TFコース:体験記 2

【日本学術振興会特別研究員(社会学研究科博士後期課程修了) Yさん】
参加時期(2006年10月~2013年3月)


  本コースは概ね前半の座学部分と後半の実習部分とにわかれていますが、私の場合は座学部分を終えてから、しばらく間を空けた後、別の年度に改めて実習を受 けることになりました。学位論文や研究の進捗状況に合わせ、年度をまたぎ博士課程修了後も継続的に受講できるシステムがあったことで、最後までコースを修 了することができてよかったです。

 まず座学部分を受講した2006年度には、FDを専門とする招待講師の先生からの集中講義がありまし た。参加する前のイメージでは、授業構成や評価の方法などすぐに役立つ「ノウハウ」を学ぶのだろうと思っていたのですが、講義では大学教育や政策の国際的 動向をはじめ、地域状況など多角的な視点でのトピックが展開される中で、それぞれの教員がどのように講義を担当し、またどのようなキャリアを歩んでいくか について議論が進められました。また、中心的なトピックであったティーチング・ポートフォリオについて学ぶ中では、そうしたマクロな議論を個別の授業との 対応関係の中で理解することができ、非常に密度の濃い時間であったと思います。
 後半の実習部分は、中心である授業実習以外に授業観察 も行いました。授業観察と授業実習の組み合わせ・スケジューリングにあたっては、キャリア支援室の担当教員の方にきめ細やかな対応をいただいて、とても感 謝しています。はじめて「これから自分が授業をする」という講義者側の立場で講義を観察すると、これまで受講生の立場で見ていたのとは全く違う光景が見え ました。たとえば、先生の手元のノートはどのような構成になっていて、どのくらい時間をかけてこのノートを準備したのだろうか?ちょうど講義の中ごろに眠 くなったころに映像が入ると、落ちていた集中力が復活するんだ!コンパクトなレジュメとスライドの説明が合わさることで効果的に内容が理解できる仕掛けに なっている!…こうした発見がいくつもあり、これらは授業観察という項目を意識することなしには気づけない点でした。実は授業観察を始めるまえには、予定 を組むのが少し大変で「もっと楽に実習まで終わればよいのにな」と思ったこともあったのですが、複数科目での授業観察を行うことで、実際に授業をするため の準備ができたと思います。
 本番の実習では、本当にいろいろなことを経験できました。授業の内容はもちろんこと、たとえば機材が動かなくなった 場合の対処、予想しなかった質問や意見が突然受講生から寄せられた時の対応など、本番の授業にひとりで臨んだのであればパニックになってしまったかもしれ ない事柄を、担当教員によるスーパーバイズのもとでひとつひとつ学べたことは、本当に得難い経験でした。授業準備は、何を話そう、どんな説明にしようと悩 みながらかなり長い時間をかけて取り組みました。授業後にはレスポンスペーパーと個別の評価を受講生全員に書いてもらったのですが、そこで気づいたのは、 「受講生たちは想像以上に鋭い」ということでした。講義内容自体はその分野の入門的な事柄が中心でしたが、日頃院生同士や先生方とお話しする中では言及さ れないような「基本だけれど実は本質的な問題」について、さらりととても素朴な形で、けれど非常にするどく指摘される場面もあり、嬉しい驚きを体験しまし た。

 実習終了後のフィードバック講習会では、タイムマネジメントや資料作りの問題点など、独力では改善できなかった点に ついて、複数の先生方や先輩から具体的な改善案やアドバイスをいただくことができ、その点もとてもありがたかったです。そして、なにより先輩や先生方もみ なさん悩みながら少しずつオリジナルな講義スタイルを作り上げておられるのだとディスカッションを通じて知ることができ、励みになりました。来月 (2013年4月)から他大学ではじめての非常勤講師を経験することになりましたが、本コースで学んだことを振り返りながら、私なりの授業を試行錯誤して いきたいと思います。

 最後になりましたが、授業観察や授業実習をさせていただいた先生方、TFコースおよびキャリア支援室の先生方とスタッフのみなさまには、大変お世話になり、感謝しています。ありがとうございました。