2012年度
学部ゼミナール「政治学」



1 分野

政治学、政治理論、比較政治経済学


2 ゼミナールの概要


(1) 目的


 長引く経済不況と未曾有の少子高齢化に直面する日本では、どのようにして持続可能な社会をつくっていくのかが問われています。特に「政治」をどう機能させるのかが切迫した課題となっています。

 このゼミでは、「労働・社会保障」と「統治構造」という二つの軸を設定し、今日の政治の課題と将来の展望を考えていきたいと思います。その際、担当者の専門と絡めて、(1)欧米諸国の現状を踏まえ、比較の観点から日本の問題点をとらえること、(2)今日の政治理論の動向を踏まえ、規範的・原理的な視座から政治を分析すること、の二点を重視します。

(2) 概要


3年次夏学期

 新書レベルの入門書から出発して、日本の政治、ヨーロッパの政治、現代政治理論の動向を幅広く学習します。毎回報告者を決め、それ以外の参加者は課題文献にたいするコメントを用意し、内容についてディスカッションします。ゼミの利点を生かせるよう、二つの立場に分かれてのディベートなども取り入れたいと思います。

3年次冬学期

 欧米を対象とした政治学、政治経済学の専門的な論文を輪読します。参加者の希望を聞いた上で文献を選びますが、主に英文を扱いたいと思います。その目的は、政治学の新しい理論動向に触れ、それを各自の研究に生かせるようになること、英語での情報収集に慣れ、よりグローバルな視点を持てるようになることです。

 11月には筑波大学との合同ゼミを行い、12月以降は卒業論文に向けた個人研究を行います。以下のテーマ群を参考に、個人の研究テーマを一つ設定して報告していただきます。

    a. 政治理論・公共哲学
       リベラリズム論(公正、新自由主義、国家と市場、リバタリアニズム)
       デモクラシー論(民主主義の過剰、討議民主主義、ラディカル・デモクラシー)
       シティズンシップ、多文化主義
    b. グローバルな諸問題
       南北問題と貧困、開発
       国際環境政治
       グローバル・ガバナンス
       国民国家の変容(EU、地域統合、移民問題)
    c. 帝国と戦争
       アメリカと帝国論
       21世紀の戦争(テロ戦争、資源戦争、文明の衝突論)
    d. 福祉国家の変容
       各国比較
       日本の将来像(年金、医療、若者への対策)
       新しい取り組み(ベーシックインカム、ワークフェア、家族政策、教育改革)
    e. 新しい政治の担い手
       フェミニズム
       NGO、第三セクター
       地方分権(二元代表制、道州制)
    f. 情報化と政治の変容
       メディア政治
       情報戦
       監視社会
    g. 日本の政治
       統治構造の変容(政官関係、行財政改革)
       政界再編(55年体制の崩壊、自民党の変質、新しい対立軸、改憲論)
       外交政策(日米安保再定義、アジア安全保障、ODA、国連中心主義)
    h. 地域政治
       欧米の現代政治、政治史
       発展途上国の政治

4年次夏学期

 各自の研究テーマを踏まえ、日本語もしくは英語の専門書を輪読します。適時3年生との合同ゼミを行い、時事的なテーマに関するディスカッションも取り入れます。

4年次冬学期

 卒論の研究報告と個人指導(チュートリアル)をくり返すことで、卒業論文を仕上げていきます。


3 使用するテキスト

 下記の文献を候補として考えていますが、詳細は開講時にリストを提示し、受講者と相談のうえで決定します。

イントロダクション

上野千鶴子、古市憲寿『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』光文社新書、2011年

フレームワーク

新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書、2007年
吉田徹『二大政党制批判論』光文社新書、2009年

日本と欧米の政治

宮本太郎『福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー』有斐閣、2008年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2008年
田村哲樹ほか編『模索する政治』ナカニシヤ出版、2011年
押村高、中山俊宏編『世界政治を読み解く』ミネルヴァ書房、2011年
エスピン=アンデルセン『平等と効率の福祉革命』岩波書店、2011年

政治原理の探求

宇野重規、田村哲樹、山崎望『デモクラシーの擁護―再帰化する現代社会で』ナカニシヤ出版、2011年
ジョン・ロールズ『万民の法』岩波書店、2006年

欧米の学術論文

World Politics, Comparative Politics, Comparative Political Studies, American Journal of Political Science,
Political Theoryなどの学術雑誌、Oxford Handbookシリーズなどの教科書から、参加者の関心に合う論文
をピックアップします。


4 選考の方法

 志望理由書と面談によります。志望理由書は、これまで考えてきたことや読んだ本を踏まえ、ゼミで研究したいことをA4一枚程度にまとめて、面談前日までに教員のメールアドレスにお送りください。面談は人数にかかわらず、教員と4年ゼミ生代表によって行う予定です。


5 ゼミの方針

 政治とは〈多様な価値を持つ人びとの共存の営み〉です。このゼミもできるだけ多様な価値観を持つ学生が自由に議論できる場にしたいと思っています。文献の選択からゼミの進め方まで、参加者の意見をできるかぎり尊重し、自治を原則としてゼミを運営するつもりです。