2011年度大学院ゼミナール
1 研究分野
政治理論、比較政治
2 ゼミの概要
題目:「現代福祉国家の原理と展開」
現代福祉国家の再編と原理について、1年かけて体系的に検討する。政治学、政治経済学の最先端の議論状況を知り、その成果と問題点を考察するとともに、資本主義、国家、公正と平等などの概念について、原理的な考察ができるようになることを目指す。
(1)夏学期
先進諸国の福祉国家再編にかんする近年の代表的な研究を輪読する。主な候補は以下のとおりだが、最終的には受講者と相談して決定する。
・イギリス
近藤康史『個人の連帯―「第三の道」以後の社会民主主義』勁草書房、2008年
・ドイツ
近藤正基『現代ドイツ福祉国家の政治経済学』ミネルヴァ書房、2009年
・フランス
田中拓道「フランス福祉レジームの変容」新川敏光編『福祉国家の収斂と分岐』
ミネルヴァ書房、2011年(近刊)
・アメリカ
水谷真理「アメリカ福祉国家の再編―リスクの 「私化」 と 1990 年代の
分岐点(1〜3)」『名古屋大学法政論集』220号、221号、229号、2007-2009年
・スウェーデン
宮本太郎「社会民主主義の転換とワークフェア改革―スウェーデンを軸に」
『年報政治学』2001年号
宮本太郎「スウェーデンの政権交代と新しい労働戦略」『生活経済政策』536号、2007年
渡辺博明「2006年スウェーデン議会選挙と政権交代―「選挙連合」と
中道右派政権の成立」『選挙研究』25巻2号、2009年
渡辺博明「2010年スウェーデン議会選挙--社会民主党の時代の終わり?」
『生活経済政策』582号、2010年
・オランダ
水島治郎「オランダにおける新たな雇用・福祉国家モデル」『思想』983号、2006年3月
その他田村哲樹編『模索する政治』ナカニシヤ書房、2011年所収の諸論文。
(2)冬学期
福祉国家に関する規範理論的な考察を行い、資本主義、国家、社会規範の三者にかんする原理的な探究を進める。
具体的には、(a)教員によるレクチャーと討議、(b)研究書の輪読、(c)参加者による研究発表という三つを組み合わせる。
(a)教員によるレクチャー
・第1回: 政治経済学の展開と隘路(20世紀の福祉国家論のレビューと問題点の提示)
・第2回: 資本主義論(新古典派経済学の限界、資本主義の危機論の問題点、脱商品化概念の再構築)
・第3回: 国家論(近代政治思想における国家、20世紀社会理論における国家、資本主義と国家)
・第4回: 社会論(国家と社会、社会規範の位置づけ)
・第5回: 福祉国家理論の再構成
(b)研究書の輪読
日本語の最も包括的な福祉国家の規範理論書として以下を輪読する。
塩野谷祐一『経済と倫理―福祉国家の哲学』東京大学出版会、2002年
塩野谷祐一『経済哲学原理―解釈学的接近』東京大学出版会、2009年
(c)参加者による研究発表
修士・博士論文の研究発表、もしくは学会報告の研究発表を行う。
3 メモ
・現代政治学の理論と方法については、大学院講義の「政治学」で扱う予定である。合わせて受講することで理解が深まると思われる。