『自由民主主義とは何か』(ちくま新書、2026年)目次

まえがき

序章 問い直される自由民主主義


 自由民主主義の苦境/普遍的な原理か?/本書の課題と方法/グローバル・ヒストリー

第T部 形成

第1章 すべては国家から始まった


1 なぜ近代西欧から始めるのか

 ヨーロッパの固有性/主権という概念

2 中世的世界の解体

 中世ヨーロッパの特徴/トマス・アクィナスの思想/宗教改革

3 ホッブズの主権論

 ピューリタン革命とホッブズ/機械としての人間/自然状態とホッブズ問題/主権の設立/絶対王政との関係

4 現代と主権論

 シュミットの主権論/現代における主権

第2章 自由主義の誕生――主権をいかに統制するか@


1 市場という秩序

 自由主義の成立条件/市場の思想史的意味

2 ロックにおける国家と社会

 名誉革命とロック/ロックの人間論/自然状態/政治社会の成立/法の支配と抵抗権/ロックの思想的影響

3 スミスにおける国家と市場

 富と徳――18世紀思想の文脈/商業社会と国家/市場の道徳的基礎――同感の原理

4 自由主義の成立条件

 なぜ近代ヨーロッパで自由主義が成立したか/自由主義と植民地主義

第3章 民主主義の萌芽――主権をいかに統制するかA


1 公共とは何か

 正統性の源泉としての人民/公共という言葉

2 ルソーの一般意志論

 独学者ルソー/自然状態からの堕落/文明社会の悲惨/一般意志の形成/一般意志にもとづく共和国/覚醒のシナリオ

3 カントの共和国論

 学究の徒カント/人間の普遍的尊厳/目的の国としての共和国/覚醒のシナリオ――理性の公共的使用

4 自由民主主義の誕生

 情念の力か、理性の力か?/自由主義と民主主義の結合

第U部 危機と再生

第4章 自由主義への批判

1 19世紀ヨーロッパの文脈

 フランス革命の衝撃/工業化と都市化

2 ヘーゲルにおける市民社会と国家

 ヘーゲルの思想的課題/法・道徳・倫理/家族と市民社会/自由の実現としての国家/民族と世界史

3 マルクスにおける資本主義と国家

 革命家マルクス/ヘーゲルへの批判/上部構造としての国家/資本主義の矛盾/マルクス以後の展開/21世紀の資本主義

第5章 民主主義への懐疑

1 共和政と民主政

 民主政=衆愚政治という見方/18世紀以降の変化

2 民主的専政――トクヴィルの民主主義論@

 貴族の末裔トクヴィル/民主主義の再定義/多数者の暴政/民主的専政

3 民主的専政を抑止する条件――トクヴィルの民主主義論A

 地方自治と自発的結社/言論の自由

4 大衆民主主義とトクヴィル

第6章 全体主義という破局

1 破局の時代

 二つの世界大戦/全体主義という言葉

2 全体主義の起源

 アレントの生涯/前史としての帝国主義/イデオロギーとテロル/大衆のメンタリティ

3 公共世界の喪失

 三つの行為類型/公的領域の意味/近代世界と大衆の登場

4 アレントと現代

第7章 妥協の時代

1 自由民主主義の「普遍化」

 西側諸国の体制イデオロギー/思想的な勝利か?

2 自由主義の修正

 戦間期の自由主義批判/イギリスのニュー・リベラリズム/ケインズとベヴァリッジ

3 民主主義の再定義

 シュミットの議会主義論/シュンペーターの民主主義論

4 第二次世界大戦後の妥協

 自由の意味変容/代表制民主主義への合意

第V部 分裂

第8章 新自由主義――リベラリズムの再構成@

1 1970年代の転換

 妥協から分裂へ/グローバル化と産業構造の変化

2 新自由主義の登場

 ハイエク『隷従への道』/フリードマンの自由論/政府の役割――競争的市場の維持

3 自由の基底性

 自由と無知/自生的秩序としての市場/不平等の是正は必要か/抽象的なルールによる権力の制約

4 新自由主義と現代

 新自由主義の広がり/歴史認識との関係

第9章 ロールズの正義論――リベラリズムの再構成A

1 ロールズの登場

 リベラリズムの再構成/規範理論の復権

2 正義の二原理

 公正としての正義/原初状態という仮定/正義の導出/格差原理とマキシミン・ルール

3 正義論の射程

 最大多数の最大幸福とロールズ/結果の平等を目指すべきか/機会均等とは何か/才能の格差は是正すべきか/財産所有の民主制/福祉国家との違い――「事前」の分配

4 正義論以降の展開

 現代政治の対立軸/センのケイパビリティ・アプローチ/運の平等をめぐる論争

第10章 普遍性と差異――アイデンティティをめぐる対立

1 文化的対立の浮上

 文化的リベラルと保守/ロールズへの批判

2 差異の承認@――コミュニタリアニズムと多文化主義

 サンデルの「負荷なき自己」批判/物語的探求としての生/正義にたいする善の優位/コミュニタリアンの政治像/多文化主義/コミュニタリアニズムの射程

3 差異の承認A――フェミニズムの政治理論

 ジェンダー中立的な制度の限界/リベラリズムによる家族の軽視/公私区分の問いなおし/積極的差別是正/ケアの倫理/正義論の修正/ケアと民主主義

4 差異をどこまで承認すべきか?

 リベラリズム批判と差異の政治/新しい民主主義の探求

第11章 現代の民主主義論

1 代表制民主主義への不信

 ポスト・デモクラシー/文化的保守とポピュリズム

2 正統性の危機

 参加民主主義/ハーバーマスの「正統化の危機」論/生活世界の植民地化

2 熟議民主主義

 二段階の民主主義/熟議とは何か/制度化の試み

3 闘技民主主義

 ムフによる熟議民主主義批判/対抗性と左派ポピュリズム

4 現代民主主義論の課題

 熟議と闘技の関係/分極化

第12章 グローバル正義論

1 自由民主主義の適用範囲

 国境を越える諸問題の噴出/ロールズによる正義論の再構成/グローバルな正義をめぐる論争

2 普遍的正義としての人権

 普遍的な正義を語れるか?/ポッゲの「グローバルな制度的秩序」批判/人権とグローバル資源配当

3 諸人民の法

 正義論と諸人民の法/理想的理論/非理想的理論

4 国民という共同体

 特別な関係としての国民/グローバルな救済責任

5 自由民主主義は普遍的か?

終章 自由民主主義のゆくえ

 自由主義と民主主義の結合(第T部)/危機と再生(第U部)/分裂の時代(第V部)/自由民主主義は生き残れるか/国家と市場の拮抗関係/多元性と公共性/歴史にもとづくパトリオティズム/欧米の経験を越えて

あとがき

参考文献

図表出典一覧