2023年度学部ゼミナール


【ゼミの研究分野】

政治学、比較政治経済学、政治理論

【授業科目の概要】

・このゼミで扱う分野は、政治学、比較政治経済学、政治理論です。

・具体的には以下のような問いを考えます。グローバル化の進む時代にふさわしい雇用・社会保障・教育・家族政策とはどのような政策か。それはいかなる政治的条件のもとで実現できるのか。先進国のあいだでどのような違いが見いだせるか。なぜ日本では政策転換が遅れているのか。市場の自由と国家による再分配のバランスはどうあるべきか。格差はすべての国で広がっているのか。先進国でポピュリズムや排外主義の動きが強まっているのはなぜか。グローバルな環境問題、不平等に各国政府はどのように対応できるのか。

・安全保障や国際関係よりも、グローバル化によって各国の国内政治や政策がどのように変容し、各国がどのようにグローバル化に対応しているのかを扱います。主に先進諸国の比較から、規範的な理論も参照しつつ考察することに主眼が置かれます。

【到達目標】

・個別政策の知識を深めるというよりも、日本をはじめとする先進諸国の進むべき方向について、自分なりの大きなビジョンを固め、それを実現するための道筋や戦略を具体的に考えられるようになることが目標です。

・学術的なスキルに関しては、2年間を通じて以下を身に着けることを目指します。(1)専門書・学術論文の正確な読解、(2)プレゼンテーションとディスカッションの技法、(3)情報収集と情報整理の技法、(4)学術論文の執筆手順。

【他の授業との関連・教育課程の中での位置づけ】

 政治学の各科目、社会政策などと関連があります。

【授業の内容】

・3年次春夏学期
 政治学、政治経済学、政治理論の基本書を通じて、幅広く基礎知識を習得することを目指します。教科書、新書から出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。
 夏合宿は、学生から希望があれば現地の視察やインタビューを兼ねて8〜9月に行います。過去の例は沖縄、福島、大阪、韓国など。

・3年次秋冬学期
 専門的な学術書と英語論文を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れるとともに、学術世界の最先端の議論に触れ、論文のイメージを作ることです。これらと並行して、グループワークをつうじて現代政治の諸問題について理解を広げ、情報収集と論理の組み立て方を学びます。学期末には卒論の研究テーマを絞り込みます。

・4年次
 春学期は各自の研究テーマに関連する文献報告を主に行います。夏学期から卒論の研究報告を行っていきます。秋冬学期は3年生も出席し、各自の研究についてディスカッションを重ねつつ、学術論文レベルの卒論を仕上げていきます。

【授業外の学修】

(1)春夏学期は主に輪読を行います。発表者がレジュメを用意し、文献の概要を発表します。それ以外の参加者はA4で1枚程度のコメントペーパーをmanabaに提出します。当日は司会者がコメントペーパーをまとめ、報告とディスカッションの司会を行います。なお、毎回の読解量は日本語文献であれば1冊もしくは100〜150ページ程度の抜粋、英語文献であれば20〜30ページ程度です。

(2)グループワークの場合は、前もってグループで話し合い、合同で報告資料を作成。グループワークにするか個別の研究にするかは、学生と話し合って決めます。

(3)4年生の卒論に対してコメントを行うこともあります。

【テキスト・文献】

ゼミ参加前に読んでおくことをお勧めするのは以下の本です。
久米ほか『政治学』有斐閣、2011年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年

輪読本は、参加者の関心に合わせて初回の授業で決定します。

※2023年度の輪読文献は、学生と相談の結果、以下に決定。

網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年
伊藤武、網谷龍介『ヨーロッパ・デモクラシーの論点』ナカニシヤ出版、2022年
筒井清輝『人権と国家―理念の力と国際政治の現実』岩波新書、2022年
田中、近藤、矢内、上川『政治経済学―グローバル化時代の国家と市場』有斐閣ストゥディア、2020年
齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ―社会正義の探究者』中公新書、2021年
フランシス・フクヤマ『リベラリズムへの不満』新潮社、2023年
田中拓道『福祉国家の基礎理論』岩波書店、2023年
山崎史郎『人口戦略法案―人口減少を止める方策はあるのか』日本経済新聞出版、2021年
東島雅昌『民主主義を装う権威主義―世界化する選挙独裁とその論理』千倉書房、2023年
篠田英朗『戦争の地政学』講談社現代新書、2023年
高端正幸ほか編『揺らぐ中間層と福祉国家―支持調達の財政と政治』ナカニシヤ出版、2023年
アダム・プシェヴォスキ『民主主義の危機―比較分析が示す変容』白水社、2023年

Anton Hemerijck, "Social Investment and Its Critics", in A. Hemerijck ed., The Uses of Social Investment, Oxford University Press, 2017, p. 3-33.
Steven M. van Hauwaert and Stijn van Kessel, "Beyond Protest and Discontent: A Cross-national analysis of the effect of populist attitudes and issue positions on populist party support," European Journal of Political Research, no. 57, 2018, pp. 68-92.
Elie Murard, "Immigration and Preferences for Redistribution: Empirical evidence and political implications of the progressive's dilemma in Europe," in Markus M. L. Crepaz ed., Handbook on Migration and Welfare, Elgar, 2020, pp. 118-136.

【成績評価の方法と基準】

毎回のゼミでのコメントペーパー、報告、ディスカッションへの貢献から総合的に評価します(絶対評価)。

【受講生に対するメッセージ】

・対面で行いますが、オンラインでも参加可とします。

・2019年度にカナダのトロント大学、イギリスのオックスフォード大学で在外研究を行いました。海外渡航が困難な時代ですが、海外留学をしたい方には積極的に支援を行います。

・将来研究職に就くことを考えている方を歓迎します。学部時代から必要な学術的トレーニングを段階的に積めるよう配慮し、学内外の進学について助言を行います。ゼミの卒業生には海外の大学院に進学した人、大学教員になった人もいます。