【第19回】一橋哲学・社会思想セミナー


【日 時】 2019年11月1日(金) 14:00-18:00

【場 所】 国立東キャンパス 第三研究館3階 研究会議室    アクセスマップ キャンパスマップ

講演者】  鈴木雄大(国際武道大学)

【講演タイトル】  

行為論の概観、そしてデイヴィドソン的な標準的行為論に対する有望な代案

【要旨】

行為を巡る哲学的問題は様々にあるが、その中心的なものは「行為とは何か」、「行為は単なる身体運動とはどう異なるか」という問題だろう。本講演の前半では、この行為論の中心問題に対する代表的な諸見解を概観していく。そこには、古典的な意志作用説、アンスコムの時代における初期の反因果説、デイヴィドソン的な因果説、行為者因果説、新意志作用説、J. ダンシーの理由論に基づく反因果説などが含まれる。
 以上を概観した上で、本講義の後半では、以上のどれにも属さない、かつ標準的とされるデイヴィドソン的な因果説に対して本講演者が有望だと考える、対案を展開する。議論は大きく三段階に分かれる。(1) いわゆる「錯覚論法」と同型の議論が行為に関しても認められ、それが標準的な行為論に支持を与えていると論じる。その上で、行為に関しても「選言説 (disjunctivism)」と呼びうる立場が可能であり、そこでは行為の重要な二つの要素、すなわち意図と身体運動が、原因と結果の関係を結ぶような分離したものではなく、融合したものであるという論を展開する。(2) 行為の選言説と相性のよい心の哲学における立場として、身体性 (embodiment) アプローチを取り上げ、それを行為論と接続する。(3) 以上の心の哲学における立場をもっともらしいものとする形而上学的な枠組みとして、出来事存在論に対比されたプロセス存在論と、ヒューム的因果論に対比された因果パワー説を、行為論に応用する。
 行為について考える枠組みとして、デイヴィドソン的な因果説以外にも有望な選択肢が開かれていることを、本講演で示したい。
 
参加費無料&事前申請不要ですので、お気軽にご参加ください。