学部講義「政治思想史」



1 題目  近現代の政治思想


2 概要

 この授業では、近代の法・政治制度を支える最も基本的な原理について、近代西洋の歴史的な経緯を踏まえながら、体系的に学習することを目指す。具体的には、「民主主義」「自由主義」「社会主義」という三つの代表的な思想潮流の形成・確立・変容の過程を概説する。

 その上で、現在それぞれの思想が直面している問題点を、グローバル化と国民主権の乖離、現代自由主義に内在するパラドクス、という点を軸に整理する。

 政治学によれば、世界は一つの完結した体系ではない。それは、複数の力や思想が互いに対立し拮抗しあう中で成り立っている。この授業の目的も、近代政治思想を体系的に理解するだけでなく、それらが現在直面している「問題」を把握し、その対応をともに考えることにある。


3 目標と方法

到達目標は次の三点である。
(1)自由民主主義の基本的な原理を説明できるようになること。
(2)今日の政治的・社会的課題を、これらの原理と関連づけて説明し、分析できるようになること。
(3)政治学の古典に慣れ親しむこと。

前もってリーディング・アサインメントの資料を読み、用意された問いに答えを準備してくることを前提として講義を進める。


4 授業内容

以下の項目をできるかぎり各一回で講義する。ただし、講義の進度や受講者の反応によって内容を修正する場合がある。

T 民主主義の系譜
  (1)中世的世界の解体(ルネサンスと宗教改革、主権論の登場)
  (2)社会契約論(ホッブズ、ロック、ルソー)
  (3)市民社会と公共圏(カント、フランス革命、ハバーマス)
  (4)19世紀における民主主義の変容(トクヴィル、ミル、大衆民主政)
  (5)20世紀の民主主義(エリート論、多元主義、参加民主主義)
  (6)現代の民主主義(討議民主主義、グローバル・デモクラシー)

U 自由主義の系譜
  (7)立憲主義と思想の自由(寛容論、近代立憲主義の成立)
  (8)所有的個人主義と市場主義(ロック、スミス、古典的自由主義)
  (9)19世紀における自由主義の変容(ミル、ヘーゲルからマルクスへの自由主義批判)
  (10)20世紀の自由主義(福祉リベラリズムの成立、ネオ・リベラリズム)
  (11)現代の自由主義(リベラリズムと正義論、自律と介入のパラドクス)

V 社会主義の系譜
  (12)マルクス主義の成立と挫折
  (13)20世紀社会民主主義の展開(福祉国家の諸理念、オルター・グローバリゼーション)

W 結論――社会民主主義を超えて


5 参考文献

講義にあわせたリーディング・アサインメント用の資料集を用意する。
参考文献として以下の二冊を挙げるが、講義開始時により詳しいリスト配布する。
『政治学史』、福田歓一、東京大学出版会、4130320203
『現代政治理論』、川崎修・杉田敦編、有斐閣アルマ、4641122695


6 成績評価

中間の書評レポート(20%)と学期末試験(80%)の合計による相対評価。学期末試験は、主要概念の語句説明と、リーディング・アサインメント用の資料を活用した論述問題から成る。

基準は以下のとおり。
  A 政治学の古典を深く理解し、自由民主主義の原理を現代の問題と関連づけて論じ、
    自らの知見を論理的に表現できた。
  B 政治学の古典を深く理解し、自由民主主義の原理を現代の問題と関連づけて論じることができた。
  C 政治学の古典を読み、自由民主主義の原理を正しく理解した。
  D 政治学の古典を読み、自由民主主義の原理をおよそ理解した。


7 参考文献リスト → 別ページを参照