2022年度学部ゼミナール


【ゼミの研究分野】

政治学、政治理論、比較政治経済学

【授業科目の概要】

・このゼミで扱う分野は、政治学、比較政治経済学、政治理論です。

・具体的には以下のような問いを考えます。グローバル化の進む時代にふさわしい雇用・社会保障・教育・家族政策とはどのような政策か。それはいかなる政治的条件のもとで実現できるのか。先進国のあいだでどのような違いが見いだせるか。なぜ日本では政策転換が遅れているのか。市場の自由と国家による再分配のバランスはどうあるべきか。格差はすべての国で広がっているのか。先進国でポピュリズムや排外主義の動きが強まっているのはなぜか。グローバルな環境問題、不平等に各国政府はどのように対応できるのか。

・安全保障や国際関係よりも、グローバル化によって各国の国内政治や政策がどのように変容し、各国がどのようにグローバル化に対応しているのかを扱います。主に先進諸国の比較から、規範的な理論も参照しつつ考察することに主眼が置かれます。

【到達目標】

・個別政策の知識を深めるというよりも、日本をはじめとする先進諸国の進むべき方向について、自分なりの大きなビジョンを固め、それを実現するための道筋や戦略を具体的に考えられるようになることが目標です。

・学術的なスキルに関しては、2年間を通じて以下を身に着けることを目指します。(1)専門書・学術論文の正確な読解、(2)プレゼンテーションとディスカッションの技法、(3)情報収集と情報整理の技法、(4)学術論文の執筆手順。

【他の授業との関連・教育課程の中での位置づけ】

 政治学の各科目、社会政策などと関連があります。

【授業の内容】

・3年次春夏学期
 政治学、政治経済学、政治理論の基本書を通じて、幅広く基礎知識を習得することを目指します。教科書、新書から出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。

・3年次秋冬学期
 専門的な学術書と英語論文を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れるとともに、学術世界の最先端の議論に触れ、論文のイメージを作ることです。これらと並行して、グループワークをつうじて現代政治の諸問題について理解を広げ、情報収集と論理の組み立て方を学びます。学期末には卒論の研究テーマを絞り込みます。

・4年次
 春学期は各自の研究テーマに関連する文献報告を主に行います。夏学期から卒論の研究報告を行っていきます。秋冬学期は3年生も出席し、各自の研究についてディスカッションを重ねつつ、学術論文レベルの卒論を仕上げていきます。

【授業外の学修】

(1)輪読の場合は、発表者がレジュメを用意し、それ以外の参加者はA4で1枚程度のコメントペーパーをmanabaに提出します。当日は司会者がコメントペーパーをまとめ、報告とディスカッションの司会を行います。なお、毎回の読解量は日本語文献であれば1冊もしくは100〜150ページ程度の抜粋、英語文献であれば20〜30ページ程度です。

(2)グループワークの場合は、前もってグループで話し合い、合同で報告資料を作成。

(3)4年生の卒論に対してコメントを行うこともあります。

【テキスト・文献】

ゼミ参加前に読んでおくことをお勧めするのは以下の本です。
久米ほか『政治学』有斐閣、2011年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年

輪読本は、参加者の関心に合わせて初回の授業で決定します。現時点では以下のような候補を考えています。
久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすすめ』有斐閣、2013年
田中、近藤、矢内、上川『政治経済学』有斐閣ストゥディア、2020年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年
中井遼『欧州の排外主義とナショナリズム』新泉社、2021年
山本圭『現代民主主義』中公新書、2021年
田中拓道『リベラルとは何か』中公新書、2020年
宮本太郎『貧困・介護・育児の政治』朝日選書、2021年
ユルゲン・コッカ『資本主義の歴史』人文書院、2018年
ジョン・ロールズ『政治的リベラリズム』筑摩書房、2022年

秋冬学期は主に英語論文を読みます。2021年度は以下のような論文を読みました。
・S. M. Himmelweit and S.-H. Lee, “Work-Family Policy Expansion and the Idea of Social Investment: the case of Germany, England, South Korea and Japan,” in Y. J. Choi et al eds., Welfare Reform and Social Investment Policy in Europe and East Asia, Bristorl University Press, 2021, pp. 27-60.
・T. Bernauer, "Climate Change Politics," Annual Review of Political Science, vol. 16, 2013, pp. 421-48.

【成績評価の方法と基準】

毎回のゼミでのコメントペーパー、報告、ディスカッションへの貢献から総合的に評価します(絶対評価)。

【受講生に対するメッセージ】

・対面で行いますが、オンラインでも参加可とします。

・2019年度にカナダのトロント大学、イギリスのオックスフォード大学で在外研究を行いました。海外渡航が困難な時代ですが、海外留学をしたい方には積極的に支援を行います。

・将来研究職に就くことを考えている方を歓迎します。学部時代から必要な学術的トレーニングを段階的に積めるよう配慮し、学内外の進学について助言を行います。ゼミの卒業生には海外の大学院に進学した人、大学教員になった人もいます。