2010年度学部「政治学」
講義の要点



B戦後日本の政治経済体制


  基本概念: フォーディズム、コーポラティズム、権力資源  

  戦後日本の労使関係 (企業内労使協調、春闘の制度化、
    1970年代以降の民間大企業/官公労/中小の分離)

  仕切られた生活保障 → 1990年代以降の変化、生活不安の広がり


C大きな政府と小さな政府


  市場の失敗: 外部性、公共財、不完全競争、情報の不完全性

  政府の失敗: インセンティブ欠如、官僚組織の非効率性、意思決定のゆがみ

  効率性と公平性のトレードオフ

  新しい傾向: インフラ型公共事業への批判、新しい規制・公共投資


E政党は機能しているか


  政党(国家と社会のリンケージ)と政党システム(複数政党の競争、部分と全体)

  政党システムを分ける要因: 選挙制度(デュヴェルジェの法則)と社会的亀裂

                     〜 二党制と多党制

  政党システムの変容: 名望家政党 → 大衆組織政党

                 → 包括政党 → カルテル政党

  今日の政党政治: 二極競争化、政党の国家化、政党と社会の関係再構築という課題

            → 日本の政党の課題


F大統領制と議院内閣制


  自民党政権の与党審査、政府・与党の二元体制

    → 民主党政権の改革(政府・与党一元化)

  議院内閣制と大統領制の違い(権力委任の流れ)

  今日の変化: 中核的執政論(背景、重層化・多元化、ガバナンス)

           大統領制化(背景、ウェストミンスター・モデルの変容)

  日本の執政権力の課題


G政官関係


  戦後日本の政官関係: 官僚主導 → 政官融合(目的の共有)

                  → 自民党型政官関係の崩壊 → 政治主導?

  ウェーバーの官僚制論: 専門性、自律性、非人格性 〜 民主主義との緊張

  イギリスの政官関係 / ドイツの政官関係 / アメリカの政官関係

    / フランスの政官関係

  1980年代からの国家―社会関係の変化

  日本の政官関係の課題: 官僚の専門性・自律性と民主的統制

                   政策ネットワークと政治的リーダーシップ


H制度とリーダーシップ


  新制度論: 制度のもたらす経路依存(ロックイン効果)、受益層の組織化

  拒否権プレイヤー論: 拒否権プレイヤー(数と政策的距離)、統治リーダーの回避戦略

  小泉政権のリーダーシップの特徴: 受益層、拒否権プレイヤー、ポピュリズム

  リーダーシップが発揮される条件と注意点


J家族と政治


  戦後福祉レジームの特徴(男性稼ぎ主モデル)

   → 1970年代以降の変化:新しい社会的リスク、脱家族化

  三つの福祉―家族モデル: 社会民主主義 / 自由主義 / 保守主義

   → 新しいリスクと脱家族化への対応の分岐、フランスとオランダという例外

  日本の福祉レジームの特徴 〜 今日の少子化の原因 〜 今後の選択肢


K雇用と社会保障の政治


  ケインズ主義的福祉国家 → 脱工業化と雇用の変化

  三つの福祉―雇用モデル: 社会民主主義 / 自由主義 / 保守主義

  → 脱工業化への対応の分岐

  〜 ヨーロッパの新戦略(知識基盤経済、社会的投資、フレクシキュリティ)

  日本の福祉―雇用モデルの特徴 〜 脱工業化への対応 〜 今後の課題


Lメディアと政治


  日本の政治メディアの特徴(大手メディア、記者クラブ制)

    → 小泉政権以後の変化(第三列の優位)

  メディアシステムの三類型: 自由主義モデル / コンセンサスモデル 

                     / 分極型モデル

  〜 それぞれの政治的役割の違い、日本のメディアシステムの位置づけ

  1990年代以降の商業化と自由主義化

  言説政治: 背景、特徴 → ポピュリズムへの危険

  日本の政治メディアの問題点と課題