日本は今、実質的な移民政策の大きな転換点に立っている。受入れの拡大は政策の既定路線と考えられ、2018年に成立した改定入管法が今後形成していくシステムは、一般労働移民の長期滞在と定住化が、事実上部分的に想定されるものとなっていくであろう。
今や、移民の適応促進と社会統合を図る制度設計と政策に関する、多角的で公共的な熟議が求められている。このためには、既存の日本での経験を踏まえつつも、それを国際的に相対化して政策構想を行う必要があるだろう。高齢化がすでに進行した段階で、遅れて移民受け入れを開始し、急激に受入数を増やしたスペインの経験は、現在の日本と大きく共通している点で重要である。急激な受入れを経験したスペインが、ごく最近まで大きな紛争を回避しえたのは、その積極的な統合政策による部分が大きく、その政策実践から学ぶべき点は多い。
スペインの移民政策を設計した中心的研究者であるアランゴ教授、スペインの移民状況を欧州全体の文脈に位置付けて分析を展開するゴンサレス氏、そして反差別戦略の設計を進めてきたピニョル氏を招いて、日本の研究者との対話を通じて日本の状況との比較を試みる。また、両者を媒介する意味で、両国の移民政策と状況に関心を持つアレハンドロ・ポルテス教授を基調講演者として迎え、スペインの政策と日本の現状とを比較することで、日本の政策形成者、研究者に新たな視座を提供し、創造的な政策議論の活性化を図る。
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問い合わせ先:一橋大学・大学院社会学研究科 政治学・国際社会学共同研究室
Tel: 042-580-8803
e-mail: trans_socisoc.hit-u.ac.jp
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一橋大学・社会学研究科・国際社会学プログラムでは、きたる10月27日(土)・28日の2日間、国際シンジウムを「トランスナショナル化と国境/境界規制」Border/
Boundary Control in the Age of Transnationalizationと題して、現在深刻化するトランスナショナル社会空間と、国境のみならず広い意味での社会境界管理強化との深化する矛盾を巡る諸問題を検討します。このために、国際社会学プログラムを拠点とした科学研究費基盤研究(A)「移民難民システムの重層的再編成」の最終年度の企画としての、国際研究交流と発信の会議です。
このために、ビーレフェルト大学のトマス・ファイスト教授をはじめとして北米、EUからトランスナショナル研究と国境研究における第一線の研究者を招き、国際的研究の最前線の成果を報告いただくとともに、科学研究費プロジェクトメンバーの報告を合わせて行う機会とします。
トランプ政権の誕生と反移民政策、EUにおける大量難民への対応の混迷など、状況の錯綜とする中、国際的な最新状況の正確な分析を内外の研究者が報告するとともに、急激に変動する日本における政策とその引き起こしつつあるトランスナショナルな関係性の今後について、日本の研究者の報告をもとに、海外の移民研究者とともに、今後の日本の政策について考える機会としたいと思います。
We close pre-registration, but still welcome participants of the day
事前登録を締め切らせていただきますが、当日参加の方も歓迎しております。ふるってご参加ください。
問い合わせ先:一橋大学・大学院社会学研究科 政治学・国際社会学共同研究室
Tel: 042-580-8803
e-mail: trans_socisoc.hit-u.ac.jp
Carrillo 教授は、トランプ政権のNAFTA(北米自由貿易協定)への影響を自動車産業の事例をとって、その規制の在り方とメキシコ自動車生産の実態とのずれを中心として分析し、将来の展望を論じられました。 この目的のため、同教授は、メキシコ自動車産業が、406万台と世界第7位の位置を占め韓国を生産台数でしのぎつつある傾向をまず示したうえで、歴史的な発展過程を輸入代替工業下記から、輸出志向工業化とNAFTA体制に移行してきた各段階を分析し、NAFTA段階でその生産システムが大陸規模に3つの産業集積の柱、回廊を形成してきたことを示されました。この上で、2008年のグローバルな金融危機以降、アメリカ自動車Big Threeが、NAFTAの中でのメキシコ生産への比重のシフトを加速化させ、このことがメキシコからの自動車輸出と部品輸出の経拡大をもたらしたことを明らかにしていった。これとの連関で、バヒーオと呼ばれるメキシコ中央部のやや北側にある諸州(グアナフアト、サンルイスポトシ)に陸続と新設工場が建設され、自動車産業が近年集積してきたことを指摘されました。
講師:Jorge Carrillo Viveros 教授
メキシコ北部ティファナ市に所在する北部国境大学院大学(El Colegio de la Frontera Norte)の社会学部門で産業社会学を担当。長くメキシコの輸出加工産業の発展とNAFTA内での製造業の変貌について研究され、主に自動車産業、電子、航空など高度技術産業における技術、労働、地域への影響について分析。
Alarcon教授は、Douglas Masseyらとの共同研究、Mexican Migration Projectを皮切りに、様々なメキシコー合衆国間の移民現象について研究を展開されてきました。その中にはトランスナショナル移民のネットワーク、国境をめぐる非正規移民の状況、高技能メキシコ人労働者、などが含まれています。また、COLEFにおいて、国際的にも知られる移民研究専門の英・西二か国語による雑誌Migraciones Internacionalesの編集長を長らく務めてこられました。 近年は、オバマ政権期から継続する強制送還が生み出す国境都市での排除された元非正規移民の状況や、強制送還によって引き裂かれた家族の問題に取り組んでいます。 今回、教授のご子息でドキュメンタリー映画監督である、Francisco Alarcon氏が制作したThe Deportation of Innocence: Removal of Mexican Parents from United Statesを試写し、それをもとにAlarcon教授とともに強制送還という政策が生み出す諸問題をともに議論し、考察していきたいと思います。同映画は、国際移住機構IOMのGlobal Migration Film Festivalで新人賞を受賞するなど評価の高いものです。日本でも、非正規移民の半減という呼び声とともに、強制送還が繰り返されてきましたが、この機会にオバマ―トランプ時代に進行してきた現象を理解するとともに、太平の両側での経験の共有と、今後のトランプ時代のアメリカの移民社会の展望について考えていく機会としていきたいと思います。
講師:Rafael Alarcón Acosta 教授
カリフォルニア大学バークレー校にて都市・地域計画博士号取得。主要な研究テーマは、米墨間の移民が双方の社会・経済にもたらす影響や、メキシコ系移民のアメリカ合衆国における統合。主著にMaking Los Ángeles Home: The Integration of Mexican Inmigrants in the United State, University of California Press.(Luis Escala他との共著、2016年)など。
講師:伊藤るりさん
伊藤さんは2017年度を最後に本学を退任し、2018年度からは津田塾大学総合政策学部へ転任なさいます。そこでこれを一つの区切りとして、伊藤さんが本学着任以来取り組んできた課題であるフィリピン人家事労働者について講演していただくとともに、国際社会学とジェンダー研究の未来について皆さんと議論する機会としたいと思います。前半は「CGraSS公開レクチャー」の一環という形で、後半は各時代に研究を共にした人々や各大学の教え子と国際社会学とジェンダー研究の展望を話すという形式で進めます。
ILO「家事労働者のディーセントワークに関する条約」(C189)、及び同勧告(R201)が採択されてから5年以上が経ちます(2011年6月採択、2013年9月発効)。これらは、従来、多くの国で労働法の適用外とされてきた家事労働者(移住労働者を含む)の国際労働基準を定める画期的な意義をもち、移住・家事労働者の(再)組織化と権利保障において、新段階をもたらしました。
本シンポジウムは、(1)科研プロジェクト「移住家事労働者とILO189号条約――組織化・権利保障・トランスナショナルな連帯」の中間報告を行うとともに、(2)折しも関東(神奈川県、東京都)と関西(大阪府)の「国家戦略特区」において「外国人家事支援人材受け入れ事業」進めることになった日本の課題を、世界各地の現状との比較を通じて、明らかにすることを目的とします。
1日目は、女性労働運動史の歴史家として知られるアイリーン・ボリス教授(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)の基調講演で開始し、これを受けてアジア、ヨーロッパ、アメリカ各地での移住家事労働者の権利保障状況とこれにC189が与えたインパクトや現下の課題などについて、現地調査に基づき研究報告を行います。また、2日目には、日本の現状についての研究報告のあと、家事労働者の組織化に取り組む海外の労働組合ならびにNGOの活動家を迎え、日本の状況にくわしい関係者とともに、各国の取り組みと日本における課題を考えるためのパネル・ディスカッションを行います。
移民の政治的アクティヴィズムは移民先の社会だけでなく、出身国に対しても向けられてきました。今回のセミナーでは、近年拡大しているラテンアメリカからヨーロッパへの移民、特にスペインとイタリアにおけるドミニカ人とコロンビア人の実践に注目した最新の研究成果を発表して頂きます。ふるってご参加下さい。(使用言語:英語、通訳なし)(予約不要)
講師紹介:Dr. Luis Edwardo Guarnizo
社会学者。トランスナショナルな移民研究の国際的リーダーの1人として、
移民の起業家研究、越境空間の多層性や分裂に注目した多彩な研究を発表。
共編著: Transnationalism from Below (1998)
主著:“The Fluid, Multi-Scalar, and Contradictory of
Citizenship” (2012),
“The Economics of Transnational Living” (2003)など
一橋大学・大学院社会学研究科の国際社会学プログラムは1993 年4 月に設立されました。今年で20 周年を迎えることになります。
本プログラムの歩みは、日本における国際社会学の本格的発展とほぼ軌を一にしてきました。この間、日本の国際社会学は、若い才能を吸収し一定の成果を上げてきましたが、今日、その対象領域や研究アプローチは多様化・多元化が著しく、その方向性が改めて問い直されるべき段階に入ったといえるでしょう。この現状を踏まえ、このたび6 月22 日(土)に「国際社会学への地域的パースペクティブ――北米・ヨーロッパ・東アジアの比較にむけて」と題した国際シンポジウムを開催いたします。シンポジウムには、トランスナショナルな移民研究が先行してきたアメリカ合衆国、そして「壁の崩壊」以来トランスナショナルな移動空間の生成著しいEUから、代表的研究者を3 名招聘しています。日本を含む東アジアも視野に入れつつ、越境空間自体の形成と研究アプローチの発展がいかに歴史的構造的な地域的文脈に依存しているかを比較し、地域的制約を対自化して、相互の対話を進めていく、そのような機会とすることを目指しています。なお、6 月21 日(金)には、プレイベントとして「若手研究者ワークショップ」を開催します。若手の英語によるペーパー発表後、海外招聘研究者の講評をいただくことで、次世代育成の場とする予定です。
皆様、奮ってのご来場をお待ちしております。
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●プレシンポ企画 6月21日(金)13:30~17:30(開場13:00) 若手研究者ワークショップ/Junior Scholars’ Workshop |
●国際シンポジウム 6月22日(土)10:15~17:00(開場9:45) |
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報告: 平澤文美(一橋大学博士後期課程)
“Increasing Occupational Opportunities of Young Vietnamese in Transnational Social Fields:
Changing Employment Scenario among the 1.5 and Second Generation in Japan”
Johanna O. Zulueta(アテネオ・デ・マニラ大学講師、日本学術振興会外国人特別研究員)
“When Death Becomes Her Question: Death, Identity, and Perceptions of Home
among Okinawan Women Return Migrants”
工藤晴子(一橋大学博士後期課程、日本学術振興会DC1)
“Activating Sexuality and Trauma: Narrative Construction of Mexican
Sexual Minority Asylum Seekers in the San Francisco Bay Area”
村上一基(一橋大学博士後期課程、日本学術振興会DC2)
“Educating Adolescents of Immigrant Families in the French Suburbs: Dissonance between Public Schooling and Family Culture”
司会:伊藤るり(一橋大学) コメンテーター:
アレハンドロ・ポルテス(プリンストン大学)
ミリヤナ・モロクワシチ(フランス国立科学研究センター) ルイス・グアルニーソ(カリフォルニア大学デイヴィス校) |
*午前の部(10:15~12:00) 基調講演1 アレハンドロ・ポルテス(プリンストン大学)
“Transnationalism and the State in Comparative Perspective”
基調講演2 ミリヤナ・モロクワシチ(フランス国立科学研究センター)
“Transnational Mobilities and Gender in Europe”
*午後の部(13:15~17:00) パネル・ディスカッション 「日本における国際社会学のパースペクティブ――東アジアの文脈」 司会:大石奈々(上智大学) 報告: 小井土彰宏(一橋大学) 小ヶ谷千穂(横浜国立大学 ) 佐々木剛二(日本学術振興会特別研究員PD) グラシア・リュウ・ファーラー(早稲田大学) コメント&ディスカッション コメンテーター:
ルイス・グアルニーソ(カリフォルニア大学デイヴィス校)
伊藤るり(一橋大学) Concluding Remarks |
2013 marks the 20th anniversary of the Transnational Sociology Program in the Graduate
School of Social Sciences at Hitotsubashi University. Over these two decades, the field of
transnational sociology in Japan has made significant progress; importantly it has successfully
incorporated younger talented scholars. Now it is time, we believe, to reexamine the status quo
of this field of studies and, on the basis of our diversification into multiple fields of research, to
move our program to the next developmental stage.
To this end, we are holding an international symposium at Hitotsubashi University on June
21-22 to which we have invited three distinguished scholars in transnational sociology. Two of the
three experts come from North America, where research in this field first developed, and one
works in Europe, where the study of transnational mobility has gained a new dynamic in recent
years. Bringing them together with researchers who work in Asia, though not always on it, we are
making a singular move to establish a tri-regional perspective in transnational sociology, drawing
on expertise from Europe, the United States and East Asia. Our critical aim is to assess whether
and how research perspectives are embedded in historically structured regional contexts. We
also see this scholarly meeting as a great opportunity to begin an intense dialogue among
transnational sociologists researching different regions and to more fully share what we, in
Japan-based transnational sociology, have achieved. We welcome active participation of experts,
researchers in broader social sciences, and students from within as well as from outside
Hitotsubashi University.
Day 1 Friday, June 21, 2013 Junior Scholars’ Workshop on Transnational Sociology |
Day 2 Saturday, June 22, 2013 International Symposium: Comparing Regional Perspectives of Transnational Sociology: North America, Europe and East Asia |
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Ayami HIRASAWA (Graduate School of Social Sciences, Hitotsubashi University)
“Increasing Occupational Opportunities of Young Vietnamese in Transnational Social Fields:
Changing Employment Scenario among the 1.5 and Second Generation in Japan”
Johanna O. Zulueta (Ateneo de Manila University, JSPS Postdoctoral Fellow)
“When Death Becomes Her Question: Death, Identity, and Perceptions of Home
among Okinawan Women Return Migrants”
Haruko KUDO (JSPS Research Fellow DC1, Hitotsubashi University)
“Activating Sexuality and Trauma: Narrative Construction of Mexican
Sexual Minority Asylum Seekers in the San Francisco Bay Area”
Kazuki MURAKAMI (JSPS Research Fellow DC2, Hitotsubashi University)
“Educating Adolescents of Immigrant Families in the French Suburbs: Dissonance between Public Schooling and Family Culture”
Moderator:Ruri ITO (Hitotsubashi University) Commenters:
Alejandro Portes (Princeton University)
Mirjana Morokvasic (The National Center for Scientific Research - CNRS) Luis GUARNIZO (University of California, Davis) |
*MORNING SESSION(10:15~12:00) Keynotes1 Alejandro Portes (Princeton University)
“Transnationalism and the State in Comparative Perspective”
Keynotes2 Mirjana Morokvasic (The National Center for Scientific Research - CNRS)
“Transnational Mobilities and Gender in Europe”
*AFTERNOON SESSION(13:15~17:00) Panel Discussion “Developments of Transnational Sociology: The Contexts of Japan and East Asia” Moderator: Nana Oishi (Sophia University) Presentation: Akihiro KOIDO (Hitotsubashi University) Chiho OGAYA (Yokohama National University) Koji SASAKI (JSPS Research Fellow PD) Gracia Liu-Farrer (Waseda University) Comments and Overall Discussion Commenters:
Luis GUARNIZO (University of California, Davis)
Ruri ITO (Hitotsubashi University) Concluding Remarks |
日本における国際結婚件数は、1980年代半ば以降、大幅に増加し、今日ではおよそ20件に1件が国際結婚といわれる。また、生まれてくる子ども30人に1人が国際結婚の親をもち、その数は1990年代半ば以降、毎年2~3万人程度の規模で増えてきている。これらの子どもたちは、もはや敗戦後の本土に特徴的で、沖縄では今日なお大きな比重を占める「アメラジアン」だけでなく、日比、日中、日韓などのカップルのもとに生まれ、背景がきわめて多様化している。このほか、外国籍同士の国際結婚のもとに生まれる子どもの存在や、婚外子のケースにも留意しておく必要がある。「ハーフ」や「ダブル」など、さまざまに名ざされる、これらの子どもたちにとって、日本社会に生きるということは、どのような経験であるのか。同時に念頭に置くべきは、敗戦後67年が経過したいま、かつて「混血児」、あるいは「ハーフ」と呼ばれた人びとがすでに老齢期に入りつつあるという現実である。かれ/彼女らにとって、日本社会を生き抜くということは、どのような経験であったのか。翻ってまた、日本社会にとって、かれ/彼女らはどのような位置を占めているのか/占めてきたのか/そして、占めうるのか。
このワークショップでは、〈人種/エスニシティ〉の既成カテゴリーを揺さぶり、攪乱する、〈人種」/エスニシティの混淆〉という問題を、J・バトラーに倣って、「アイデンティティ・トラブル」と呼ぶこととしたい。それは、当事者にとっての「トラブル」であると同時に、日本社会にとっての「アイデンティティ・トラブル」でもある。
「単一民族神話」のもと、しばしば不可視化されてきた日本社会の〈人種/エスニシティ〉の境界編成、その国家との関係、ジェンダーや階層とのインターセクショナリティ、グローバリゼーションの作用などについて考え、また〈エスニシティの社会学〉の有効性についても批判的に検討する場として、本ワークショップを開催したい。
講師紹介:経済理論、国際経済学、フェミニスト経済学。主要共編著に、『フェミニスト・ポリティクスの新展開』(御茶の水書房)、『国際移動と<連鎖するジェンダー>』(作品社)など。2010~11年度フェミニスト経済学会代表幹事。*内容:グローバリゼーションは新国際分業を軸とする生産領域での展開から、家事・介護労働者の国際移動が示す再生産領域での展開へと深化を遂げ、さらにリーマ ン・ショック後の世界においては、「金融化による横奪(ディスポゼッション)」を特徴とする新たな資本蓄積をもたらしている。「横奪による蓄積」(ハーヴェイ)はいかなる意味でジェンダー化されているのか。この点について、足立さんに問題提起していただきます。ふるってご参加ください。予約は不要です。
講師紹介:専門は、アイデンティティ論、ジェンダー論、国民国家とエスニシティ論など。
著書に、『〈民が代>斉唱』(岩波書店)、『私という旅』(青土社、リサ・ゴーと共著)
など。「ホットライン姉妹(ちゃめ)」の代表も務めている。
内容:東日本大震災では、日本人だけでなく、在日朝鮮人、国際結婚、研修生、留学生など
さまざまな背景をもつ外国籍の人びとが被災しました。この講演では、被災した外国籍女性への支援にかかわってきた、
社会学者の鄭暎惠さんをお迎えし、外国籍女性にとっての3.11を語っていただきます。また、今年7月に施行された改定
入管法がもつ意味や影響についても考えていきます。ふるってご参加ください。予約は不要です。
EUSIでは、このたびEUの難民問題とジェンダーにくわしいジェーン・フリードマンさん(パリ第8大学教授)をお招きし、講演会とプレ・イベントを開催します。EUにおける移民政策、ならびに難民政策は近年、安全保障政策としての側面を強める傾向(セキュリタイゼーション)にありますが、この変化は庇護申請者、とりわけ女性にどのような影響をもたらしているのでしょうか。フリードマンさんは、最近、ユネスコのジェンダー平等専門家としても各地の難民キャンプを訪問されています。今回の講演会は、そうしたフィールド経験も踏まえた、EUの現状を知る貴重な機会となることでしょう。なお、講演会に先立ち、大学院生による難民研究ワークショップを開催し、フリードマンさんとの意見交換を行う場も設けます。講演会、ワークショップともに、使用言語は英語ですが、学内外でこの問題に関心のある方々に広く開かれています。どうぞふるってご参加ください。
今年はILOにおいて、家事労働者のディーセント・ワークに関する条約と勧告が採択されるという画期的出来事がありました。そうした世界的な動きも念頭に置きながら、12月10日(土)~11日(日)の2日間、「仏伊独における移住家事・介護労働者――就労実態、制度、地位をめぐる交渉」と題するワークショップを開催します。このワークショップでは、2009年度より科研費補助金を受けて行ってきた同名の共同研究が最終年度を迎えるにあたり、これまでの調査によって得た暫定的知見を報告し、この問題に関心をお持ちの方々と意見交換を行いたいと願っています。ご関心をお持ちの方々、どうぞふるってご参加ください。
ラセル・S・パレーニャス氏(南カリフォルニア大学教授)による講演会『道徳的帝国主義とアメリカの人身取引撲滅キャンペーン(Moral Imperialism and the U.S. War on Trafficking)』を開催します。英語での講演になりますが、質疑応答には逐語通訳をつける予定です。
夏曉鵑氏(世新大學社會發展研究所教授兼所長、台湾)による講演会『グローバル化、結婚移民、国家の介入――台湾の事例(Globalization, Marriage Migration and State Intervention: The Case of Taiwan)』を開催します。国際結婚で台湾に居住する女性移住者支援活動にくわしい。5 件に1 件の結婚が国際結婚という台湾社会の外国人配偶者女性の現状、背景、 政策の現状について話していただきます。英語での講演になります。
フランスではC.ギリガン『もうひとつの声』の改訳(2008年)が話題を呼ぶなど、2000年代半ば以降、「ケア」への関心が活性化してきています。この公開レクチャーでは、フランスのジェンダー研究を牽引してきた草分けの一人で、日系ブラジル人の労働社会学者、エレナ・ヒラタさんをお迎えし、「ケア」と労働をめぐる議論を中心に、フランスにおけるジェンダー研究の動向をうかがいます。
日本においてもフランスにおいても、ケアは主として女性の仕事と考えられてきました。そして両国において、ケアの担い手としての女性移住者の存在が注目されています。国際移民が拡大する今日、ジェンダー平等とは何を意味するのでしょうか。また、ケアの倫理はどのようなものとして構想されるのでしょうか。国際女性デーを記念して、日仏研究者による意見交換の場を設けます。どうぞ、ふるってご参加ください。(入場無料、同時通訳付)
『モダンガールと植民地的近代――東アジアにおける資本・帝国・ジェンダー』(伊藤るり、坂元ひろ子、 タニ・バーロウ編、岩波書店)の刊行を記念して、著者全員参加によるスライド・ショー(第1 部)、ならびにコメンテーター3 名を 招いての合評会(第2 部)からなる国際シンポジウムを開催します。
【会場を変更します!】
事前申込み者数が予定した3号館の収容人数をすでに超えた状況ですので、急遽、会場を同じく
東キャンパスの2号館に変更することになりました。当日、案内板を出しますが、お間違いのないよ
うお願いします。
1970年代初頭、「家事労働に賃金を」というスローガンを打ち出したイタリアのフェミニズムは、それから 40年近くを経過したいま、大量の不安定就労層(<プレカリアート>)の出現、さらには移住家事・介護労働者の急増という状況のなかで、どのような展開を見せているのか。若い世代のフェミニストたちは何を思い、どう社会を変えようとしているのか。イタリアにおけるフェミニズムと同国で働くアフリカ出身移住家事労働者の問題を追いかけてきたジャクリーン・アンドールさんにお話をいただきました。
講師:ジャクリーン・アンドール(Jacqueline Andall), Ph.D
イギリス・バース大学ヨーロッパ研究学部上級講師、一橋大学外国人客員研究員。専門はイタリア地域研究とフェミニズム研究。イギリス・社会主義フェミニズムの流れを代表する雑誌 Feminist Reviewの編集委員。
司会:伊藤るり
2007 年12 月初旬、一橋大学にて、国際シンポジウム「再生産領域のグローバル化とアジア――移住者、家族、国家、資本」(12 月8 日~9 日)、ならびにプレシンポ企画「映画で観る<アジアにおける国際結婚、そして再生産労働の国際移転>」(12 月7 日)を開催した。
本シンポジウムでは、〈再生産領域のグローバル化〉をキータームとして、1980 年代半ば以降、アジアにおいて拡大傾向にある女性の国際移動、特に家事や介護、性労働の分野での海外就労、ならびに家族形成を目的とする結婚移民などを取り上げ、その現状と問題点について意見交換を行った。「再生産領域」ということばで、私たちは、結婚移民、人身売買、代理母、身体部位の取引など、従来の「再生産労働」と呼ばれてきた範囲よりも広い、人の生物学的、ならびに社会的再生産にかかわるあらゆる活動と社会過程を想定している。今回のシンポジウムでは、その範域を必ずしも全面的にカバーしきれてはいないが、既存のグローバル化研究では周辺的な位置づけであった「再生産領域」に焦点を当て、そのグローバル化の諸相をアジアの文脈で把握しようと試みた。
シンポジウム「再生産領域のグローバル化とアジア――移住者、家族、国家、資本」での報告、
コメント、討論内容をまとめた中間報告書の「はしがき」と目次はこちら。