映画で学ぶ歴史と現代
※歴史と現代社会を知るうえで特に有益なお勧めの名画を挙げます。
T 歴史編
@日本
●今村昌平監督『楢山節考』1983年
貧しい村の姥捨てをとおして農村社会の一面をえぐる。
●黒澤明監督『七人の侍』1954年
農民に雇われた素浪人の活躍をとおして武士と農民の関係を描く名作。
●黒澤明監督『椿三十郎』1962年
ある藩のお家騒動に巻き込まれた野武士。独立独歩の人間像を示し、日本社会を批評。
●小林正樹監督『切腹』1962年
ある武士の切腹要求を題材に武家社会の虚飾をアイロニカルに描く。
●小林正樹監督『人間の条件』全6部、1959-61年
●山本薩夫監督『戦争と人間』全3部、1970-73年
●市川崑監督『野火』1959年
フィリピンに残された敗残兵たちの人肉食。極限状況に直面した人間の姿を描く。
●高畑勲監督『火垂るの墓』1988年
戦時下で両親をなくした幼い兄妹を待ち受ける運命。戦争の悲惨を描く。
●鈴木清順監督『肉体の門』1964年
敗戦直後の日本で逞しく生きる娼婦たち。
●小津安二郎監督『麥秋』1951年
●小津安二郎監督『東京物語』1953年
小津作品は戦後日本の家族の姿を丹念に描き、失われた何かを感じさせる。
●成瀬巳喜男監督『浮雲』1955年
戦中戦後のある男女関係から人間の業を描ききった名作。
Aアジア
●『三国志Three Kingdoms』2010年
「三国志演義」をもとに中国で制作された壮大な大河ドラマ。全95話。前半の歴史描写は参考になる。
●サタジット・レイ監督『大地のうた』1955年
●サタジット・レイ監督『大河のうた』1956年
●サタジット・レイ監督『大樹のうた』1958年
インドで生きる一人の少年の生涯を描いた大河映画。
●シェ・チン監督『阿片戦争』1997年
19世紀前半の阿片戦争を再現。当時の時代状況がよく分かる。
●周寰、張健民監督『ラストエンペラー』1987年
●ウー・ヅーニィウ監督『南京1937』1995年
●チアン・ウェン監督『鬼が来た!』2000年
日本占領下の中国民衆を描いた作品。簡単に善悪を分けない人間描写は見事。
●チャン・イーモウ監督『紅いコーリャン』1987年
●侯孝賢監督『悲情城市』1989年
日本統治からの解放、共産党との対抗、国民党政府の確立までを壮大に描く。
●デヴィッド・リーン監督『アラビアのロレンス』1962年
オスマン帝国からのアラブ独立運動をイギリス人将校を主人公に描く大作。
Bヨーロッパ
●ウィリアム・ワイラー監督『ベン・ハー』1959年
古代ローマ帝国支配下のユダヤ人将校の半生。
●スタンリー・キューブリック監督『スパルタカス』1960年
古代ローマ帝国の奴隷スパルタクスの反乱と闘争を壮大なスケールで描く。
●HBO、BBC共同制作『ROMA(ローマ)』2005-2007年
古代ローマの共和政から帝政への移行期を見事に再現した歴史ドラマ。全22話。
●メル・ギブソン監督『パッション』2004年
イエス・キリストが拷問を受け、処刑されるまでの12時間。肉体的苦痛を再現。
●アレハンドロ・アメナーバル監督『アレクサンドリア』2011年
ローマ帝国末期のアレクサンドリア図書館。宗教と学問の葛藤を一人の女性哲学者に託して描く。
●リドリー・スコット監督『キングダム・オブ・ヘブン』2005年
12世紀の十字軍の時代、貧しい農村からエルサレムを守る騎士になった男の物語。宗教戦争の無意味さを見事に描く。
●ジャン・ジャック・アノー監督『薔薇の名前』1986年
14世紀イタリアの修道院を舞台に展開される殺人事件。ヨーロッパ中世の雰囲気を忠実に再現。
●リュック・ベッソン監督『ジャンヌ・ダルク』1999年
15世紀の100年戦争でフランスを救った少女の人生を新解釈。
●フレッド・ジンネマン監督『わが命つきるとも』1966年
16世紀初頭イングランドでの法廷闘争を扱った名作。
●シェカール・カプール監督『エリザベス』1998年
宗教戦争ただ中の陰謀渦巻く16世紀イングランドでエリザベスが女王に就任するまで。
●ケン・ヒューズ監督『クロムウェル』1970年
17世紀イングランドのピューリタン革命。国王処刑からクロムウェル独裁に至る歴史に忠実に再現。
●ローランド・ジョフィ監督『ミッション』1986年
18世紀南米でのある神父の布教活動。
●ミロス・フォアマン監督『アマデウス』1984年
18世紀末ウィーンに現れた天才モーツァルトとライバルのサリエリとの確執。
●アンジェイ・ワイダ監督『ダントン』1982年
フランス革命の英雄ダントンの短い生涯、ロベスピエールとの対決。
●クロード・オータン・ララ監督『赤と黒』1954年
激動の19世紀前半のフランス社会、野心に燃えた青年の半生。スタンダール原作。
●ビレ・アウグスト監督『レ・ミゼラブル』1997年
19世紀初頭パリの下層で真摯に生きる人々の物語。ユゴー原作。
●トム・フーパー監督『レ・ミゼラブル』2012年
ミュージカルを元にした映画。ジャン・バルジャンの生涯をとおして、罪、正義、赦しとは何かを問う。
●ラウル・ペック監督『マルクス エンゲルス』2017年
若きマルクスがエンゲルスと出会い、ともに『共産党宣言』を執筆するまで。時代背景がよく分かる。
●ヘンリー・カス監督『魔の山』1981年
●ルキノ・ヴィスコンティ監督『山猫』1963年
19世紀半ばのシチリアで没落しつつある貴族の一家を描いた名作。戦後イタリア映画の黄金時代を代表。
●クロード・ベリ監督『ジェルミナル』1993年
19世紀末フランスの炭鉱での労働運動を生き生きと描く。エミール・ゾラ原作。
●リュイス・マイルストン監督『西部戦線異状なし』1930年
第一次大戦をとおして戦争の無意味さを描く名作。
●スティーヴン・スピルバーグ監督『プライベート・ライアン』1998年
ノルマンディー上陸作戦の過酷な戦場を再現。スピルバーグの異色作品。
●マルガレーテ・フォン・トロッタ監督『ローザ・ルクセンブルク』1985年
20世紀初頭のドイツ、不屈の女性革命家が恋や友情に引き裂かれつつ、革命に殉じる。
●ジャン・ルノワール監督『大いなる幻影』1937年
●サム・ウッド監督『誰が為に鐘は鳴る』1943年
●ジャン=ジャック・アノー監督『スターリングラード』2001年
第二次世界大戦でのスターリングラード攻防戦。スナイパー同士の戦いと戦争の虚しさ。
●ルネ・クレマン監督『パリは燃えているか』1966年
フランスのレジスタンス運動を描いた名匠クレマンの作品。
●フォルカー・シュレンドルフ監督『ブリキの太鼓』1979年
ナチス政権下のポーランド社会を子どもの視点で描く。ノーベル賞作家ギュンター・グラス原作。
●ロマン・ポランスキー監督『戦場のピアニスト』2002年
自身も強制収容所を経験した名匠が、戦時中のユダヤ人の経験をリアルに映画化。
●ロベルト・ベニーニ監督『ライフ・イズ・ビューティフル』1997年
ユダヤ人収容所に送られた親子の運命。喜劇と悲劇の見事な交錯。
●オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督『ヒトラー―最期の12日間』2008年
自死間際のヒトラーの人間性を描いた話題作。
●クロード・ランズマン監督『ショア』全4巻、1985年
強制収容所におけるユダヤ人虐殺を、生存者のインタビューによって克明に描いた衝撃の映画。
●ベルナルド・ベルトルッチ監督『暗殺の森』1970年
●ヴィットリオ・デ・シーカ監督『自転車泥棒』1948年
戦後イタリアの貧困の中で明るく生きる親子のつまずき。
●フェデリコ・フェリーニ監督『道』1954年
無垢な大道芸人の少女の流浪。戦後イタリア社会の明るさと暗さを描いた名作。
●ヴィットリオ・デ・シーカ監督『ひまわり』1970年
戦争によって引き裂かれたイタリアの恋人の運命を美しい音楽とともに描く。
●スルジャン・ドラゴエヴィッチ監督『ボスニア』1996年
ボスニア内戦によって引き裂かれた友人関係。
Cアメリカ
●ティーヴ・マックイーン監督『それでも夜は明ける』2014年
19世紀半ばのアメリカ、北部の自由人から南部の奴隷へと転落した黒人の恐怖の12年間。
●ケヴィン・コスナー監督『ダンス・ウィズ・ウルヴス』1990年
南北戦争時代のインディアンの世界を情感豊かに描く大作。
●エドワード・ズウィック監督『グローリー』1989年
南北戦争で自由を求めて戦った史上初の黒人部隊を描く感動作。
●スティーブン・スピルバーグ監督『リンカーン』2012年
南北戦争のさなか奴隷制廃止に奔走し、銃弾に倒れるまで。リンカーンの実像を描く。
●チャールズ・チャップリン監督『モダン・タイムス』1936年
歯車のように働く労働者の姿から、人間性を見失った現代社会を風刺。
●ローランド・エメリッヒ監督『ミッドウェイ』2019年
太平洋戦争の戦況を変えたミッドウェイ海戦。アメリカの視点から史実に基づいて再現。
●クリント・イーストウッド『父親たちの星条旗』2007年
硫黄島での戦闘とアメリカ社会のプロパガンダ。日本兵の視点から見た『硫黄島からの手紙』と併せて観たい。
●スパイク・リー監督『マルコムX』1992年
黒人解放活動家マルコムXの生涯をデンゼル・ワシントンが熱演。
●エイヴァ・デュヴァーネイ監督『グローリー―明日への行進』2015年
公民権運動の転機となった1965年の事件をキング牧師を中心に描く。アフリカ系アメリカ人差別の根の深さが分かる。
●スタンリー・クレイマー監督『招かれざる客』1967年
60年代アメリカの黒人差別をめぐって、若いカップルと家族の抱える葛藤を描いた名作。
●ロジャー・ドナルドソン監督『13デイズ』2000年
キューバ危機の緊迫の13日間。
●オリバー・ストーン監督『JFK』1991年
ケネディ暗殺への一解釈。賛否両論を巻き起こす。
●オリバー・ストーン監督『プラトーン』1986年
ベトナム戦争を描いた傑作。
●フランシス・フォード・コッポラ監督『地獄の黙示録』1979年
ベトナム戦争の狂気を見事に描いた名作。
●バリー・レビンソン監督『グッドモーニング・ベトナム』1987年
ロビン・ウィリアムズがアメリカ軍のDJを好演。軍の腐敗と戦争の冷酷さを描く。
●オリバー・ストーン監督『7月4日に生まれて』1989年
ベトナム戦争で半身不随となった帰還兵をトム・クルーズが好演。
●ブライアン・デ・パルマ監督『カジュアリティーズ』1989年
ベトナム戦争での自軍の犯罪を告発しようとする一人の青年。組織対個人の極限状況を描く。
Dロシア
●セルゲイ・ボンダルチュク監督『戦争と平和』1965年
トルストイの大作を完全映画化。19世紀初頭のロシア社会を壮大に活写。
●パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ監督『復活』2001年
帝政末期のロシア社会。ある男女の悲恋をつうじて人間の真実が描かれる。トルストイ原作。
●イケル・ホフマン監督『終着駅 トルストイ最後の旅』2009年
高潔な思想と家族との間で引き裂かれるトルストイの晩年。観る立場によって解釈が分かれる好作品。
●セルゲイ・エイゼンシュテイン監督『戦艦ポチョムキン』1925年
ロシアの戦艦内で起きた兵士の反乱を扱った古典的な名作。
●デイヴィット・リーン監督『ドクトル・ジバゴ』1965年
ロシア革命〜粛清の嵐の時代を生きたロシア人医師。
●ウォーレン・ベイティ監督『レッズ』1981年
一人のアメリカ人記者の目から見たロシア革命を壮大なスケールで描く。
E全般
●NHK『映像の二〇世紀』シリーズ(全11巻)
1 20世紀の幕開け 2 大量殺戮の完成 3 それはマンハッタンから始まった 4 ヒトラーの野望 5 世界は地獄を見た 6 独立の旗の下に 7 勝者の世界分割 8 恐怖の中の平和 9 ベトナムの衝撃 10 民族の悲劇果てしなく 11 JAPAN 世界が見た明治・大正・昭和
●BBC『市民の世紀』シリーズ(全13巻)
1 市民意識の高まり、第1次世界大戦 2 革命の赤い旗、ベルサイユ体制
3 フォード方式、トーキー誕生 4 高まるスポーツ熱、大恐慌 5 ホロコースト、第2次世界大戦 6 冷戦の厚い壁、ヨーロッパの復興 7 成長するアジア、医学の進歩 8 テレビの力、苦悩の独立運動 9 中国人民の解放、ゲリラ戦の勝利 10 人種差別との闘い、反抗する若者 11 ウーマン・リブ、神々の反撃 12 広がる核の脅威、蝕まれる地球 13 崩壊する東西の壁、進むグローバル化
U 現代編
@日本
●内田吐夢監督『飢餓海峡』1965年
●黒澤明監督『悪い奴ほどよく眠る』1960年
土地公団会社の汚職をめぐる人々の生き様。
●今井正監督 『キクとイサム』1959年
東北の田舎村、黒人と日本人の混血少女が差別をはねのけて人生を切り開いていく。
●浦山桐郎監督『キューポラのある街』1962年
小さな工場町で、経済成長の波に翻弄されながら生きる人々。吉永小百合の出世作。
●山本薩夫監督『真空地帯』1952年
●森谷司郎『小説吉田学校』1983年
戦後日本政治を吉田茂を中心に描く。登場人物が豪華。
●大島渚監督『愛と希望の街』1959年
●大島渚監督『日本の夜と霧』1960年
●若松孝二監督『実録・連合赤軍―あさま山荘への道程』2008年
連合赤軍内の内ゲバとリンチを執拗に描写。
●山本薩夫監督『白い巨塔』1966年
大学医学部のどす黒い権力闘争。
●伊丹十三監督『マルサの女』1987年
脱税に挑む女性調査官の活躍。
●井筒和幸監督『パッチギ!』2005年
在日の青年たちの生活をスピーディに描く痛快作。
●森達也監督『A』1998年
オウム真理教信者、周囲の住民、マスメディアの関係を鋭く切り取る。メディアの見方が変わる。
●周防正行監督『それでもボクはやってない』2006年
痴漢冤罪事件を題材にして日本の司法の異常さを告発。
●想田和弘監督『選挙』2005年
日本の選挙の馬鹿馬鹿しさ、物悲しさを思い知らされるドキュメンタリー。
●大島新監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』2020年
与党議員のしたたかさと対照的なある野党議員の17年間を追い、日本政治の実情を喜劇的に描く。
Aアジア・中東
●リチャード・アッテンボロー監督『ガンジー』1982年
非暴力平和主義の父の生涯。インド独立に向けた苦難を描く感動作。
●チェン・カイコー監督『さらば、わが愛―覇王別姫』1993年
戦争、共産主義革命、文化大革命に翻弄される人々を、中国の伝統芸能京劇の運命と重ねて描く。
●ジョアン・チェン監督『シュウシュウの季節』1998年
文化大革命によって農村に送られた少女の転落と残酷な結末。
●イム・グォンテク監督『太白山脈』1994年
植民地からの解放、南北戦争に翻弄される人々の姿を描いた大河小説を韓国の名匠が映画化。
●チェン・カイコー監督『北京ヴァイオリン』2002年
●キム・ジフン監督『光州 (こうしゅう) 5・18』2008年
1980年韓国で起きた光州事件を再現。
●ファブリツィオ・コスタ監督『マザー・テレサ』2003年
最も貧しい人々に寄り添うことを選び、人生を捧げた女性の生き様を見事に描く。
●モフセン・マフマルバフ監督『カンダハール』2001年
タリバン政権下のアフガニスタンの社会をリアルに描く。
●ローランド・ジョフィ監督『キリング・フィールド』1984年
ポル・ポト統治下のカンボジアに潜入したイギリス人ジャーナリストの恐怖。
●キム・テギュン監督『クロッシング』2008年
北朝鮮の地獄絵図を克明に描く。どこにも救いがない。
●広河隆一監督『パレスチナ1948 NAKBA』2002年
イスラエルのパレスチナ入植によって消滅した村の記憶を半世紀にわたって辿る執念のドキュメンタリー。
●ペール・フライ監督『バクダッド・スキャンダル』2018年
フセイン政権崩壊期のイラク。国連が底なしの腐敗に絡み取られていく。実話に基づく映画。
Bヨーロッパ
●フランソワ・トリュフォー監督『大人は分かってくれない』1959年
50年代の重苦しいフランス社会からドロップアウトする少年。後の68年5月革命を暗示。
●ケン・ローチ監督『マイ・ネーム・イズ・ジョー』1988年
アルコール中毒から立ち直ろうとする一人の中年男性。イギリス社会の一端をえぐる。
●リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督『ロゼッタ』1999年
最底辺の環境で懸命に生き抜くベルギーのある少女の姿。1999年カンヌ映画祭パルムドール受賞。
●ヴィム・ヴェンダース監督『ベルリン・天使の詩』1987年
東西分断時のベルリンを天使の眼を通して静かに、美しく描く。
●ヴォルフガング・ベッカー監督『グッバイ、レーニン!』2003年
東ドイツ崩壊による人生と社会の断絶を、ある家族に託して喜劇的に描く。
●マーク・ハーマン監督『ブラス!』1996年
産業の転換期、崩れゆくイギリス炭鉱町。音楽を拠り所に生きる人びとの悲しみと喜び。
●マチュー・カソヴィッツ監督『憎しみ』1995年
パリ郊外に住む移民二世・三世の殺伐とした日常生活を描く。2005年の移民暴動を暗示。
●フィリダ・ロイド監督『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』2011年
老境に入り認知症の世界に生きるサッチャーが過去を回顧。人間の強さと弱さのコントラスト。
●ケン・ローチ『私はダニエル・ブレイク』2016年
社会保障の民営化が進むイギリスで、人々がどのように尊厳を奪われていくかを描写。深く考えさせられる。
Cアメリカ・中南米
●マルガレーテ・フォン・トロッタ監督『ハンナ・アーレント』2012年
1961年アイヒマン裁判を傍聴し、「悪の凡庸さ」というテーマと取り組んだ哲学者アレント。亡命知識人の生活、稀代の哲学者とユダヤ人社会の葛藤を描く。
●マーティン・スコセッシ監督『タクシー・ドライバー』1976年
元海兵隊員の見た1970年代アメリカ社会の腐敗と弛緩。音楽と映像がすばらしい。
●ケン・ローチ監督『ブレッド&ローズ』2000年
アメリカの移民労働者が労働組合結成を目指して連帯する。その苦難と厳しい結末。
●リー・ダニエルズ監督『プレシャス』2009年
1980年代後半、ニューヨークのハーレムに住む黒人少女が直面する貧困、虐待、暴力。
●マイケル・ムーア監督『ロジャー&ミー』1989年
GM工場の閉鎖に反対する住民の運動を撮ったドキュメンタリー。この頃のムーアは身軽でよい。
●マイケル・ムーア監督『ボウリング・フォー・コロンバイン』2002年
銃社会アメリカを描いたドキュメンタリー。
●マイケル・ムーア監督『華氏911』2004年
9.11後のアメリカ社会を風刺。ムーア作品はドキュメンタリーからプロパガンダへ。
●ジョエル・シュマッカー監督『評決のとき』1996年
●シドニー・ポラック監督『ザ・ファーム』1993年
●マイケル・マン監督『インサイダー』1999年
巨大たばこ会社の情報隠蔽を題材に、ジャーナリズムのあり方、個人の生き様を鋭く問う。実話に基づく。
●エドワード・ズウィック監督『戦火の勇気』1996年
湾岸戦争での事件を隠蔽しようとする軍、何重もの偽証の背後に隠された真実。アメリカ版「羅生門」。
●ラース・フォン・トリアー監督『ダンサー・イン・ザ・ダーク』2000年
移民の母子家族が直面する過酷な現実。人生のなかで歌の持つ意味を劇的に示す。
●マーク・アクバー, ピーター・ウィントニック監督『マニュファクチャリング・コンセント』2007年
チョムスキーの政治的発言とインタビュー。明晰な批判的知性に触れることは刺激的。
●ロブ・ライナー監督『記者たち 衝撃と畏怖の真実』2018年
9.11後の愛国主義の高まりに乗じて、アメリカ政府がどのようにメディアを操作し、イラク戦争に向かったか。
●クリント・イーストウッド監督『グラン・トリノ』2008年
年老いたアメリカ人と移民の少年との交流から、アメリカ社会の「今」を描く。
●フェルナンド・メイレレス監督『シティ・オブ・ゴッド』2002年
ブラジルのスラム街で生きる少年ギャングの実態を鮮烈に描く。
●スティーブン・ソダーバーグ監督『トラフィック』2000年
メキシコからアメリカへの麻薬密輸をめぐるエピソードをスピーディに描く。
●ジョン・ウェルズ監督『カンパニー・メン』2011年
突然一流企業から解雇された人たちの物語。職を失うとはどういうことかが分かる。
Dアフリカ
●リチャード・アッテンボロー監督『遠い夜明け』1987年
アパルトヘイト下の南アフリカで差別を告発しようとする人々の絶望的な戦い。
●ジッロ・ポンテコルヴォ監督『アルジェの戦い』1966年
フランスからの独立を目指すアルジェリア人の闘争を迫真のタッチで描く。
●ラデュ・ミヘイレアニュ監督『約束の旅路』2008年
スーダンの難民キャンプからイスラエルに脱出した子どもの運命。最後の叫びが心を揺さぶる。
●テリー・ジョージ監督『ホテル・ルワンダ』2004年
ルワンダの虐殺を描いた作品。息詰まるような恐怖が作品を覆う。
●ケヴィン・マクドナルド監督『ラストキング・オブ・スコットランド』2006年
1970年初頭のウガンダでアミンが独裁者となる過程を映画化。恐怖による支配がよく分かる。
●エドワード・ズウィック監督『ブラッド・ダイヤモンド』2006年
シエラレオネ共和国での内戦とダイヤモンドとの関係。