お久しぶりです。ピンパンです。
僕の方は、お兄ちゃんとお姉ちゃんを紹介する準備が整っていたのですが、おケイばばが忙しさを口実に、怠慢をむさぼっていたために、こんなに遅れてしまいました。今回は、シロねえさんを紹介します。
シロねえさんは、綺麗な、猫の中の猫といった感じです。エメラルド・グリーンの澄んだ瞳が、とても魅力的です。純白の毛並みが気品を添え、人間に媚びない振る舞いは孤高ささえ漂わせます。
彼女は一歩も家の外に出ようとはしません。それにはわけがあります。彼女は幼少期に、母親に噛まれたり苛められたりするという、ドメスティック・バイオレンスになやまされ、母親の暴力を避けて、遮二無二におケイばばの家に飛び込んでしまったのです。この家は、まさしくシロねえさんにとってのシェルターであったわけです。
シロねえさんはとても強いのですが、いつもはおとなしく、口数もすくない物静かな存在です。小さい時に母親にかわいがられなかったせいか、おケイばばの膝にのって、おばばのカーディガンの中に顔を突っ込み、愛しげにゴロゴロやります。このときのシロねえさんはとても幸せそうです。でも、ものの15分もすれば、おケイばばの膝から静かにおりるのです。しかも、おばばの膝を、僕たちときそって取り合うことは決してありません。おばばのそばに誰もいないのを見計らって、静かにアイコンタクトとり、体を擦りつけるボディーアクションとによって、おばばの許可を取り、そっと膝にのるのです。
白にシルバーグレイの毛並みが風にそよぎ、窓辺に正座して外をじっと見ているシロねえさんからは、高貴ささえ感じられます。
上品な立ち居振る舞いのシロねえさんが実はとても強いことを知ったのは、最近のことです。外猫が餌ほしさのあまり、玄関の隙間から飛び込んで来た時のことです。丁度、玄関ホールに座っていたシロねえさんと鉢合わせをしてしまったのです。シロねえさんはいきなり外来者に平手打ちをくらわしました。外猫は不意を衝かれ、あわてふためいたために玄関ドアに体をぶつけ、ほうほうの体で逃げ出しました。僕はシロねえさんて強いんだ、と感動しましたが、当のシロねえさんはすこぶる平静で、すくっと立つと、何事もなかったかのように落ち着いた歩調で、食堂に入っていきました。シロねえさんは居場所をしっかりと確保したかったのでしょう。
自立心の強いシロねえさんを、僕は猫の中の猫と、ひそかに尊敬しています。