学部基礎科目「政治学」
(一橋大学)


シラバス     参考文献    講義の要点


[ 授業概要 ]

この講義では、日本を中心とした先進諸国の政治を分析し、自分なりの見方を形づくるための基礎的な理論や概念を扱う。特に、ここ20年間で発展してきた政治学、比較政治経済学の諸理論を、できるだけ分かりやすく紹介する。一人一人が、比較の視座を用いて、日本政治の課題と対応を考えるための手がかりを提供したい。


[ 到達目標と方法 ]

到達目標は次の3点である。

(1)先進国の政治がどんな課題に直面しているか、それらとの比較から、今日の日本政治がいかなる課題を抱えているのかを理解すること。
(2)現代政治学の理論を用いて、それらの課題を分析できるようになること。
(3)受動的に講義を聴くだけでなく、自分なりの考えを形成し、表現できるようになること。

学生の関心を喚起し、参加をうながすために、以下のような方法をとりたい。

(1)毎回の講義について、簡単な予習テクストと質問事項をあらかじめ用意する。テクスト読解と質問への回答準備を前提として講義を進める。
(2)毎回の講義の中で、4〜5名ごとにグループを作り、質疑応答やグループ・ディスカッションを行う時間を組み込む。
(3)3〜4回の講義ごとに、授業時間内に内容に関する小レポートを作成する(計3回)。次の講義で小レポートに関する講評、ディスカッション、補足説明を行う。以上を1サイクルとする。


[ 授業計画 ]

毎回1トピックとし、1回で内容が完結するように講義を行う。適時ビデオ教材なども扱う。


日程 概要 アサインメント
第1回 日本政治の漂流の20年
  20年間の日本政治の流れをふり返り、この講義の分析枠組みを導く。
石川真澄『新版戦後政治史』岩波新書、2004年、179-213頁
第2回 戦後日本の政治経済体制
  「フォーディズム」という概念を軸として、戦後日本の政治経済体制の特徴を検討する。
新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年、28-49頁
第3回 大きな政府と小さな政府
 市場と政府の原理的な役割区分、「資本主義の多様性」論を踏まえ、日本の行財政改革の流れについて検討する。
スティグリッツ『入門経済学』3版、東洋経済新報社、2005年、213-219頁、222-237頁(227、231-232頁を除く)
第4回 小レポート講評とディスカッション(1)
 
第5回 政党は機能しているか
 先進諸国に共通する政党政治の変容を踏まえ、日本の政治改革、二大政党化の流れを検討する。
久米郁男ほか『政治学』有斐閣、2003年、452-457頁、485-489頁、496-502頁
第6回 大統領制と議院内閣制
 日本の官邸強化、政府・与党一元化の流れを、先進国の比較枠組みである「中核的執政論」を用いて検討する。
飯尾潤『日本の統治構造』中公新書、2007年、140-153頁
第7回 政官関係
 官僚の役割、各国の類型を踏まえ、日本の政官関係について検討する。
真淵勝『行政学』有斐閣、2008年、496-501頁、581-585頁
第8回 制度とリーダーシップ
 リーダーシップが機能する条件を「新度論」、「拒否権プレーヤー論」から探り、小泉政権以降の首相のリーダーシップを検討する。
新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年、257-268頁
第9回 小レポート講評とディスカッション(2)
 
第10回 家族と政治
 各国の家族政策を踏まえ、少子高齢化が進行する日本の政策上の問題点について検討する。
白波瀬佐和子『日本の不平等を考える―少子高齢化の国際比較』東京大学出版会、2009年、160-181頁
第11回 雇用と社会保障の政治
 先進国の「福祉レジーム論」、「ワークフェア論」を紹介し、日本における雇用と社会保障のリンケージについて検討する。
宮本太郎『福祉政治』有斐閣、2008年、12-34頁
第12回 マスメディアとデモクラシー
 今日のメディアポリティクスと日本の問題点を、「言説政治」と「ポピュリズム」という枠組みから検討する。
蒲島郁夫ほか『メディアと政治』有斐閣アルマ、2007年、240-257頁
第13回 小レポート講評とディスカッション(3)
 
第14回 予備日・まとめ
 



[ 成績評価の方法 ]

学期末試験(55点)、小レポート(45点)の合計に、通常点を上乗せする。
学期末試験は語句説明と論述問題から成る。
小レポートは1回提出するごとに15点とする。
通常点は授業内での発言に応じて加算する。詳細はオリエンテーションにおいて説明したい。


[ 成績評価基準の内容 ]

学期末試験は、(1)現代政治学の基礎理論を理解し、(2)日本政治の課題と対応を自分なりに表現できていれば、合格点とする。
授業時間内の小レポートは、用意された質問に講義内容を踏まえて答えるという形式をとる。


[ テキスト・参考文献 ]

毎回予習のための文献(10-20頁)を指定する。主なものは以下のとおり。

久米郁男ほか『政治学』有斐閣、2003年
石川真澄『新版 戦後政治史』岩波新書、2004年
新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
スティグリッツ、ウォルシュ『入門経済学』東洋経済新報社、2005年
伊藤光利ほか『政治過程論』有斐閣アルマ、2000年
飯尾潤『日本の統治構造』中公新書、2007年
蒲島郁夫、竹下俊郎、芹川洋一『メディアと政治』有斐閣アルマ、2007年
建林正彦、曽我謙、待鳥聡史『比較政治制度論』有斐閣アルマ、2008年
宮本太郎『福祉政治』有斐閣、2008年