2020年度学部ゼミナール


【ゼミの研究分野・領域、研究テーマなど】

政治学、政治理論、比較政治、福祉国家論

【ゼミの概要と目的】

1 概要

・このゼミで扱う分野は、政治学、比較政治経済学、政治理論です。

・具体的には以下のような問いを考えます。グローバル化の進む時代にふさわしい雇用・社会保障・教育・家族政策とはどのような政策か。それはいかなる政治的条件のもとで実現できるのか。先進国のあいだでどのような違いが見いだせるか。なぜ日本では政策転換が遅れているのか。市場の自由と国家による再分配のバランスはどうあるべきか。「格差」はすべての国で広がっているのか。望ましい民主主義の形とはどのようなものか。先進国でポピュリズムや排外主義の動きが強まっているのはなぜか。

・外交・国際関係よりも、グローバル化によって各国の国内政治や政策がいかに変容しているのかを扱います。それらを欧米諸国との比較から、かつ規範的な理論も参照しつつ考察することに主眼が置かれます。

・個別政策の知識を深めるというよりも、日本をはじめとする先進諸国の進むべき方向について、自分なりの大きなビジョンを固め、それを実現するための道筋や戦略を具体的に考えられるようになることが目標です。

【授業の内容】

1 進め方

・輪読、プレゼンテーション、ディスカッションが中心です。輪読では、毎回発表者を決め、課題本にかんするレジュメを用意していただきます。それ以外の参加者はコメントペーパーを用意し、司会者が中心となって疑問点、論点を整理し、ディスカッションを行います。

・月1回程度、時事問題に関するディスカッションも行います。

・英語でのミニ・プレゼンを行うかどうか検討中。参加者の意見を聞いて決めたいと思います。

2 年間予定

・3年春夏学期
政治学・政治経済学・政治理論、日本と欧米諸国の現状について、幅広く基礎知識を習得することを目指します。教科書、新書から出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。夏合宿では、学習のまとめとなるグループワークを行い、希望に応じてフィールドワークを組み合わせます。

・3年秋冬学期
より専門的な著作と英語論文を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れるとともに、学術論文の作成法を身につけることです。秋冬のうちに学外の大学との合同ゼミを検討しています。これらと並行して、複数のグループワークをつうじて現代政治の諸問題について理解を深めます。学期末には卒論の研究テーマを絞り込み、卒論研究計画書を提出していただきます。


【使用するテキストなど】

2020年度の輪読文献は以下のとおり。

※参考文献
田中、近藤、矢内、上川『政治経済学―グローバル化時代の国家と市場』有斐閣ストゥディア、2020年

1 政治学の理論と方法

久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすすめ』有斐閣、2013年
キング、コヘイン、ヴァーバ『社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論』勁草書房、2004年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年

2 先進国の政治の現状

小熊英二『日本社会のしくみ―雇用・教育・福祉の歴史社会学』講談社現代新書、2019年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年

3 トピック別の検討

ハーバーマス『デモクラシーか資本主義か―危機のなかのヨーロッパ』岩波現代文庫、2019年
水島治郎編『ポピュリズムという挑戦―岐路に立つ現代デモクラシー』岩波書店、2020年
アセモグル、ロビンソン『自由の命運―国家、社会、そして狭い回廊(上)(下)』早川書房、2020年

4 英語の学術論文

アメリカ政治の現状
Hacker, Jacob S., and Paul Pierson, 2010, "Winner-Take-All Politics: Public Policy, Political Organization, and the Precipitous Rise of Top Incomes in the United States," Politics & Society, vol. 38, no. 2, pp. 152-204.

ポピュリズムをめぐる研究動向
Hawkins, K., Read, M., Pauwels, T., 2017, "Populism and Its Causes," in Kaltwasser,C. R., Taggart, P., Espejo, P. O., Ostiguy, P. (Eds.), The Oxford Handbook of Populism, Oxford University Press, pp. 267-288.

政治経済学の新展開
Thelen, Kathleen, 2012, "Varieties of Capitalism: Trajectories of Liberalization and the New Politics of Social Solidarity," Annual Review of Political Science, 15, pp. 137-59.

COVID-19対応の比較政治学
M. Kavanagh and R. Singh, 2020, "Democracy, Capacity, and Coercion in Pandemic Response: COVID-19 in Comparative Political Perspective," Journal of Health Politics, Policy and Law, 45(6): 997-1012.


【授業外の準備】

輪読文献の読解、コメントペーパーの準備。発表者はレジュメと発表の準備。
毎回日本語文献1冊または英語論文1本を読みます。

【成績評価】

毎回のゼミの準備、報告、ディスカッションへの参加による絶対評価。

【その他のメッセージ】

2019年度にカナダのトロント大学、イギリスのオックスフォード大学で在外研究を行い、日本の大学教育の強みと弱みについていろいろ考えさせられました。グローバルな教育水準に近づけられるよう努力したいと思います。

過去のゼミ生の卒業論文の一部を以下で公開しています。参考にしていただければと思います。
http://www.soc.hit-u.ac.jp/~takujit/course-of-faculty/dissertation.html