文 献 案 内




※社会科学(とりわけ政治学)を自習するうえで、有益だと思われる本をご紹介します。

T 入門編

学問をはじめるために

社会科学の基礎を学ぶための50冊

政治学をはじめるために


U 中級編

学問の方法

現代社会について考える

民主主義について考える

自由主義について考える

現代の政治理論を知る

現代の政治経済の仕組みを知る

グローバル化とは何か

ナショナリズムとは何か

社会運動の理論

日本政治を分析する

ヨーロッパの政治を分析する

ヨーロッパの政治思想史を学ぶ 

ヨーロッパの歴史を学ぶ


V 上級編

大学院で政治学を研究するために




学問をはじめるために


1 学問論・読書論

●苅谷剛彦『知的複眼思考法』講談社アルファ文庫、2002年
 大学での勉強法の入門書として高い評価を得ている。

●浅羽通明『大学で何を学ぶか』幻冬舎文庫、1999年
 大学のお寒い現状、学生が自分で「学ぶ」ことの意味を提案。

●広島大学101冊の本委員会『大学新入生に薦める101冊の本』岩波書店、2009年
 類書の中で最も良い。せめて大学時代に100冊くらいは読みたい。

●筒井清忠『日本型「教養」の運命―歴史社会学的考察』岩波書店、1995年
 なぜ「教養」が没落したかを歴史的に分析。面白い。

●エドワード・サイード『知識人とは何か』平凡社ライブラリー、1998年
 学問とは職業的研究者のためにあるものではない。知識と社会の関係を考えるために。

●ポパー『果てしなき探求―知的自伝』全2巻、岩波現代文庫、2004年
 知の成長とは何か。二〇世紀を代表する科学哲学者による平易で感動的な自伝。

●ミル『ミル自伝』岩波文庫、1960年
 十九世紀を代表する知識人の若き日の学問・文化・政治。かつての教養人の凄さが分かる。

●内田義彦『読書と社会科学』岩波新書、1985年
 「精読」するとはどういうことか。ゼミに出る前に一度は読んでほしい。

●ウェーバー『職業としての学問』岩波文庫、1980年
 学問を通じた人格の陶冶。古典的な学問論を知るために。

●福沢諭吉『学問のすすめ』岩波文庫、1978年
●福沢諭吉『福翁自伝』岩波文庫、1978年
 「近代」への転換点にあってヨーロッパの知を導入した先駆者の苦闘と偉大さ。

●森有正『思索と経験をめぐって』講談社学術文庫、1976年
 本を読むこと、物を考えること、経験を積むことの意味を問い詰める。

●林竹二『田中正造の生涯』講談社現代新書、1976年
 田中正造研究を通じて、「学ぶ」ことの意味を追求。

●ホッファー『エリック・ホッファー自伝』作品社、2002年
 肉体労働者として働きながら、思索と執筆の日々を送った市井の哲学者。人は学校に行かなくても学ぶことができる。

●立花隆『僕はこんな本を読んできた』文春文庫、1999年
 読書の仕方、情報収集の仕方を学べる。

●立花隆編『二十歳の頃1、2』新潮文庫、2002年
 東大立花ゼミ生が有名人の二十歳の頃をインタビュー。自分で調べることの面白さが分かる。

●上野千鶴子『情報生産者になる』ちくま新書、2018年
 東大上野ゼミで教えていたノウハウ。基本的なことが書いてある。姉妹編『情報生産者になってみた』(2021年)も面白い。

●吉見俊哉『大学とは何か』岩波新書、2011年
 大学の歴史がコンパクトにまとめられている。

2 レポートの書き方

●小笠原喜康『新版 大学生のためのレポート・論文術』講談社現代新書、2009年
 コンパクトで分かりやすい入門書。お勧め。

●戸田山和久『新版 論文の教室―レポートから卒論まで』NHKブックス、2012年
 論文の考え方、書き方を懇切丁寧に教えてくれる。お勧め。

●川崎剛『社会科学系のための「優秀論文」作成術―プロの学術論文から卒論まで』勁草書房、2010年
 学術論文の書き方、考え方を明快に提示。卒論レベルから使える。

●ウンベルト・エーコ『論文作法』而立書房、1991年
 高度な内容の論文用入門書。研究者を目指す人なら読んでおきたい。

●澤田昭夫『論文の書き方』講談社学術文庫、1977年
 やや古いが、基本的な手続きを明快に示す良書。

●澤田昭夫『論文のレトリック―わかりやすいまとめ方』講談社学術文庫、1983年
 前著より詳しく論文の書き方・考え方を説明。

●本田勝一『[新版]日本語の作文技術』朝日文庫
 実践的な日本語鍛錬のテクストとして最も有用。

●共同通信編『記者ハンドブック 新聞用字用語集』共同通信社(毎年改訂)
 漢字・送り仮名・ひらがなの書き方など基礎ルールを知るううで必携。


社会科学の基礎を学ぶための50冊

1 基礎教養

(1)佐々木毅『政治学の名著30』ちくま新書、2007年

(2)松原隆一郎『経済学の名著30』ちくま新書、2009年

(3)竹内洋『社会学の名著30』ちくま新書、2008年

2 社会科学入門

(4)浅羽通明『大学で何を学ぶか』幻冬舎文庫、1999年

(5)内田義彦『読書と社会科学』岩波新書、1985年

(6)大塚久雄『社会科学の方法』岩波新書、1966年

(7)大塚久雄『社会科学における人間』岩波新書、1977年

(8)ウェーバー『職業としての学問』岩波文庫、1980年

(9)ミル『ミル自伝』岩波文庫、1960年

(10)見田宗介『現代社会の理論』岩波新書、1996年

(11)福田歓一『近代民主主義とその展望』岩波新書、1977年

(12)間宮陽介『市場社会の思想史』中公新書、1999年

(13)マクファーソン『自由民主主義は生き残れるか』岩波新書、1979年

(14)丸山真男『日本の思想』岩波新書、1961年

(15)桜井哲夫『「近代」の意味―制度としての学校・工場』NHK出版、1984年

(16)高坂正顕『国際政治』岩波新書、1966年

(17)オーウェル『1984年』ハヤカワ文庫、1972年

(18)柄谷行人『世界共和国へ』岩波新書、2006年

(19)猪木武徳『戦後世界経済史』中公新書、2009年

(20)三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』岩波新書、2017年

(21)宇野重規『デモクラシーとは何か』講談社現代新書、2020年

3 現代の政治社会

(22)石川真澄、山口二郎『戦後政治史(第3版)』岩波新書、2010年

(23)佐高信『現代を読む―100冊のノン フィクション』岩波書店、1992年

(24)古矢旬『アメリカ 過去と現在の間』岩波新書、2004年

(25)上野千鶴子、小倉千加子『ザ・フェミニズム』ちくま文庫、2005年

(26)ジョゼフ・スティグリッツ『スティグリッツ教授のグローバリゼーション講義』光文社新書、2004年

(27)ポール・クルーグマン『経済政策を売り歩く人々』ちくま学芸文庫、2009年

(28)宮本太郎『福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー』有斐閣、2008年

(29)飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書、2007年

(30)NHKスペシャル取材班『福島第一原発事故―7つの謎』講談社現代新書、2015年

(31)増田寛也編『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』中公新書、2014年

(32)瀧澤弘和『現代経済学―ゲーム理論・行動経済学・制度論』中公新書、2018年

4 現代社会科学の基本書(専門書)

(33)ギデンズ『近代とはいかなる時代か?』而立書房、1993年

(34)ハーバーマス『公共性の構造転換(第2版)』未来社、1994年

(35)丸山真男『現代政治の思想と行動』未来社、1964年

(36)ウォーラーステイン『新版 史的システムとしての資本主義』岩波書店、1997年

(37)ネグリ、ハート『帝国』以文社、2003年

(38)エスピン・アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界―比較福祉国家論の理論と動態』ミネルヴァ書房、2001年

(39)ホブズボーム『20世紀の歴史―極端な時代』全2巻、三省堂、1996年

(40)ピケティ『21世紀の資本』みすず書房

5 社会科学の古典
※以下の本は福田歓一『政治学史』東京大学出版会などの教科書を参照しながら読む。

(41)プラトン『国家』全2巻、岩波文庫、1979年

(42)『新約聖書』(出版社は問わない)

(43)ホッブズ「リヴァイアサン」『世界の名著23 ホッブズ』中央公論社、1987年

(44)ロック『統治二論』岩波文庫、2010年

(45)ルソー「社会契約論」『社会契約論/ジュネーヴ草稿』光文社古典新訳文庫、2008年

(46)ヘーゲル「法哲学」『世界の名著35 ヘーゲル』中央公論社、1967年

(47)トクヴィル『アメリカのデモクラシー 第2巻(上下)』岩波文庫、2008年

(48)ミル『自由論』岩波文庫、1971年

(49)マルクス、エンゲルス『共産党宣言』岩波文庫、1971年

(50)ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫、1989年



政治学をはじめるために

1 政治学の入門書

●久米郁男、川出良枝、古城佳子、 田中愛治『政治学(補訂版)』有斐閣、2011年
 もっともおすすめの本。政治学の入門はここから入る。

●伊藤光利編『ポリティカル・サイエンス事始め(第3版)』有斐閣、2009年

2 新書を読む

●見田宗介『現代社会の理論』岩波新書、1996年
 最も包括的な現代社会の理解の一つ。

●石川真澄、山口二郎『戦後政治史 第4版』岩波新書、2021年
 豊富なデータを圧縮した分かりやすい通史。

●清水真人『平成デモクラシー史』ちくま新書、2018年
 平成以降はこの本で補う。

●高坂正尭『国際政治―恐怖と希望』中公新書、1966年
 国際政治の第一人者による古典。

●坂本義和『相対化の時代』岩波新書、1997年
 戦後の国際政治学を代表する著者の総まとめに相当。

●藤原帰一『デモクラシーの帝国』岩波新書、2002年
 現代アメリカを「帝国」と位置づけて賛否両論を巻き起こす。

●船橋洋一『同盟を考える』岩波新書、1998年
 現代日本を代表するジャーナリストによる日米同盟論。

●古矢旬『アメリカ 過去と現在の間』岩波新書、2004年
 アメリカ政治を歴史的に理解するための決定版。

●佐高信『現代を読む 一○○冊のノン フィクション』岩波書店、1992年
 現代の社会問題を知るための貴重な案内書。

●末近浩太『中東政治入門』ちくま新書、2020年
 複雑な中東の政治をデータと比較を使って分析。

●最上敏樹『人道的介入』岩波新書、2001年
  「理想主義者」と言われてきた筆者が現代政治の問題と正面から取り組む。

●鶴見俊輔『戦時期日本の精神史―1931‐1945年』岩波現代文庫
 戦時期の「転向」研究を主導した著者による文句なしの名著。

●日高六郎『戦後思想を考える』岩波新書、1980年
 戦後デモクラシーとは何であったのか。重い回顧。

●熊沢誠『能力主義と企業社会』岩波新書、1997年
  「日本型経営」の変容を批判的に活写した最良の入門書。

●柄谷行人『世界共和国へ』岩波新書、2006年
 評論家による将来世界への展望。構想力のスケールの大きさを学ぶべき。

●飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議員内閣制へ』中公新書、2007年
 日本の議院内閣制を分析した書として評価が高い。

●大泉啓一郎『老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき』中公新書、2007年
 日本につづいて高齢化に直面する中国とアジア諸国。アジアの見方が変わる。
 同じ著者による『消費するアジア』(中公新書、2011年)もお薦め。

●長谷部恭男、杉田敦『これが憲法だ!』朝日新書、2006年
 対談形式で憲法をめぐる論点のエッセンスを切れ味よく紹介。

●日本再建イニシアティブ編『民主党政権 失敗の検証』中公新書、2013年
 民主党政権の無残な失敗を検証。政治学の実験として学ぶところが多い。

●アジア・パシフィック・イニシアティブ『検証 安倍政権』文春新書、2022年
 2012年から2020年までの長期政権を項目ごとに検証。

●盛山和夫『経済成長は不可能なのか―少子化と財政難を克服する条件』中公新書、2011年
 社会学者による提言。賛否両論あるが、現代日本の問題を総合的に提示。

●森政稔『変貌する民主主義』ちくま新書、2008年
 過去30年間のデモクラシー論を政治理論の観点から整理。

●小熊英二『日本社会のしくみ』講談社現代新書、2019年
 「日本型雇用」の成立と変容。現代の部分だけでも読むと参考になる。

3 教科書

※各専門分野の教科書は、有斐閣のアルマとストゥディアがスタンダード。

●蒲島郁夫ほか『メディアと政治』有斐閣、2007年
 難しいテーマだが、政治学でどのような議論がなされてきたのかを一瞥できる。

野林健ほか『国際政治経済学・入門(3版)』有斐閣、2007年
 国家とグローバルな経済との関係について過不足なく学べる。

●川崎修ほか『現代政治理論』有斐閣、2012年
 現代の政治理論にかんする信頼できる一冊。

●伊藤光利ほか『政治過程論』有斐閣、2000年
 やや古いが、政治学の主要な学説についてもっともよくまとまっている。

新川敏光ほか『比較政治経済学』有斐閣、2004年
 学部3年生以上に向く高度な内容。

●田中、近藤、矢内、上川『政治経済学』有斐閣、2020年
 上記のアップデート版。


●建林正彦ほか『比較政治制度論』有斐閣、2008年
 「新制度論」に関する直近の研究状況をまとめる。教科書と専門書の中間。

●砂原・稗田・多胡『政治学の第一歩[新版]』有斐閣、2020年
 アメリカ流の合理的選択論の観点から政治をとらえた特色ある教科書。

●田村・近藤・堀江『政治学(アカデミック・ナビ)』勁草書房、2020年
 ジェンダー、福祉国家など新しい見方を取り入れようとした教科書。

※以下の教科書はやや古いが、「政治」を原理から説いたものとして一読に値する。

●阿部斉・有賀弘・斉藤眞『政治─個人と統合』東京大学出版会、1967年

●高畑通敏『政治学への道案内』三一書房、1976年

●阿部斉『現代政治と政治学』岩波書店
、1989年

4 事典(図書館で分からない語句を調べる)

●阿部斉・高柳先男・内田満『現代政治学小辞典(新版)』有斐閣、1999年

●猪口孝ほか編『政治学事典(縮刷版)』弘文堂、2004年  


学問の方法


1 社会科学の方法論

以下は社会科学の方法の古典。上が理論編、下が実証編に相当。

●マックス・ヴェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』岩波文庫、1998年
●マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫、1989年

●エミール・デュルケーム『社会学的方法の規準』岩波文庫、1978年
●エミール・デュルケーム『自殺論』中公文庫、1985年

ヴェーバーとデュルケームの方法論に関する詳細な注釈として以下も読み応えあり。

●折原浩『デュルケームとウェーバー―社会科学の方法』全2巻、三一書房、1985年

下記のウェーバーの伝記は、社会科学を学ぶことと人格形成について考えさせられる。

●マリアンネ・ウェーバー『マックス・ウェーバー』全2巻、みすず書房、1965年

2 政治学の方法論

●キング、コヘイン、ヴァーバ『社会科学のリサーチデザイン―定性的研究における科学的推論』勁草書房、2004年
 KKVと呼ばれるスタンダードな教科書。定量的研究を重視。大学4年〜院生レベル。

●久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすゝめ』有斐閣、2013年
 KKVを分かりやすく噛み砕く。おすすめ。

●ジョージ、ベネット『社会科学のケース・スタディ』勁草書房、2013年
 KKVを批判し、事例研究に固有の手法を説く。併せて読むと効果的。

●ブレイディ、コリアー『社会科学の方法論争―多様な分析道具と共通の基準』勁草書房、2008年
●ガーツ、マホニー『社会科学のパラダイム論争―2つの文化の物語』勁草書房、2015年 
 KKVとそれへの批判の論争史。

●野村康『社会科学の考え方―認識論、リサーチ・デザイン、手法』名古屋大学出版会、2017年
 イギリスの経験をもとに、KKVを相対化し、多様な方法論を紹介した便利な本。

3 「科学」とは何かをめぐる議論

●カール・ポパー『科学的発見の論理』全2巻、1971-1972年
 科学の意味を問い詰めた20世紀科学哲学の一つの頂点。

●トマス・クーン『科学革命の構造』みすず書房、1971年
●トマス・クーン『科学革命における本質的緊張』みすず書房、1998年
 「パラダイム」論を切り開いた記念碑的著作。

●村上陽一郎『近代科学を超えて』講談社学術文庫、1986年
 クーンのパラダイム論を踏まえた平易な科学論。

●ラカトシュ、マスグレーヴ『批判と知識の成長』木鐸社、1985年
 ポパーとクーンという20世紀を代表する科学哲学者が対決したシンポジウム記録。

●レヴィ=ストロース『野生の思考』みすず書房、1976年
●レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』全2巻、中公クラシックス、2001年
 構造主義の代表作と、その現場を明かした秀逸なエッセイ。

●フーコー『言葉と物』新曜社、1974年
 構造主義的な立場から、人間の認識の歴史を描ききった奇跡的な著作。

●渡邊二郎『構造と解釈』ちくま学芸文庫、1994年
 構造主義と解釈学について平易に解説した入門書。

●野家啓一『科学の解釈学』講談社学術文庫、2013年
 自然科学の素朴な「科学主義」を批判し、人文科学と結びつける試み。

●ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』岩波文庫、2003年
 真理と言語の関係を問うた論理実証主義の古典。

●トゥールミン『ヴィトゲンシュタインのウィーン』平凡社、2001年
 論理実証主義が生まれた知的背景を縦横無尽に描き出した傑作。

●ガダマー『真理と方法』全3巻、法政大学出版局、1986-2012年
 ドイツ解釈学の古典。

●サルトル『聖ジュネ』新潮文庫、1971年
 人間の実存にとって、経験を言葉にすることにいかなる意味があるか。文句なしの名著。

●浅田彰『構造と力』勁草書房、1983年
 80年代「ニューアカデミズム」の代表作を一度は通過したい。

●金森修『新装版 サイエンス・ウォーズ』東京大学出版会、2014年
 ここ30年の科学論を要約した便利な本。

●ベネディクト・アンダーソン『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年
 稀有な知識人が人生を回顧しつつ、比較、地域研究、学際研究、大学と学問について語る。


現代社会について考える

1 社会理論入門書

現代社会論の導入として以下の5冊。

●見田宗介『現代社会の理論』岩波新書、1996年

●桜井哲夫『「近代」の意味―制度としての学校・工場』NHK出版、1984年
 フーコーの影響を受けた現代社会論。

●東浩紀・大澤真幸『自由を考える―9.11以後の現代世界』NHKブックス、2003年
 情報社会における自由を論じた刺激的な対談集。

●宮台真司『サブカルチャー神話解体』Parco出版局、1993年
 サブカルチャーをシステム論から分析した初期宮台の代表作。

●上野千鶴子、古市憲寿『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』光文社新書、2011年

現代社会論として読めるSF小説の古典として以下の四冊。

●オーウェル『動物農場』角川文庫、1995年

●ハクスリー『すばらしい新世界』光文社古典新訳文庫、2013年

●オーウェル『[新訳]1984年』ハヤカワepi文庫、2009年

●ブラッドベリ『華氏451』ハヤカワ文庫、2014年

教科書としてお勧めの二冊。

●ギデンズ『社会学』而立書房

●コーエン、ケネディ『グローバル・ソシオロジー』全2巻、平凡社

2 社会理論の古典

中級者以上のための必読の社会理論。

●ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫

●フロム『自由からの逃走』東京創元新社

●オルテガ『大衆の反逆』白水社

●ボーヴォワール『第二の性』全2巻、新潮文庫

●ベル『資本主義の文化的矛盾』全3巻、講談社学術文庫

●イリイチ『脱学校の社会』東京創元社

●ボードリヤール『消費社会の神話と構造』紀伊国屋書店

●バーガー、ルックマン『故郷喪失者たち』新曜社

●上野千鶴子『家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平』岩波書店

●ギデンズ『モダニティと自己アイデンティティ』ハーベスト社、2005年

●ブルデュー『ディスタンクシオン』全2巻、藤原書店

●ベック『リスク社会』法政大学出版会

●盛山和夫『制度論の構図』創文社、1995年

●ローレンツ・レッシグ『コード』翔栄社
●ローレンツ・レッシグ『コモンズ』翔栄社
 レッシグの2冊は現代情報社会論、権力論の「古典」。

3 システムと生活世界

社会システム論の古典

●タルコット・パーソンズ『社会的行為の構造』全5巻、木鐸社、1974-1989年

ルーマンのシステム理論は次の本から入る。

●ルーマン『法社会学』岩波書店、1977年

●ルーマン『信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム』勁草書房、1990年

社会システム論の入門として以下の二冊。

●山之内靖『システム社会の現代的位相』岩波書店、1996年
 なぜシステム理論が現代社会の考察に有益なのかを示した優れた入門書。

●クニール、ナセヒ『ルーマン 社会システム理論』新泉社、1995年
 中期以降の難解なルーマン理論を分かりやすく概説。

現代の構造機能主義の展開。

●富永健一『行為と社会システムの理論』東京大学出版会、1995年
 パーソンズのシステム論と社会変動論を組み合わせた社会理論の総覧。

●ギデンズ『社会理論の現代像』みすず書房、1986年
●ギデンズ『社会理論の最前線』ハーベスト社、1989年
 ギデンズによる現代社会理論の整理と批評。

●ギデンズ『社会の構成』勁草書房、2015年
 ギデンズ理論の集大成。

システム統合と社会統合について。

●オッフェ『後期資本制社会システム―資本制的民主制の諸制度』法政大学出版局、1988年

●ハーバーマス『晩期資本主義における正統化の諸問題』岩波書店、1979年

●ハ―バーマス、ルーマン』批判理論と社会システム理論』木鐸社、1984年
 20世紀後半で最も重要な論争の一つ、ハーバーマス―ルーマン論争を収録。

●ハーバーマス『コミュニケーション的行為の理論』全3巻、未来社、1985年
 システム論と言語論的転回をくぐり抜けた現代社会理論の到達点。レベルは高いが世界の見方が変わる。

4 世界システム論

世界システム論の簡略な要約として

●ウォーラーステイン『入門世界システム分析』藤原書店、2006年
 世界システム論の形成、歴史の回顧、現状分析まで。やや大風呂敷。

●ウォーラーステイン『資本主義世界経済T―中核と周辺の不平等―』名古屋大学出版会、1987年
 近代史の分析に必要な概念の簡略な説明。

より詳しい叙述として以下の4冊。

●ウォーラーステイン『近代世界システムT〜W』名古屋大学出版会、2013年
 特に1〜3巻は充実しており読む価値は大。1789-1914年を扱った4巻は未完であり、読まなくてもよい。


民主主義について考える

1 民主主義論

入門書として以下の五冊。

●杉田敦『デモクラシーの論じ方―論争の政治』ちくま新書、2001年
 問答調でとっつきやすいが内容は深い。お勧め。

●福田歓一『近代民主主義とその展望』岩波新書、1977年
 民主主義の理論と具体的課題を要約したコンパクトな好著。

●マクファーソン『自由民主主義は生き残れるか』岩波新書、1979年
 参加民主主義を提唱した古典。

●森政稔『変貌する民主主義』ちくま新書、2008年
 森政稔『迷走する民主主義』ちくま新書、2016年
 インターネット、専門家支配など今日の問題まで。

●待鳥聡『民主主義にとって政党とは何か』ミネルヴァ書房、2018年
 政党の存在意義に絞って、歴史、理論、現代日本をかみ砕いて概説。

●水島治郎『ポピュリズムとは何か』中公新書、2016年
 理論的な考察ではないが、ポピュリズムの動向を分かりやすく概説した入門書。

●宇野重規『デモクラシーとは何か』講談社現代新書、2020年
 デモクラシー史の簡便な要約。初心者向けにかみ砕いて書かれている。

●山本圭『現代民主主義』中公新書、2021年
 20世紀以降の民主主義論が整理される。

民主主義に関する古典的教養。

●ルソー『社会契約論』岩波文庫、1954年
 近代民主主義の原理を明らかにした古典

●ハミルトンほか『ザ・フェデラリスト』岩波文庫、1999年
 代表制と民主主義を結びつけた自由民主主義論の古典

●カント『永遠平和のために/啓蒙とは何か、ほか』光文社古典文庫、2006年
 共和国とは何か、共和国を支える市民とは誰を指すのかを示した古典。

●トクヴィル『アメリカのデモクラシー』岩波文庫、2005年-2008年
 民主主義社会の危険をいち早く指摘した古典。

●ミル『代議制統治論』岩波文庫
 代議制民主主義論の古典。読みにくい。

2 比較民主化論

以下は民主化論の古典的な専門研究。

●ムーア『独裁と民主政治の社会的起源』全2巻、岩波文庫、2019年
 民主体制と権威主義体制を分けた社会的要因とは何か。スケールの大きな比較政治の古典。

●シュミッター、オドンネル『民主化の比較政治学―権威主義支配以後の政治世界』未来社、1986年
 民主化がいかなるプロセスで起こるのかを体系化した古典。

●リンス、ステパン『民主化の理論―民主主義への移行と定着の課題』一芸社、2005年
 リンス『民主体制の崩壊―危機・崩壊・再均衡』岩波文庫、2020年

●ハンチントン『第三の波―20世紀後半の民主化』三嶺書房、1995年
 世界の民主化論の比較。やや古いがこの分野の古典。

日本人の著者では以下の本。

●武田康裕『民主化の比較政治―東アジア諸国の体制変動過程』ミネルヴァ書房、2001年
 比較民主化論の理論がうまく整理されている。

●粕谷祐子『比較政治学』ミネルヴァ書房、2014年
 アメリカを中心とした比較民主化論の研究動向が整理されている。

3 現代の民主主義

●シュンペーター『資本主義、社会主義、民主主義』日経BPクラシックス、2016年
 民主主義=投票をめぐるエリートの闘争、という定義はあまりにも有名。第4部だけでもよい。

●ダール『ポリアーキー』岩波文庫、2014年
 多元主義的デモクラシー論の古典。面白くはないが基礎教養の一つとして。

●レイプハルト『民主主義対民主主義』勁草書房、2005年
 先進国の民主主義を多数決型とコンセンサス型に分類した古典。

●ハーバーマス『公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探求』未来社、1994年
●パットナム『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』NTT出版、2001年
 上記2冊は民主主義にとって「市民社会」の重要性を提起した有名な本。

●篠原一『市民の政治学―討議デモクラシーとは何か』岩波新書、2004年
●田村哲樹『熟議の理由―民主主義の政治理論』勁草書房、2008年
 ハーバーマスの理論を受けて発展した討議(熟議)民主主義論。上は日本を代表する提唱者、下は近年の理論的整理。

●ハバーマス『事実性と妥当性――法と民主的法治国家の討議理論にかんする研究』全2巻、未来社、2002年
 上級者向けだが、討議デモクラシー論の代表作。

●ムフ『民主主義の革命―ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』ちくま学芸文庫、2012年
●ムフ『政治的なるものの再考』日本経済評論社、1998年
 ラディカル・デモクラシー論の代表作。マルクス主義の刷新としては意味があるが、デモクラシー論としてはいまいち。

●サンデル『公共哲学―政治における道徳を考える』ちくま学芸文庫、2011年
 公共的討議を重視するサンデル先生の啓蒙書。

●ミュラー『ポピュリズムとは何か』岩波書店、2017年
●ミュデ、カルトワッセル『ポピュリズム―デモクラシーの友と敵』白水社、2018年
 上は政治理論の観点からするポピュリズムの批判。下は民主化におけるポピュリズムの意義も指摘。


自由主義について考える

1 自由主義の古典

●ロック『統治二論』岩波文庫、2010年
 私的所有を基礎とした近代社会論を切り開いた古典。

●アダム・スミス『国富論』全3巻、中公文庫、1978年
 分業と交換による私益追求と公益の実現。市場主義の古典。
 
●モンテスキュー『法の精神』全3巻、岩波文庫
 三権分立論を唱えた制度的自由主義の古典。

●トクヴィル『アメリカのデモクラシー』全4巻、岩波文庫、2005-2008年
 民主的社会における自由を主題とする。現代につながる古典。

●ミル『自由論』岩波文庫、『ミル自伝』岩波文庫、1971年
 面白い本ではないが、自由と寛容を考える上で含蓄に富む。

●ホブハウス『自由主義』三一書房、1946年
 19世紀末における古典的自由主義の変容を示す。

●ラスキ『近代国家における自由』岩波書店、1966年
 自由をめぐる様々な立場を検討するバランスの取れた書。

●ハロウェル『イデオロギ-としての自由主義の没落』創元社、1953年
 20世紀前半の「自由主義の危機」を要約。

●ハイエク『隷属への道』春秋社、1992年
●ポパー『開かれた社会とその敵』未来社、1980年
 上記2冊は、ネオ・リベラリズムのさきがけを為す古典。

●バーリン『自由論』みすず書房、
 自由主義の意味の拡張を批判し、「消極的自由」を擁護した古典。

●ハイエク「自由の条件」『ハイエク全集5〜7巻』春秋社、1986-1987年
 現代自由主義を代表する社会哲学。

●フリードマン『資本主義と自由』マグロウヒル好学社、1975年
 ハイエクと並ぶ福祉国家批判の代表作。

●ロールズ『正義論』紀伊国屋書店、1979年
 現代の平等主義的リベラリズムの古典。

●ノズィック『アナーキー・国家・ユートピア』木鐸社、1992年
 ロールズのリベラリズムに対抗するリバタリアニズムの代表作。

●キムリッカ『多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義』晃洋書房、1998年
 マルテカルチュラリズムへの自由主義の対応を論じた代表作。

●セン『正義のアイディア』岩波書店、2011年
 ロールズのリベラリズムを拡張したセンの到達点。おそらくセンの著作で一番分かりやすい。

2 自由主義の概説書

@初級編

●樋口陽一『自由と国家』岩波新書、1989年
 近代立憲主義への導入として。

●藤原保信『自由主義の再検討』岩波新書、1993年
 共同体主義の観点からする自由主義批判

●キムリッカ『現代政治理論』日本経済評論社
 現代リベラリズムの立場による現代政治理論の要約。

●森村進『自由はどこまで可能か―リバタリアニズム入門』講談社現代新書、2001年
 表題どおりのリバタリアニズム入門書。

●田中拓道『リベラルとは何か』中公新書、2020年
 近代自由主義からリベラルへの転換、現代のリベラルについての概説。

●齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ』中公新書、2021年
 ロールズの評伝と理論を合わせて概説。

A中級編

●マクファーソン『所有的個人主義の政治理論』合同出版
 近代政治思想を所有という観点から整理

●ジョン・グレイ『自由主義』ミネルヴァ書房、2001年
 複数の自由主義を手際よく整理した好著。

●佐々木毅編『自由と自由主義』東京大学出版会、1995年
 特に佐々木毅「20世紀の自由主義」が卓抜な整理を見せる。

●井上達夫『共生の作法―会話としての正義』創文社
●井上達夫『他者への自由―公共性の哲学としてのリベラリズム』毎日新聞社
 日本のリベラリズム研究を代表する著作。

●川本隆史『現代倫理学の冒険―社会理論のネットワーキングへ』創文社
 リベラル―コミュニタリアニズム論争の整理が秀逸。

●ハーヴェイ『新自由主義―その歴史的展開と現在』作品社、2007年
 左派の立場からする新自由主義論の総括。その終焉も見通して現在につなげる。


現代の政治理論を知る

1 入門書

●マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』早川書房、2010年
 ハーバード大サンデル教授の白熱教室。功利主義、カント、リベラリズム、アリストテレス主義を平易に辿る。

●川崎修ほか『[新版]現代政治理論』有斐閣、2012年
 現代理論に関する最もコンパクトな教科書。

●ウィル・キムリッカ『新版 現代政治理論』日本経済評論社、2005年
 ロールズと功利主義、マルクス主義、コミュニタリアニズム、リバタリアニズムとの論争をまとめる。

2 現代政治理論の代表作

●ジョン・ロールズ『正義論(改訂版)』紀伊國屋書店、2010年
 現代政治理論の出発点。

●ロバート・ノージック『アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界』木鐸社、1995年
 リバタリアニズムの代表作。

●ロナルド・ドゥオーキン『平等とは何か』木鐸社、2002年
 ロールズに対抗する平等論の構想。

●マイケル・サンデル『リベラリズムと正義の限界』勁草書房、2009年
 コミュニタリアンによるロールズ批判。訳が分かりにくい。

●アラスデア・マッキンタイア『美徳なき時代』みすず書房、1993年
 アリストテレス主義からするリベラリズム批判の古典。

●ロバート・ベラーほか『心の習慣―アメリカ個人主義のゆくえ』みすず書房、1991年
 市民的徳性の観点からするリベラリズム批判。

●マイケル・ウォルツァー『正義の領分―多元性と平等の擁護』而立書房、1999年
 コミュニタリアニズムの代表者の一人によるロールズ批判。

●チャールズ・テイラー『自我の源泉―近代的アイデンティティの形成』名古屋大学出版会、2011年
 コミュニタリアニズムの代表者テイラーの主著の完訳。近代的個人と社会の錯綜した関係を探究。

●キムリッカ『多文化時代の市民権』晃洋書房、1998年
●キムリッカ『『土着語の政治―ナショナリズム・多文化主義・シティズンシップ』法政大学出版局
 リベラリズムを発展させた多文化主義論の代表作。

●チャールズ・テイラーほか『マルチカルチュラリズム』岩波書店、1996年
 現代を代表する理論家による多文化主義をめぐる論争。

●セン『合理的な愚か者』勁草書房、1989年
●セン『不平等の再検討―潜在能力と自由』岩波書店、1999年
●ヌスバウム『女性と人間開発―潜在能力アプローチ』岩波書店、2005年
 以上三冊はロールズを発展させた現代平等論の到達点。

●木部尚志『平等の政治理論―〈品位ある平等〉にむけて』風行社、2015年
●齋藤純一『不平等を考える』ちくま新書、2017年
 日本での現代平等論の代表作。前者は尊厳や品位を組み込んだ平等論。後者は政治参加の観点からする平等論。

●神取裕子『正義とは何か―現代政治哲学の6つの視点』中公新書、2018年
 ロールズ以降の政治哲学の流れを分かりやすく概説。


現代の政治経済学を学ぶ

1 入門書

優れた教科書

●山口定『政治体制』東京大学出版会、1989年
 マクロな政治体制論のまとめとして優れている。

●新川敏光・井戸正伸・宮本太郎・眞柄秀子『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
 政治経済学の理論をはじめて体系的に紹介した高度な入門書。

●田中拓道、近藤正基、矢内勇生、上川龍之進『政治経済学―グローバル化時代の国家と市場』有斐閣ストゥディア、2020年
 福祉国家論、資本主義論、財政・金融論、アメリカの合理的選択論など主要な理論を概説。

国際政治経済について、とりあえず次の二冊がまとまっている。

●野林健ほか『国際政治経済学・入門(第3版)』有斐閣アルマ、2007年

●ギルピン、ロバート 『グローバル資本主義―危機か繁栄か』東洋経済新報社、2001年

資本主義の歴史を総覧する以下の著作も重要。

●ボー『資本主義の世界史 1500〜2010』藤原書店、2015年

2 戦後の政治経済体制

基本書として次の本。

●山田鋭夫『20世紀資本主義―レギュラシオンで読む』有斐閣、1994年
 レギュラシオン理論の概説書。

●田口富久治編 1989 『ケインズ主義的福祉国家―先進6カ国の危機と再編』青木書店
 戦後のケインズ主義的福祉国家に関する理論と先進国比較。

●アグリエッタ、ブレンデール 1990 『勤労者社会の転換―フォーディズムから勤労者民主制へ』日本評論社
 1970年代の転換を最も包括的に説明。

コーポラティズム(政労使の協調体制)についての理論的解説として優れた本。

●石田徹『自由民主主義体制分析―多元主義・コーポラティズム・デュアリズム』法律文化社、1992年

●桐谷仁『国家・コーポラティズム・社会運動―制度と集合行動の比較政治学』東信堂、2002年
 コーポラティズム論と社会運動論の接合に重点。

コーポラティズム論の代表的研究は以下の三冊。

●ゴールドソープ編『収斂の終焉―現代西欧社会のコーポラティズムとデュアリズム』有信堂、1987年

●シュミッター、レームブルッフ編『現代コーポラティズム(T)―団体統合主義の政治とその理論』木鐸社、1984年

●シュミッター、レームブルッフ編『現代コーポラティズム(U)―先進諸国の比較分析』木鐸社、1984年

1970年代の国家論の転換に関しては以下の3冊。プーランツァスは上級者向け。

●田口富久治『マルクス主義国家論の新展開』青木書店、1979年

●加藤哲朗『国家論のルネサンス』青木書店、1986年

●プーランツァス『資本主義国家の構造TU』未来社、1978年

3 資本主義の多様性

●ミシェル・アルベール『資本主義対資本主義(改訂新版)』竹内書店新社、2011年
 最も平易な資本主義の多様性論。

●ホール、ソスキス『資本主義の多様性―比較優位の制度的基礎』ナカニシヤ出版、2007年
 ホールとソスキスの本はこの分野の代表作。

●アマーブル『五つの資本主義―グローバリズム時代における社会経済システムの多様性』藤原書店、2005年
 現時点で最も包括的な資本主義比較の本。

●青木昌彦、奥野正寛『経済システムの比較制度分析』東京大学出版会、1996年
 制度派経済学で世界的に有名な著者による比較資本主義論。

●山田鋭夫『さまざまな資本主義―比較資本主義分析』藤原書店、2008年
 レギュラシオン理論を精力的に紹介してきた著者によるまとめ。

4 新制度論

信頼できる教科書として以下の二冊。

建林正彦ほか『比較政治制度論』有斐閣アルマ、2008年

●ピータース『新制度論』芦書房、2007年

新制度論の古典として以下の翻訳。

●ポール・ピアソン『ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析』勁草書房、2010年

制度と経済発展の関係を歴史的に考察した以下も重要。

●アセモグル、ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか―権力・繁栄・貧困の起源』ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2016年

5 福祉国家論

基本書として以下の3冊。

●エスピン=アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』ミネルヴァ書房、2001年

●エスピン=アンデルセン『転換期の福祉国家―グローバル経済下の適応戦略』早稲田大学出版部、2003年

●宮本太郎『福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー』有斐閣、2008年

理論のまとめとして以下。

●クリストファー・ピアソン『曲がり角にきた福祉国家―福祉の新政治経済学』未来社、1996年
 戦後から1990年代までの理論的まとめとして最も優れている。

●『講座・福祉国家のゆくえ』全5巻、ミネルヴァ書房、2002-2004年
 現代福祉国家論の到達点。

●鎮目真人、近藤正基編『比較福祉国家』ミネルヴァ書房、2013年
 若手研究者による方法論を中心とした教科書。

国別の代表的な政治経済学的研究。

●新川敏光『日本型福祉レジームの発展と変容』ミネルヴァ書房、2005年
 日本。

●宮本太郎『福祉国家という戦略―スウェーデンモデルの政治経済学』法律文化社、1999年
 スウェーデン。

●近藤正基『現代ドイツ福祉国家の政治経済学』ミネルヴァ書房、2010年
 ドイツ。

●近藤康史『個人の連帯―「第三の道」以後の社会民主主義』勁草書房、2008年
 イギリス。

●ジャン=クロード・バルビエ『フランスの社会保障システム―社会保護の生成と発展』ナカニシヤ出版、2006年
 フランス(ただし政治経済学的アプローチではない)。

●辻由希『家族主義福祉レジームの再編とジェンダー政治』ミネルヴァ書房、2012年
 日本のジェンダー政治に特化。

●大沢真理『現代日本の生活保障システム―座標軸とゆくえ』岩波書店、2007年
 日本の第一人者によるジェンダー視点を入れたまとめ。

●宮本太郎編『比較福祉政治―制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版会、2006年
 ドイツ、フランス、イギリス、日本、オランダなどの近年の動向。

●新川敏光編『福祉レジームの収斂と分岐―脱商品化と脱家族化の多様性』ミネルヴァ書房、2011年
 現時点で最も包括的なヨーロッパ諸国と日本の比較。

雇用と家族の変容

●エスピン-アンデルセン『ポスト工業経済の社会的基礎―市場・福祉国家・家族の政治経済学』桜井書店、2000年
●エスピン-アンデルセン『平等と効率の福祉革命―新しい女性の役割』岩波書店、2011年
 ポスト産業社会における雇用と家族に関する代表的研究。ヨーロッパのスタンダード。

●アンソニー・ギデンズ『第三の道―効率と公正の新たな同盟』日本経済新聞社、1999年
 毀誉褒貶あるが、ポスト産業社会における新しい政治経済のビジョンを提示。

●筒井淳也『仕事と家族―日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』中公新書、2015年
 日本に関する家族と雇用の現状を分かりやすく概説。


グローバル化とは何か

1 入門書

●ロビン・コーエン、ポール・ケネディ『グローバル・ソシオロジー』全2巻、平凡社、2003年
 主要な問題群ごとに読みやすくまとまった教科書。

●ロバート・ギルピン『グローバル資本主義―危機か繁栄か』東洋経済新報社、2001年
 ヘゲモニー論の立場から国際政治経済学を分かりやすく展開した教科書。

2 主な参考書

●デヴィッド・ヘルド、アントニー・マッグルー『グローバル化と反グローバル化』日本経済評論社、2003年
 両者の立場が簡潔にまとまっている。

●スーザン・ストレンジ『国家の退場―グローバル経済の新しい主役たち』岩波書店、1998年
 国家の衰退を予言した有名な本。ただし2000年代の動向とは乖離がある。

●ボブ・ジェソップ『資本主義国家の未来』御茶の水書房、2005年
●ヨアヒム・ヒルシュ『国家・グローバル化・帝国主義』ミネルヴァ書房、2007年
 上記2冊はネオ・マルクス主義者による包括的な議論。水準は高いが経済決定論的な傾向に注意が必要。

●サスキア・サッセン『グローバリゼーションの時代―国家主権のゆくえ』平凡社、1999年
 移民に焦点を当てて新しいガバナンスのあり方を構想する。

●ジョゼフ・スティグリッツ『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』徳間書店、2006年
 ノーベル経済学賞受賞、世銀チーフ・エコノミストによるグローバル・ガバナンスへの提言。原題はMaking Globalization Workであり邦題はミスリーディング。

●ポール・コリアー『最底辺の10億人』日経BP社、2008年
 グローバル化の功罪を統計をもとに説得的に論じた書。出色の出来。

●ミラノヴィッチ『大不平等―エレファントカーブが予測する未来』みすず書房、2017年
 先進国・途上国によるグローバル化のインパクトの違いを統計によって説明。興味深い。

●ダニ・ロドリック『グローバリゼーション・パラドクス―世界経済の未来を決める三つの道』白水社、2013年
 グローバル化、国家主権、民主主義の三者の関係を考察。

●ミラノヴィッチ『資本主義だけ残った』みすず書房、2021年
 資本主義は二つの類型として残ったという。リベラルな能力主義と政治によって管理された資本主義。

3 知的刺激になる読み物

●ジョン・グレイ『グローバリズムという妄想』日本経済新聞社、1999年
 イギリス・リベラリズムの立場から見たグローバリズム批判。

●ジョージ・ソロス『グローバル資本主義の危機―「開かれた社会」を求めて』日本経済新聞社、1999年
 巨大ヘッジファンドの創始者による興味深いグローバル化批判。

●スーザン・ジョージ『オルター・グローバリゼーション宣言』作品社、2004年
●世界社会フォーラム『帝国への挑戦』作品社、2005年
 オルター・グローバル化運動の主張が分かる。

●ネグリ、ハート『帝国』以文社、2003年
●ネグリ『マルチチュード―〈帝国〉の時代の戦争と民主主義』全2巻、NHKブックス、2005年
 反グローバル化のバイブルとなった本。ただし、前者『帝国』の方が断然出来がよい。


ナショナリズムとは何か

●大澤真幸編『ナショナリズム論の名著50』平凡社
 ナショナリズム論入門として最適の一冊。同じ著者による大著『ナショナリズムの由来』はいまいち。

●塩川伸明『民族とネイション―ナショナリズムという難問』岩波新書、2008年
 ナショナリズム、民族主義をめぐる概念を正確に整理。

●ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』NTT出版
 読みやすくはないが、ネイションを「imagined community」と論じた記念碑的著作。

●アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』岩波書店
 ネイションの起源を「エトニ」とする「原初主義」の代表作。

●ホブズボーム『ナショナリズムの歴史と現在』大月書店
 ネイションを近代的創造物とする「近代主義」の代表作。

●アンソニー・スミス『ネイションとエスニシティ―歴史社会学的考察』名古屋大学出版会
 「原初主義」と「近代主義」のバランスを取った理論的著作。
     
●小熊英二『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性』新曜社
 戦後日本のナショナリズム史を明快に論じた好著。一見分厚いが読みやすい。


社会運動の理論

1 市民社会とは何か

理論的サーベイは数多い。概念(史)の研究として以下の三冊。

●リーデル『市民社会の概念史』以文社、以文社、1990年

●「特集 市民社会論再考」『思想』889号、1998年7月号

●エーレンベルク『市民社会論―歴史的・批判的考察』青木書店、2001年

「市民」ではなく「生活者」に焦点を合わせた以下の研究も優れた本。

●天野正子『「生活者」とはだれか―自律的市民像の系譜』中公新書、1996年

2 社会運動論

社会運動の背景にある変化として

●イングルハート『静かなる革命―政治意識と行動様式の変化』東洋経済新報社、1978年

代表的な社会運動の理論書として以下を押さえる。

●トゥレーヌ『脱工業化の社会』河出書房新社、1970年

●ブルデュー『ディスタンクシオン―社会的判断力批判』藤原書店、1990年

●メルッチ『現代に生きる遊牧民』岩波書店、1997年

1980年代までの理論動向については次のまとめも参照。

●伊藤 るり「〈新しい社会運動〉論の諸相と運動の現在」『 岩波講座社会科学の方法8 システムと生活世界』岩波書店、1993年、121-158頁

近年までの包括的な理論的整理として以下の2冊。

●シドニー・タロー『社会運動の力―集合行為の比較社会学』彩流社、2006年
 現時点での理論的なまとめに当たる本。

●ニック・クロスリー『社会運動とは何か―理論の源流から反グローバリズム運動まで』新泉社、2009年
 包括的な理論の概説としてもっとも分かりやすい。最後のブルデュー論は飛ばしてもよい。

邦語ではまだ包括的な本は出ていない。とりあえずの参照文献として

●大畑ほか編『社会運動の社会学』有斐閣選書、2004年

●曽良中ほか編『社会運動という公共空間―理論と方法のフロンティア』成文堂、2004年

近年までの福祉国家論と市民社会論を結合する優れたまとめとして

●宮本太郎「ポスト福祉国家のガバナンス 新しい政治的対抗」『思想』983号(2006年3月号)、27-47頁

社会運動論を日本の脱原発運動へと応用した本として

●本田宏『脱原子力の運動と政治―日本のエネルギー政策の転換は可能か』北海道大学図書刊行会、2005年

日本の市民社会については以下の2冊。

●ペッカネン『日本における市民社会の二重構造―政策提言なきメンバー達』木鐸社、2008年
●辻中豊ほか『現代日本のNPO政治』木鐸社、2012年

日本の排外主義運動に特化した研究として

●樋口直人『日本型排外主義―在特会・外国人参政権・東アジア地政学』名古屋大学出版会、2014年


日本政治を分析する

1 入門書

●石川真澄、山口二郎『戦後政治史(第3版)』岩波新書、2010年
 戦後政治史の定番。

●伊藤光利・田中愛治・真渕勝『政治過程論』有斐閣アルマ、2000年
 多元主義から新制度論、ネットワーク論まで近年の理論動向を整理した好著。

●川人貞史・吉野孝・平野浩・加藤淳子『現代の政党と選挙』有斐閣アルマ、2001年
 投票行動を中心に近年の理論を整理。

●蒲島郁夫『戦後政治の軌跡』岩波書店、2004年
 選挙データを元に1990年代までの日本政治を総覧。

●竹中治堅『首相支配―日本政治の変貌』中公新書、2006年
 2000年代の流れをつかむために。

●中北浩爾『現代日本の政党デモクラシー』岩波新書、2012年
 過去20年の政治の流れを詳しく示す。

●佐々木毅、清水真人編『ゼミナール現代日本政治』日本経済新聞社、2011年
 2010年前後に関して最も詳しく読みやすい。第2部は出来不出来あり。

●清水真人『平成デモクラシー史』ちくま新書、2018年
 2000年代後半から2017年までの政治の流れをまとめる。

●前田健太郎『女性のいない民主主義』岩波新書、2019年
 日本の政治と政治学をジェンダー(不在)の視点から考察した特色ある本。

2 自民党政治とは何だったのか

●三宅一郎ほか『日本政治の座標―戦後40年のあゆみ』有斐閣選書、1985年
 山口定の手になる第2章、第3章は包括的な戦後体制論として最も秀逸。

●綿貫譲治「高度経済成長と経済大国化の政治過程」日本政治学会編『年報政治学1977 五五年体制の形成と崩壊』岩波書店、1979年
 高度成長期の政治叙述として最も包括的で優れる。

●田中角栄『日本列島改造論』日刊工業新聞社、1972年
 田中派政治の原点。

●佐藤誠三郎、松崎哲久『自民党政権』中央公論社、1986年
●猪口孝, 岩井奉信『「族議員」の研究―自民党政権を牛耳る主役たち』日本経済新聞社、1987年
 この2冊は自民党内部の権力構造を分析した古典。

●飯尾潤『民営化の政治過程』東京大学出版会、1993年
 中曽根内閣下の民営化改革を政治学的に分析。

●斉藤淳『自民党長期政権の政治経済学―利益誘導政治の自己矛盾』勁草書房、2010年
 合理的選択論を用いた新しい時代の自民党政権論。

●清水真人『経済財政戦記―官邸主導 小泉から安部へ』日本経済新聞出版社、2007年
 小泉改革の叙述として最も詳しい。

●上川 龍之進『小泉改革の政治学』東洋経済新報社、2010年
 小泉改革の政治学的な分析として最も包括的。

●中北浩爾『自民党政治の変容』NHK出版、2014年
●中北浩爾『自党―「一強」の実像』中公新書、2017年
 前者は50年あまりの自民党政治を党組織の観点からまとめる。後者は派閥から後援会まで現状を多角的に分析。

3 1990年代以降の政治変容

政界再編の流れを知るためには以下の3冊。1冊目は資料集。2冊目は保守勢力中心、3冊目は民主党寄りのまとめ。

●佐々木毅編『政治改革1800日の真実』講談社、1999年

●大嶽秀夫『日本政治の対立軸―93年以降の政界再編の中で』中公新書、1999年

●山口二郎『戦後政治の崩壊―デモクラシーはどこへゆくのか』岩波新書、2004年

民主党政権の総括として以下。

●山口二郎、中北浩爾『民主党政権とは何だったのか』岩波書店、2014年
●伊藤光利、宮本太郎編『民主党政権の挑戦と挫折』日本経済評論社、2014年

行財政改革についての政治学的研究として以下。

●城山英明ほか編『中央省庁の政策形成過程』中央大学出版会、1999年
 インタビューに基づく優れた実証研究。省庁ごとの違いが分かる。

●加藤淳子『税制改革と官僚制』東京大学出版会、1997年
 新制度論による税制改革の分析。

●真淵勝『大蔵省統制の政治経済学』中央公論社、1994年
●真渕勝『大蔵省はなぜ追いつめられたのか―政官関係の変貌』中公新書、1997年
 新制度論を用いて大蔵省改革の困難と実現を分析。

●上川龍之進『経済政策の政治学』東洋経済新報社、2005年
 新制度論を用いて、90年代日銀・大蔵省の失政を中心に分析。

●船橋洋一『通貨烈々』朝日文庫、1992年
 1985年プラザ合意を中心に各国の通貨政策のせめぎ合いを活写。

●戸矢哲朗『金融ビッグバンの政治経済学』東洋経済新報社、2003年

●村松岐夫『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』東洋経済新報社、2010年
 90年代以降の政官関係の変化を実証データを踏まえて包括的に考察。

●寺西重郎編『構造問題と規制緩和(バブル/デフレ期の日本経済と経済政策 第7巻)』慶応義塾大学出版会、2010年
 構造改革期の政治過程分析として最も詳しい。

●待鳥聡史『政治改革再考―変貌を遂げた国家の軌跡』新潮選書、2020年
 政治改革、行財政改革、地方分権など改革の全体像を知るうえで便利。

統治構造に関しては次の本が現代の古典。

●飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書、2007年

政党のあり方と有権者の志向とのズレとして以下。

●谷口正紀『現代日本の代表制民主政治―有権者と政治家』東京大学出版会、2020年

4 労働政治による分析

●新川敏光『日本型福祉の政治経済学』三一書房、1993年
 日本の労使関係を「デュアリズム」として分析するシャープな研究。

●久米郁男『日本型労使関係の成功』有斐閣、1998年
●久米郁男『労働政治―戦後政治のなかの労働組合』中公新書、2005年
 新川本と対照的に労働権力の強さを指摘する研究。新川本と比較して読む。

●伊藤光利「大企業労使連合の形成」『レヴァイアサン』第2号、1998年
 日本型コーポラティズムを大企業という切り口によって説得的に提示。

5 メディアと政治

重要なテーマなのに残念ながらあまり良い本がない。とりあえず以下。

●蒲島郁夫、竹下俊郎、芹川 洋一『メディアと政治(改訂版)』有斐閣アルマ、2010年
 学説を整理した教科書。

●原寿雄『ジャーナリズムの可能性』岩波新書、2009年
●Daniel C. Hallin and Paolo Mancini, Comparing Media Systems: Three Models of Mediaand Politics , Cambridge Unversity Press, 2004.
 日本のメディアシステムに関しては多くの本があるがどれも一長一短。英語の比較本がよい。

●丸激トークオンデマンド(http://www.videonews.com/
 日本のメディアシステムに関する議論は、現時点(2011年)では在野のジャーナリストによるものが最もよい。

●映画『チョムスキーとメディア―マニュファクチャリング・コンセント』2007年
 批判的知識人によるメディア批判の映画。一つの見方を示す。

●谷口将紀『シリーズ日本の政治10 政治とマスメディア』東京大学出版会、2015年
 研究動向の整理として。

6 外交・安全保障

●五百旗頭真『戦後日本外交史』有斐閣アルマ、2005年
 日本の「主体性」を強調した通史。イデオロギー色がやや強い。

●外岡秀俊ほか『日米同盟半世紀』朝日新聞社、2001年
 一次資料を多用したオーソドックスな通史。

●中島信吾『戦後日本の防衛政策』慶応大学出版会、2006年

●船橋洋一『同盟漂流』岩波書店、1997年
 90年代半ばの日米同盟再編を描いた傑作。続編が待たれる。

●宮城大蔵『現代日本外交史―冷戦後の模索、首相たちの決断』中公新書、2016年
 分析はあまりないが、過去20年の外交の流れをふり返るうえで便利。

●藤原帰一『新版 平和のリアリズム』岩波現代文庫、2014年
 過去20年の安全保障をめぐる論点を示す。

7 地方政治

●曽我謙悟、待鳥聡史『日本の地方政治―二元代表制政府の政策選択』名古屋大学出版会、2007年
 首長・議会の二元代表制に着目した現在のスタンダードな研究。

●砂原庸介『分裂と統合の日本政治―統治機構改革と政党システムの変容』千倉書房、2017年
 中央・地方の選挙制度の違いが政党システムに与えた影響を検証。

8 戦後の政治学説史に関心がある人のために

●丸山真男『日本の思想』岩波書店、1961年
●丸山真男『現代政治の思想と行動[増補版]』未来社、1964年
●丸山真男『戦中と戦後の間 1936-1957年』みすず書房、1976年
 戦後政治学を代表する著者による時事論と日本論。

●石田雄『社会科学再考―敗戦から半世紀の同時代史』東京大学出版会
 誠実な回顧。

●大嶽秀夫『戦後政治と政治学』東京大学出版会
 切れ味鋭い戦後政治学史。続編として『高度経済成長期の政治学』。

●田口富久治『戦後日本政治学史』東京大学出版会、2001年
 大嶽と丸山の間に立つ筆者による日本政治学史の整理。


ヨーロッパの政治を分析する

ヨーロッパ政治に関しては以下。一冊目が歴史、二冊目が20世紀、三冊目が現代の論点、四冊目は(毀誉褒貶あるが)排外主義に特化した本。

●平島健司、飯田芳弘『ヨーロッパ政治史』放送大学教育振興会、2010年

●網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年

●伊藤・網谷編『ヨーロッパ・デモクラシーの論点』ナカニシヤ出版、2021年

●中井遼『欧州の排外主義とナショナリズム』新泉社、2021年

比較政治の代表的な本として以下。

●粕谷祐子『比較政治学』ミネルヴァ書房、2014年
 アメリカを中心とした研究動向の紹介として便利。

●レイプハルト『民主主義対民主主義(第2版)―多数決型とコンセンサス型の36カ国比較研究』勁草書房、2014年
 比較制度論の代表的な研究。あまり面白くはないが一読しておくべき。

●ポグントケ、ウェブ『民主政治はなぜ「大統領制化」するのか―現代民主主義国家の比較研究』ミネルヴァ書房、2014年
  「大統領制化」という新しい動向にかんする比較研究。

欧州統合に関しては以下の4冊が基本書。

●遠藤乾編『ヨーロッパ統合史』名古屋大学出版会、2008年
 歴史の大きな流れをつかむうえで最適。資料集である『原典ヨーロッパ統合史―資料と解説』もある。

●アンツェ・ヴィーナー、トマス・ディーズ『ヨーロッパ統合の理論』勁草書房、2010年
 統合理論の分かりやすい整理。

●辰巳浅嗣編『EU―欧州統合の現在[第3版]』創元社、2012年
 現状。

●遠藤乾『欧州複合危機―苦悩するEU、揺れる世界』中公新書、2016年
 危機に揺れる欧州統合の全体像を示し、将来を展望。視野が広い。


ヨーロッパの政治思想史を学ぶ

1 政治思想史必読書10選
※「2 教科書」を参照しながら読む。

(1)プラトン『国家』全二巻、岩波文庫、1979年
 政治哲学の始まり。

(2)『旧約聖書』『新約聖書』
 キリスト教の原典を一度は読みたい。

(3)ホッブズ「リヴァイアサン」『世界の名著23 ホッブズ』中央公論社、1987年
 徹底した人間観察による近代政治思想の出発点。

(4)ロック『市民政府論』岩波文庫、1968年
 近代自由主義の出発点。

(5)ルソー「社会契約論」『世界の名著30 ルソー』中央公論社、1966年
 近代デモクラシー論のエッセンス。

(6)ヘーゲル「法哲学」『世界の名著35 ヘーゲル』中央公論社、1967年
 家族・市場・国家を総合する近代政治思想の頂点。

(7)マルクス、エンゲルス『共産党宣言』岩波文庫、1971年
 マルクス・エンゲルス思想のアウトラインを示すパンフレット

(8)ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫、1989年
 すべての社会科学にとっての古典。

(9)丸山真男『現代政治の思想と行動』未来社、1964年
 戦後日本を代表する政治学者の主著。

(10)ハーバーマス『公共性の構造転換(第2版)』未来社、1994年
 20世紀後半の「市民社会」論の古典。今でも色褪せず。

2 優れた教科書

●福田歓一『政治学史』東京大学出版会、1985年
 通史としては現在までの最高水準。

●佐々木、鷲見、杉田『西洋政治思想史』北樹出版、1995年
 コンパクトで読みやすい通史。

●福田歓一『近代の政治思想』岩波新書、1970年
 『政治学史』の入門編。

●ウォリン『西欧政治思想史』福村出版、1994年
 「政治」特有の思考法に迫ったユニークかつ評価の高い通史。

●藤原保信『西洋政治理論史』早稲田大学出版会、1985年
 平易な論述の入門書。

●藤原保信『二〇世紀の政治理論』岩波書店、1991年
 上記に同じ。現代政治理論に関する平易なまとめ。

●小野紀明、川崎修編『岩波講座政治哲学』全6巻、岩波書店、2014年
 政治思想・政治理論の研究動向を知るうえで便利な講座。

3 関連する教科書

●大田ほか『経済思想史』名古屋大学出版会、1995年
 経済思想史の代表的教科書。

●森嶋通夫『思想としての近代経済学』岩波新書
 経済思想入門者のための名著。

●山脇直司『ヨーロッパ社会思想史』東京大学出版会、1992年
 社会思想史の標準的教科書。

●坂本達哉『社会思想の歴史―マキアヴェリからロールズまで』名古屋大学出版会、2014年
 自由と公共性の関係にこだわった新しい社会思想史の教科書。

●松澤弘陽『日本政治思想』放送大学出版会、1989年
●平石直明『日本政治思想史―近世を中心に』放送大学出版会、2001年
●渡辺浩『日本政治思想史―十七〜十九世紀』東京大学出版会、2010年
 上2冊は日本政治思想史の通史を代表する教科書。下は社会史を意識した新しい通史。

●小野紀明『二十世紀の政治思想』岩波書店、1996年
 ポスト・モダニズムを中心とした高度な20世紀政治理論史。

●スチュワート・ヒューズ『意識と社会―ヨーロッパ社会思想史1890-1930』みすず書房、1970年
 19〜20世紀の転換期を描いた社会思想史の名著。

●小野紀明ほか編『岩波講座 政治哲学』全6巻、岩波書店、2014年
 今日の日本での西洋政治思想史研究の集大成。研究の現状を知るのに便利。

●宇野重規『西洋政治思想史』有斐閣アルマ、2013年
 コンパクトで読みやすく、初学者向け。

4 リファレンス

●『岩波哲学・思想事典』岩波書店、1998年
 現在まで最も優れた哲学・思想史の事典。

●『岩波社会思想史事典』岩波書店、2008年
 コンパクトな最新の思想史事典。

●今村仁司『増補 現代思想のキーワード』ちくま文庫
 フランス現代思想を中心にしたキーワード集。

5 政治思想の古典

(1)古代

●プラトン『ソクラテスの弁明ほか』岩波文庫、1964年
 ダイアローグの醍醐味を知るために一度は読んでほしい。

●アリストテレス『政治学』岩波文庫、1961年

(2)近世

●マキアヴェリ『君主論』岩波文庫、1998年

●マキアヴェリ「政略論」『世界の名著16 マキアヴェリ』中央公論社、1966年
 近代の政治的思考の出発点。

●ルター『キリスト者の自由ほか』岩波文庫、1955年
 宗教改革の端緒となった書。

(3)近代

●ルソー「学問・芸術論」「人間不平等起源論」『世界の名著30 ルソー』中央公論社、1966年
 現代につながる根源的な近代社会批判。

●カント『永遠平和のために』岩波文庫、1985年
●カント『道徳形而上学原論』岩波文庫、1976年
 近代人権論、共和主義論の頂点。

●ヘーゲル「精神現象学序論」『世界の名著35ヘーゲル』中央公論社、1967年
●ヘーゲル『法哲学』同上
 近代政治思想のチャンピオン。厚くてよければ長谷川宏訳(作品社)で平易な訳あり。

●ベンサム「道徳および立法の諸原理序説」『世界の名著49 ベンサム、ミル』中央公論社、1979年
 イギリス功利主義の代表的著作。

●トクヴィル『アメリカのデモクラシー』全4巻、岩波文庫、2005-2008年
 ついにきちんとした翻訳が完成。デモクラシー論の古典。

●ミル『自由論』岩波文庫、1971年
●ミル『代議制統治論』岩波文庫、1997年
 イギリス自由主義の古典。

●マルクス、エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』岩波文庫、1978年
 マルクスの歴史観を体系的に示す中期の代表作。

●マルクス『資本論』全9巻、岩波文庫、1969-1970年
 マルクスの主著。他の経済学者への罵詈雑言が面白く、意外に読みやすい。

(4)現代

●ウェーバー『職業としての政治』岩波文庫、1980年
 政治家の倫理を提示。

●シュミット『政治的なるものの概念』未来社、1970年
 20世紀政治理論に大きな影響を与えた友―敵理論を提示。 

●バーリン『自由論(新装版)』みすず書房、2000年
 現代自由主義の抱えるパラドクスを示す。

●ハイエク『自由の条件1〜3』春秋社、1986-1987年
 現代ネオ・リベラリズムの起源。

●アレント『人間の条件』ちくま学芸文庫、1994年
 経済全盛の時代に「政治」とは何かを問い詰めた異色の書。

●ダール『ポリアーキー』岩波文庫、2014年
 現代民主主義論の古典。

●ロールズ『正義論』紀伊国屋書店、1979年
 1970年以降の政治哲学を主導した本。

●フーコー『監獄の誕生―監視と処罰』新潮社、1977年
 現代権力論の代表作。

●ネグリ、ハート『帝国』2003年
 現代政治思想を集約した刺激的な本。

6 代表的な研究書

(1)古代

●佐々木毅『プラトンと政治』東京大学出版会、1984年
●佐々木毅『よみがえる古代思想』、講談社、2003年
 政治思想史の第一人者による古代政治思想の講義。

(2)中世

●カントロヴィッツ『王の二つの身体―中世政治神学研究』平凡社、1992年

●モラル『中世の政治思想』平凡社ライブラリー、2002年

●将棋面貴巳『ヨーロッパ政治思想の誕生』名古屋大学出版会、2013年

●稲垣良典『トマス・アクィナス『神学大全』』講談社学術文庫、2019年

(3)近代初期

●佐々木毅『主権・抵抗権・寛容』岩波書店、1973年
●佐々木毅『マキアヴェッリの政治思想』岩波書店、1970年
 近代初期の政治思想史研究の代表作。

●J. G. A. ポーコック『マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大大西洋圏の共和主義の伝統』名古屋大学出版会、2008年
 近代初期イタリアを中心とした政治思想史の壮大な叙事詩。完訳成る。

●水田洋『近代人の形成』東京大学出版会、1954年
 近代初期から近代市民革命期までを描いた社会思想史の古典。

●村上淳一『近代法の形成』岩波書店、1979年
 ドイツを中心に、中世から近代の法・国家への変容を鮮やかに描写。

●アザール『ヨーロッパ精神の危機』法政大学出版局、1977年
 ヨーロッパ世界観の危機から18世紀啓蒙主義の生成へ。

(4)ホッブズ・ロック

●福田歓一『近代政治原理成立史序説』岩波書店、1971年
 ホッブズ→ロック→ルソーという政治思想史のストーリーを定着させた古典。しかし読みにくい。

●リチャード・タック『トマス・ホブズ』未來社、1995年
 現時点で最もバランスの取れたホッブズ論か。

●高野清弘『トマス・ホッブズの政治思想』御茶の水書房、1990年
 『リヴァイアサン』以外にも目を配っている点が特色。

●梅田由里香『ホッブズ 政治と宗教』名古屋大学出版会、2007年
 宗教論に重点を置いたホッブズ再解釈。内容は賛否両論。

●加藤節『ジョン・ロックの思想世界』東京大学出版会、1987年
 ロックの宗教的背景に重点。

●大澤麦『自然権としてのプロパティ―イングランド革命における急進的政治思想の展開』成文堂、1995年
 ロックの思想的背景となる宗教論争が詳しく、現時点で最も優れた研究書。

(5)モンテスキュー

●樋口謹一編『モンテスキュー研究』白水社、1984年
 バライエティに富んだ切り口。

●川出良枝『貴族の徳、商業の精神』東京大学出版会、1996年
 現時点までのモンテスキュー研究の代表作。

(6)ヒューム・スミスとスコットランド啓蒙

●坂本達哉『ヒュームの文明社会』創文社、1995年
 市場と文明論に重点を置いたヒューム読解。バランスが取れている。

●犬塚元『デイヴィッド・ヒュームの政治学』東京大学出版会、2004年
 ヒュームの歴史認識に重点を置いた新解釈を提示。

●水田洋『アダム・スミス』講談社学術文庫、1997年
 スミス研究の泰斗による概説。

●堂目卓生『アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界』中公新書、2008年
 新書だがアダム・スミスの全体像を知りうる。現時点で最良のスミス本か。

●ホント、イグナティエフ編著『富と徳―スコットランド啓蒙における経済学の形成』未来社、1990年
 スコットランド啓蒙の研究枠組みを提示した本。

(7)ルソーとフランス革命

●ドラテ『ルソーとその時代の政治学』九州大学出版会、1986年
 ルソーの思想を自然法論との関わりから論じた代表的研究。相変わらず最良。

●作田啓一『ジャン・ジャック・ルソー』人文書院、1980年
 バランスの取れたルソー研究。

●エルンスト・カッシーラー『ジャン=ジャック・ルソー問題』みすず書房、1997年

●ジャン・スタロバンスキー 『(新装版)ルソー 透明と障害』みすず書房、 2015
 文学的手法でルソーの希求した共同体像を分析。

(8)ドイツ観念論

●リーデル『ヘーゲルにおける市民社会と国家』未来社、1985年
 ドイツを代表するヘーゲル政治理論の研究。

●テイラー『ヘーゲルと近代社会』岩波書店、1981年

●藤原保信『ヘーゲル政治哲学講義』御茶の水書房、1982年
 良くも悪くも、これ以上「分かりやすい」ヘーゲル政治理論の研究書はない。

●権左武志『ヘーゲルとその時代』岩波新書、2013年
 ヘーゲルの時代背景を概説。

(9)19世紀自由民主主義

●宇野重規『トクヴィル―平等と不平等の理論家』講談社、2007年
 時代背景を踏まえた優れたトクヴィル研究。

●関口浩『自由と陶冶―J. S. ミルとマス・デモクラシー』みすず書房、1988年
 包括的なミル研究としては相変わらず最善か。

(9)社会主義

●マニュエル『サン・シモンの新世界』全2巻、恒星社厚生閣、1975年
 フランス初期社会主義者サン・シモンの最も信頼できる研究。

●河野健二編『プルードン研究』岩波書店、1974年
 日本のプルードン研究の層の厚さを示す編著。

●宇野弘蔵『経済原論』岩波書店、1977年
 戦後日本を代表するマルクス主義経済学者による代表作。

●大塚久雄『社会科学の方法―マルクスとウェーバー』岩波新書、1966年
 社会科学の入門書としても評価の高い古典。

●アルチュセール『マルクスのために』平凡社ライブラリー、1994年
 20世紀後半のマルクス解釈を代表する本。

(10)世紀転換期の政治思想(19-20世紀)

●安藤英治『マックス・ウェーバー研究』岩波書店、1966年
●山之内靖『マックス・ウェーバー入門』岩波新書、1997年
 新旧ウェーバー研究の代表2冊。

●佐々木毅編『自由と自由主義』東京大学出版会、1997年
 特に最後の佐々木論文が秀逸。

●和仁陽『教会・公法学・国家―初期カール・シュミットの公法学』東京大学出版会、1990年
 初期シュミット研究として高い評価を得る。


ヨーロッパの歴史を学ぶ

1 ガイドブック

●望田ほか編『西洋近現代史研究入門(第3版)』名古屋大学出版会、2006年
 各国史の研究文献をまとめた必携のハンドブック。とても便利。

●近藤和彦『イギリス史研究入門』山川出版、2010年
●佐藤 彰一、中野隆生編『フランス史研究入門』山川出版、2011年
●有賀夏紀、油井大三郎、紀平英作編『アメリカ史研究入門』山川出版、2009年
 各国別の研究状況をまとめたガイドブック。

●『史学雑誌』毎年6月号の「回顧と展望」
 毎年の各国別の研究論文を紹介する便利な特集号。

●金沢周作監修『論点・西洋史学』ミネルヴァ書房、2020年
 古代から現代までのヨーロッパ史研究の論点集。

2 入門的な歴史の読み物

●マクニール『世界史』中公文庫、2008年
 定評ある世界史。同じマクニールの『疫病と世界史』中公文庫、2007年も歴史の見方が変わる名著。

●ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史―文明の構造と人類の幸福』河出書房新社、2016年
 特に先史時代の解釈が面白い。新しい研究も踏まえた長大な人類史。

●ジャレット・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎』草思社文庫、2012年
 文明の盛衰を物質的な観点から説明する斬新な歴史書。

●フランシス・フクヤマ『政治の起源―人類以前からフランス革命まで』全2巻、講談社、2013年
 歴史の発展に関する壮大な仮説。読み物として面白い。

●アセモグル、ロビンソン『国家はんぜ衰退するのか』全2巻、早川書房、2013年
 なぜ一部の地域だけ持続的な経済発展が可能となったのか。読み物としても研究としても秀逸。

●アセモグル、ロビンソン『自由の命運』早川書房、2020年
 なぜ欧州などでのみ自由な体制が構築できたのか。歴史と世界を縦横無尽に比較。

3 代表的な通史

●ホブズボーム『市民革命と産業革命―二重革命の時代』岩波書店, 1986年
●ホブズボーム『資本の時代1848-1875年』全2巻、みすず書房、1981-1982年
●ホブズボーム『帝国の時代1875-1914年』全2巻、みすず書房、1993-1998年
 ホブズボームの三部作は最初に取り組むべき名著。

●ウォーラーステイン『近代世界システムT〜W』名古屋大学出版会、2013年
 世界システム論による壮大な世界史叙述。ヨーロッパ=中心と周縁を視野に入れた歴史は画期的。

●マイケル・マン『ソーシャルパワ―社会的な“力”の世界歴史1 先史からヨーロッパ文明の形成へ』NTT出版、2002年
●マイケル・マン『ソーシャルパワ―社会的な“力”の世界歴史2 階級と国民国家の「長い19世紀」』全2巻、NTT出版、2005年
 世界システム論を踏まえつつ、より多角的な力から歴史を再構成した通史。

●柴田三千夫『近代世界と民衆運動』岩波書店、2001年
 世界システム論と民衆運動を組み合わせた古典。

●ポメランツ『大分岐―中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』名古屋大学出版会、2015年
 なぜアジアではなくヨーロッパで産業化が起こったのか。グローバルヒストリーの先駆けとなった本。

3 20世紀のヨーロッパ史

●ホブズボーム『20世紀の歴史―極端な時代』全2巻、三省堂、1996年
 20世紀史でもホブズボームは最初に取り組むべき名著。

●ジェイムズ・ジョル『ヨーロッパ100年史』全2巻、みすず書房、1975-1976年
 1870年代から100年間の政治、経済、社会、文化を総覧する古典。

●トニー・ジャット 『ヨーロッパ戦後史』全2巻、みすず書房、2008年
 戦後史をまとめあげた記念碑的著作。

●平島健司、飯田芳弘 2010 『ヨーロッパ政治史(改定新版)』放送大学出版会
 近代以降のヨーロッパ政治史としてコンパクト。内容も最も優れている。

●網谷龍介ほか編 2013 『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版
 戦後のヨーロッパ政治史として現時点で最も優れる。

●益田肇『人びとのなかの冷戦世界』岩波書店、2021年
 市井の人々の想像から「冷戦とは何であったか」を問い直した異色の歴史。

3 各国別の通史

各国別の歴史として、山川出版の世界歴史大系が現時点で最も優れる。

●『世界歴史大系 イギリス史』全3巻

●『世界歴史体系 フランス史』全3巻

●『世界歴史大系 ドイツ史』全3巻

●『世界歴史大系 アメリカ史』全2巻

以下の旧シリーズもコンパクトでお勧め。

●大野真弓編『世界各国史 イギリス史』、井上幸治編『世界各国史 フランス』

●林健太郎編『世界各国史 ドイツ史』、角田文衛編『世界各国史 北欧史』

●清水博編『世界各国史 アメリカ史』(以上、山川出版)

いくつかの代表的な各国史の名著。

●フェルナン・ブローデル『地中海』藤原書店
 地中海の全体史を描ききり後世に大きな影響を与えた名著。『物質文明・経済・資本主義』も詳細な社会史のお手本。

●エリック・ウィリアムズ『資本主義と奴隷制』ちくま学芸文庫、2020年
 産業革命と奴隷制の関連を告発した不朽の名作。

●エドワード・トムスン『イングランド労働者階級の形成』青弓社、2003年
 19世紀イングランド労働運動を対象として社会史研究の端緒となった名著の完訳。

●P.J. ケイン、A.G. ホプキンズ『ジェントルマン資本主義の帝国』全2巻、名古屋大学出版会、1997年
 「ジェントルマン資本主義」というイギリス理解をもたらした本。

●ジョルジュ・ルフェーブル『1789年―フランス革命序論』岩波文庫、1998年
 4重の革命論を提唱した古典的な名著。