2021年度学部ゼミナール


【ゼミの研究分野】

政治学、政治理論、比較政治経済学

【授業科目の概要(目的と到達目標)】

1 概要

・このゼミで扱う分野は、政治学、比較政治経済学、政治理論です。

・具体的には以下のような問いを考えます。グローバル化の進む時代にふさわしい雇用・社会保障・教育・家族政策とはどのような政策か。それはいかなる政治的条件のもとで実現できるのか。先進国のあいだでどのような違いが見いだせるか。なぜ日本では政策転換が遅れているのか。市場の自由と国家による再分配のバランスはどうあるべきか。「格差」はすべての国で広がっているのか。望ましい民主主義の形とはどのようなものか。先進国でポピュリズムや排外主義の動きが強まっているのはなぜか。

・外交・国際関係よりも、グローバル化によって各国の国内政治や政策がいかに変容しているのかを扱います。それらを欧米諸国との比較から、かつ規範的な理論も参照しつつ考察することに主眼が置かれます。

・個別政策の知識を深めるというよりも、日本をはじめとする先進諸国の進むべき方向について、自分なりの大きなビジョンを固め、それを実現するための道筋や戦略を具体的に考えられるようになることが目標です。

・学術的なスキルに関しては、2年間を通じて以下を身に着けることを目指します。(1)専門書の正確な読解、(2)プレゼンテーションとディスカッションの技法、(3)情報収集と情報整理の技法、(4)学術論文の執筆。

【他の授業との関連・教育課程の中での位置づけ】

 政治学の各科目、社会政策などと関連があります。

【授業の内容】

1 進め方

・輪読、プレゼンテーション、ディスカッションが中心です。輪読では、毎回発表者を決め、課題本にかんするレジュメを用意していただきます。それ以外の参加者はコメントペーパーを用意し、司会者が中心となって疑問点、論点を整理し、ディスカッションを行います。

・月1回程度、時事問題に関するディスカッションも行います。

2 年間予定

・3年次春夏学期
 政治学、政治経済学、政治理論の基本書を通じて、幅広く基礎知識を習得することを目指します。教科書、新書から出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。

・3年次秋冬学期
 専門的な学術書と英語論文を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れるとともに、学術世界の最先端の議論に触れ、論文のイメージを作ることです。これらと並行して、グループワークをつうじて現代政治の諸問題について理解を広げ、情報収集と論理の組み立て方を学びます。学期末には卒論の研究テーマを絞り込みます。

・4年次
 春学期は各自の研究テーマに関連する文献報告を主に行います。夏学期から卒論の研究報告を行っていきます。秋冬学期は3年生も出席し、各自の研究についてディスカッションを重ねつつ、学術論文レベルの卒論を仕上げていきます。

【テキスト・文献】

ゼミ参加前に読んでおくことをお勧めするのは以下の本です。

久米ほか『政治学』有斐閣、2011年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年

輪読本は、参加者と相談したうえで決定します。2021年度は以下のような本を輪読しました。

久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすすめ』有斐閣、2013年
田中、近藤、矢内、上川『政治経済学』有斐閣ストゥディア、2020年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年
フランツ『権威主義』白水社、2021年
田中拓道『リベラルとは何か』中公新書、2020年
山本圭『現代民主主義』中公新書、2021年
宮本太郎『貧困・介護・育児の政治』朝日新聞出版、2021年
広瀬巌『平等主義の哲学』勁草書房、2016年
中井寮『欧州の排外主義とナショナリズム』新泉社、2021年
斎藤純一『政治と複数性』岩波現代文庫、2020年
マイケル・サンデル『実力も運のうち 実力主義は正義か?』早川書房
ブランコ・ミラノヴィッチ『大不平等―エレファントカーブが予測する未來』みすず書房、
S. M. Himmelweit and S.-H. Lee, “Work-Family Policy Expansion and the Idea of Social Investment: the case of Germany, England, South Korea and Japan,” in Y. J. Choi et al eds., Welfare Reform and Social Investment Policy in Europe and East Asia, Bristorl University Press, 2021, pp. 27-60.
T. Bernauer, "Climate Change Politics," Annual Review of Political Science, vol. 16, 2013,pp. 421?48.

【授業時間外の学習(求められる予習・復習等)】

輪読文献の読解、コメントペーパーの準備。発表者はレジュメと発表の準備。
毎回日本語文献1冊または英語論文1本を読みます。
グループワークの場合は発表準備。

【成績評価の方法と基準】

毎回のゼミの準備、報告、ディスカッションへの参加による絶対評価。

【受講生に対するメッセージ】

対面で行いますが、オンラインでも参加可とします。
2019年度にカナダのトロント大学、イギリスのオックスフォード大学で在外研究を行いました。海外渡航が困難な時代ですが、海外留学をしたい方には積極的に支援します。
将来研究職に就くことを考えている方も歓迎します。学部時代から必要な学術的トレーニングを段階的に積めるよう配慮し、学内外の進学について助言を行います。ゼミの卒業生には、大学教員になった人のほか、海外の大学院に進学した人も複数います。