2025年度学部ゼミナール



【ゼミの研究分野】

政治学、比較政治経済学、政治理論

【授業科目の概要】


・このゼミで扱う分野は、政治学、比較政治経済学、政治理論です。

・具体的には以下のような問いを考えます。グローバル化の進む時代にふさわしい雇用・社会保障・教育・家族政策とはどのような政策か。それはいかなる政治的条件のもとで実現できるのか。なぜ先進諸国でポピュリズムや排外主義が広がっているのか。日本社会の課題とは何か、それはいかなる政治的条件によって解決できるのか。

・安全保障や国際関係よりも、グローバル化によって各国の国内政治や政策がどのように変容しているのかを主に扱います。規範的な理論も参照しつつ、先進諸国の制度・政治過程の比較を用いて学術的に考察することに主眼が置かれます。

・担当教員の専門は先進諸国の福祉国家ですが、最近はグローバル・サウスの諸問題、世界的な格差や分配政策にも関心を持っています。もし学生と関心が合えば、こうしたテーマも扱います。

【到達目標】

・個別政策の知識を深めるというよりも、日本をはじめとする先進諸国の進むべき方向について、自分なりの大きなビジョンを固め、それを実現するための道筋や戦略を具体的に考えられるようになることが目標です。

・学術的なスキルに関しては、2年間を通じて以下を身に着けることを目指します。(1)専門書・学術論文の正確な読解、(2)プレゼンテーションとディスカッションの技法、(3)情報収集と情報整理の技法、(4)学術論文の執筆手順。

【他の授業との関連・教育課程の中での位置づけ】

 政治学の各科目、社会政策などと関連があります。

【授業の内容】

・3年次春夏学期
 政治学、政治経済学、政治理論の基本書を通じて、幅広く基礎知識を習得することを目指します。教科書、新書から出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。
 夏合宿は、学生から希望があれば現地の視察やインタビューを兼ねて8〜9月に行います。過去の例は北海道、沖縄、広島、大阪、福島、韓国など。

・3年次秋冬学期
 専門的な学術書と英語論文を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れるとともに、学術世界の最先端の議論に触れ、論文のイメージを作ることです。これらと並行して、グループワークをつうじて現代政治の諸問題について理解を広げ、情報収集と論理の組み立て方を学びます。学期末には卒論の研究テーマを絞り込みます。

・4年次
 春学期は各自の研究テーマに関連する文献報告を主に行います。夏学期から卒論の研究報告を行っていきます。秋冬学期は3年生・4年生の合同とし、各自の研究についてディスカッションを重ねつつ、学術論文レベルの卒論を仕上げていきます。

【授業外の学修】

(1)春夏学期は主に輪読を行います。発表者がレジュメを用意し、文献の概要を発表します。それ以外の参加者はA4で1枚程度のコメントペーパーをmanabaに提出します。当日は司会者がコメントペーパーをまとめ、報告とディスカッションの司会を行います。なお、毎回の読解量は日本語文献であれば1冊もしくは100〜150ページ程度の抜粋、英語文献であれば20〜30ページ程度です。

(2)グループワークの場合は、前もってグループで話し合い、合同で報告資料を作成し、報告します

(3)3年生は4年生の卒論報告に対してコメントを行います。

【テキスト・文献】

ゼミ参加前に読んでおくことをお勧めするのは以下の本です。
久米ほか『政治学』有斐閣、2011年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論』有斐閣アルマ、2023年

輪読本は、参加者の関心や希望に合わせて初回の授業で決定します。2025年度の本は検討中ですが、たとえば以下のような文献を考えています。

網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年
田中、近藤、矢内、上川『政治経済学―グローバル化時代の国家と市場』有斐閣ストゥディア、2020年
伊藤武ほか『民主主義の比較政治学』有斐閣、2025年
アセモグル、ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか―権力・繁栄・貧困の起源』ハヤカワ文庫、2016年
酒井大輔『日本政治学史―丸山眞男からジェンダー論、実験政治学まで』中公新書、2025年
山口慎太郎『子育て支援の経済学』日本評論社、2021年
松岡亮二『教育格差』ちくま新書、2019年
境家史郎『戦後日本政治史―占領期から「ネオ55年体制」まで』中公新書、2023年
比較政治学会編『比較政治学事典』丸善出版、2025年の各項目
田中拓道『自由民主主義―歴史と展望』ちくま新書、2025年公刊予定
向山直佑『石油が国家を作るとき―天然資源と脱植民地化』慶應義塾大学出版会、2025年

【成績評価の方法と基準】

毎回のゼミでのコメントペーパー、報告、ディスカッションへの貢献から総合的に評価します(絶対評価)。

【受講生に対するメッセージ】

・対面で行いますが、オンラインでも参加可とします。

・海外渡航が困難な時代ですが、長期海外留学をしたい方には積極的に支援を行います。

・将来研究職に就くことを考えている方を歓迎します。学部時代から必要な学術的トレーニングを段階的に積めるよう配慮し、学内外の進学について助言を行います。ゼミの卒業生には海外の大学院に進学した人、大学教員になった人もいます。