学期
 先進国の現状、政治学・政治経済学・政治理論の基礎について幅広く学習します。新書レベルから出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。毎回文献の報告者を決め、それ以外の参加者はコメントペーパーを用意し、内容についてディスカッションを行います。4年生と合同で時事問題に関するディスカッションも行います。 夏合宿では夏学期のまとめとなる政策提言とディスカッションを行います。

・3年冬学期
 より専門的な英語論文を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れ、よりグローバルな比較の視点を持てるようになることです。11月には筑波大学との合同ゼミを行います。これらと並行して個人研究を進めていただき、学期末には学術的な作法に沿ったゼミ論文を提出していただきます。


【授業の内容】

 日本の政治は過去20年にわたって漂流をつづけています。経済不況、財政赤字、少子高齢化、格差拡大、地方分権など多くの課題に直面しながらも、それらへの対応は遅々として進んでいません。なぜ日本はこれらの困難を抱えることなったのか。現在の政治はなぜ機能していないのか。どのような将来展望がありうるのか。このゼミでは「統治構造」「労働」「社会保障」という三つの柱を設定し、それぞれ基本書から出発して、今日の問題を政治学的に考察します。さらに国際比較の視点を交えて将来の展望を考えます。
 ゼミでは、輪読、討議、時事問題ディスカッション、政策提言、個人研究などを組み合わせます。


【計画(回数、日付、テーマ等)】

1 オリエンテーション
2 政治学方法論
3 比較政治経済学の基礎
4 統治構造
5 政党
6 福祉政治
7 経済政策
7 ヨーロッパとの比較
8 ヨーロッパとの比較
9 政治理論
10 政治とは何か
11 政治とは何か
12 国際秩序
13 戦後日本 
14 戦後日本
15 まとめ


【テキスト】

 今のところ下記の文献を考えています。詳細は開講時にリストを提示し、受講者と相談のうえで決定します。

1. フレームワーク

久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすすめ』有斐閣、2013年
新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
川崎、杉田編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年
飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書、2007年
フランシス・フクヤマ『政治の起源』講談社、2013年

2. 日本と欧米の政治

宮本太郎『福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー』有斐閣、2008年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2008年
細谷雄一『国際秩序―18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ』中公新書、2012年
盛山和夫『経済成長は不可能なのか―少子化と財政難を克服する条件』中公新書、2011年
Katz, "Political Parties", in Caramani, Comparative Politics, Oxford Univ. 2011
Mari Miura, Welfare Through Work: Conservative Ideas, Partisan Dynamics, and Social Protection in Japan, London, Cornerl University Press, 2012

冬学期は、上記Miuraの本のほか、Oxford Handbookシリーズや、American Political Science Review, Comparative Politics, Journal of European Social Policyなどから文献を選択します。


【授業時間外の学習(求められる予習・復習の内容)】

報告者は課題文献のレジュメを作成し、30分程度で内容の報告をしていただきます。それ以外の参加者は、前日までにコメントペーパーをメーリングリストに提出します。なお、毎回司会者を決め、ゼミは基本的に学生の司会によって運営します。


【成績評価の方法と基準】

ゼミでの報告と討議によって評価します。
課題文献の内容を理解しているか。それに対する自分なりの論点を付け加えているか。他のメンバーの疑問点や論点に対して応答し、討議に貢献しているか。ゼミをつうじて自分なりの意見を作りあげているか。


【卒業論文タイトル事例】

「政党組織と政党システム―1990年代以降の日本の政党システム」
「1980年代〜2000年代の労働政策過程の変容―トップダウン型の政策過程を左右するのは誰か」
「日本の男女共同参画はなぜ前進しないのか―資源動員論による女性運動分析」
「地方分権改革を規定する政治過程要因の国際比較分析−1980年代以降の日本・欧州における改革過程の検証」
「社会的排除の視点から見るハルツ改革後のドイツ社会−労働市場と教育制度の関連性」
「現代の日本における母子家庭の貧困―職業能力訓練による改善の可能性」
「政官関係の比較政治学的分析―日本の政官関係が政権交代に対応するために」
「ユルゲン・ハーバーマスの討議倫理学―道徳的普遍主義と道徳的相対主義の止揚の成否」

過去の卒論の一部はこちらを参照。


【その他】

政治とは多様な価値を持つ人びとによる討議と共存の営みです。このゼミでも、できるだけ多様な価値観を持つ学生が自由に討議を行い、対立点を認めつつ、各々社会のビジョンを構築していくことを目指します。学生による自治を尊重し、教員はそれを手助けすることを役割とします。