2014年度
大学院ゼミナール


【研究分野】

政治学、政治理論、比較政治経済学


【ゼミの概要】

1 目標

 政治学、比較政治、政治理論に関する代表的な文献、最近の専門書を輪読し、討議を重ねることで、分析枠組みの設定、データの扱い方、論理の運び方などに関する研究の基礎を身につけることを目指します。

2 概要

(1)修士課程の学生は、2年間で修士論文を仕上げるための技法を順を追って習得できるようにします。基礎的な学術作法に関するオリエンテーションを行い、基本書・専門書の輪読(レジュメを用いた発表と討議)を行い、定期的な研究報告を行っていただきます。

(2)博士課程の学生は、専門書に関する批判的な討議、研究動向報告、博論の中間報告を通じて、段階的に博士論文の研究を進められるようにします。

3 各学期の予定

(1)夏学期
 今年度は「社会運動とデモクラシー」を共通テーマとします。1970年代の「新しい社会運動」から1990年代の民主化運動、2000年代のオルター・グローバリゼーション運動まで、社会運動は既存の政治勢力(政党など)とも、労働運動とも異なるデモクラシーの担い手としてくり返し期待され、理論的に着目されてきました。今日でもこうした運動にデモクラシーの将来を託す言説は見られるものの、実際の政治過程では社会運動の影響力は限定され、むしろ政治権力の集権化が強まっているようにも見えます。今日の状況をどうとらえればよいのか、社会運動の批判性や革新性は失われたのか、社会運動とデモクラシーの将来をどう展望できるのかを、代表的な社会運動論、デモクラシー論をたどりつつ再検討したいと思います。扱う予定の論者・文献は、Alberto Melucci、Claus Offe、Jean Cohenなどの古典的な社会運動論から、J. Smith, D. Wiest, Social Movements in the World-System (2011), Della Porta and F. Rucht, Meeting Democracy: Power and Deliberation in Global Justice Movements (2013)などの最新の社会運動論、 John Keaneの最新刊『デモクラシーの生と死』を考えています。

※その他の参考文献:田中拓道「福祉国家と社会運動」田村哲樹・堀江孝司編『模索する政治』ナカニシヤ出版、2011年


(2)冬学期
 専門書や論文に関する批判的討議を行います。輪読形式ではなく、論点ペーパーをもとに内容に関して討議する形式とします。テーマは参加する学生と話し合って決めることにします。

※冬学期は「新しい社会的リスクと労働・社会運動の連携の可能性」をテーマとして、以下の文献を輪読する予定。
伊藤光利、宮本太郎編『民主党政権の挑戦と挫折』日本経済評論社、2014年
新川敏光『福祉国家変革の理路』ミネルヴァ書房、2014年
Giuliano Bonoli, "New Social Risks and the Politics of Post-industrial Social Politics", in Armingeon and Bonoli eds., The Politics of Post-industrial Welfare States: Adapting post-war social policies to new social risks, Routledge, 2006, pp. 3-26.
Silja Hausermann, "The Politics of Old and New Social Policies", in Bonoli and Natali eds., The Politics of the New Welfare State, Oxford University Press, 2012, pp. 111-132.
Kathleen Thelen, Varieties of Liberalization and the New Politics of Social Solidarity, Cambridge University Press, 2014.


(3)研究動向報告、中間報告
 履修者は、毎学期最低1回は研究テーマに関する動向報告(主要な先行研究の整理と批判)、中間報告(リサーチクエスチョン、仮説、資料紹介を含む)を行っていただきます。 


【前年度の履修者構成】

修士課程5名、博士課程2名(サブゼミ、学外者含む)。日欧の政治、政治理論、社会学、社会政策、地域研究など様々な関心を持つ学生が混在しています。

【最近の履修者の研究テーマ】

・フランス現代政治における右派の再編
・ドイツ家族政策
・日本の環境政治
・戦後日本の障害者福祉
・戦後日本の市民社会論
・アフリカにおける法の支配
・現代デモクラシー論
など。

【その他】

政治学の理論と方法については、大学院講義の「政治学T」「政治学U」で扱います。合わせて受講することで、より体系的に政治学を学べると思います。