太田美幸(おおた・みゆき)准教授

◆自己紹介

一橋大学社会学部卒業。民間企業に4年間勤務したのち、一橋大学大学院社会学研究科で教育社会学・比較発達社会史を学ぶ。鳥取大学生涯教育総合センター、立教大学文学部を経て、2013年度に一橋大学に着任。

教育制度の外で展開されるノンフォーマル教育を主な研究対象とし、ノンフォーマル教育の組織化過程に働く多様な力学と、その結果として形成される「学習社会」の構造を、比較研究・歴史研究によって解明することを目指しています。西洋生まれの近代学校教育は世界各地に普及していますが、その一方で、社会集団ごとに異なる人づくりの思想や様式も受け継がれています。学校教育はどのような文化を伝達してきたのか、それ以外の文化はどのように伝達・実践されてきたのかを問い、教育制度の外側で組織化されてきた人づくりの営みを可視化することで、教育という概念の幅広さと文化ヘゲモニーのありようが具体的な像をともなって把握できるのではないかと考えています。

◆E-mail

太田美幸い

◆主な研究領域

比較教育、ノンフォーマル教育、学習社会論

◆代表的な図書・論文

  • 『ヨーロッパ近代教育の葛藤―地球社会が求める教育システムへ』(関啓子との共編) 東信堂、2009年。
  • 『生涯学習社会のポリティクス―スウェーデン成人教育の歴史と構造』 新評論、2011年。
  • 『ノンフォーマル教育の可能性―リアルな生活に根ざす教育へ』(丸山英樹との共編) 新評論、2013年。

◆学部の主要担当科目

「教育の歴史」「比較教育学」「ゼミナール」

◆大学院の主要担当科目

「地球市民の形成」「教育の社会史」「多文化環境教育論」「ゼミナール」

◆研究プロジェクト紹介

(1)ノンフォーマル教育の理論的研究
フォーマル教育(国民教育制度としての近代学校)以外の教育についての研究です。近年、生涯学習論において、成人の学習参加を促進するために民間団体が提供するノンフォーマル教育に期待が寄せられています。一方、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ地域の多くでは、ノンフォーマル教育という用語は学校に通えない子どもたちを対象にNGOなどが実施する初等教育を指すものとしても用いられています。いずれにおいても実践者からはフォーマル教育とは異なる固有の価値が語られますが、ノンフォーマル教育に固有の価値と機能がいかなるものであるのかは必ずしも明確ではありません。現在、国内の複数の研究者とともに、多様な事例を比較検討し理論化を目指す共同研究をおこなっています。

(2)成人教育・生涯学習の政治社会学的研究
グローバルな社会現象としての成人教育・生涯学習の興隆を、社会学・政治学・文化研究などの知見に基づいて分析するものです。経済競争力を人材育成によって向上させることを目指して各国で成人教育が推進されていますが、元来ノンフォーマルな活動として展開されてきた成人の学習は、学校教育で伝達される知識体系を相対化し批判的思考を喚起する契機を含んでおり、社会変革の原動力にもなってきました。個人の学習は社会構造によっていかに方向づけられているのか。人々が生涯にわたって教育・学習を継続することによって社会はどのように変化するのか。グローバリゼーションの進展によって生じた新たな力学とはいかなるものか。こうした問いにもとづく実証的な研究の枠組みを新たな学習社会論として構築していくことを目指しています。

(3)社会教育福祉システム構築に関する比較研究
コミュニティの自治を土台に、社会教育・生涯学習と福祉を融合した社会教育福祉システムを構想する共同研究です。欧米・アジア11か国の比較研究をおこなっています。スウェーデンにおけるセツルメント運動および各種アソシエーションの調査を担当し、これらが担ってきた地域福祉の諸相と民衆教育との関連について分析しています。