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国際社会学へのロードマップ

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1 国際社会学とは何か?

ボーダーをめぐる多様な現象への着目

 社会学は、近代に出現した「社会」というものを多角的な視点で分析してきました。同時にいつしか 「社会」を対象として設定する際に、それが一定の輪郭をもつものと前提にしてきました。例えば、長く日本の社会学の課題は、日本の内部における不平等、そこで発生する集団の対立、その中での農村から大都市への移動、メディアの影響、といったものでした。しかし、国境を越えて動く人々の増大、国家が規制しきれない情報の移動、国境をたやすくすり抜けていく環境汚染とそれへの対応をもとめる社会運動等は、社会学の視野の広がりを、国民や国家といった単位を超えたものにすることを求めています。国際社会学は、一方で社会学の発展させてきたさまざまな分析の発想や道具を受け継ぎながら、他方でそれをこれまでの国民社会の枠組みをすり抜けていく現象に焦点をあわせていく学問です。
 国際社会学は、発展途上の若い学問です。従って、こうでなければならないという決まった学び方や取り組み方などは必ずしもありません。しかし、新しく可能性がある分だけ、形がはっきりせず、それへの入り方は、未知の領域に入るときにありがちなように皆さんを戸惑わせるものかもしれません。そのリスクを減らし、少しでも効率的に学んでいくための学びの地図を提供できればと思います。


国境での家族の再会の儀式: オバマ政権時代でもすでに多くの非正規移民たちがメキシコ国境の南に送還された。メキシコ国境のフェンスでは引き裂かれた家族が毎週集う。今後この数が拡大する場合、その両側の社会へのインパクトがどのようになるのかは国際社会学の大きな課題だ。

2 国際社会学の視野と研究領域

越境とボーダーの多様性

国際社会学の対象となるボーダーを越える現象は、実に多様です。ですが、国際社会学は、そのすべてを対象とするわけではありません。国際社会学が主にターゲットにするのは、次のような現象です。

―人間の移動とそれを規制する国家の境界
―国際的な企業・産業の移動・展開とローカル社会の変動
―国際移動に刺激された民族や人種にかかわる問題の変化
―国境をこえる企業やNGOなどの様々な組織の活動とそれに刺激された社会の反応
―国境をこえる情報の流れの構造とその影響
―EU、NAFTAなどの超国家統合とそれへの社会の反能
―グローバルな難民危機への各地域での対応の構造
しかし、国境を越えるプロセスは、これらに限りません。例えば、商品や資本の動きそれ自体や、それの経済的なコストや利益は、国際経済学が主に担当するでしょうし、国家間の交渉や対立それ自体は、国際政治学がこれを担当してきました。これらの分野は、むしろ確立した専門性を早くから持ってきていたのです。国際社会学は、これらの専門性をはみ出した、新しい活動の展開に対応してきたのです。ただし、経済が作り出す国際的な構造や、国家が打ち出す政策は、当然国境を越えた社会的なプロセスに影響を与えます。そのため、これらの分野で起こることの理解は、越境的な社会へのインパクトの理解の前提になります。その意味で、このような国際経済、国際政治、国際関係論及びこれらを含んだグローバルスタディーズと呼ばれる分野の基本的な発想、アプローチ、などを理解していくことも大切でしょう。

市民の支援による技能実習生の日本語学習(九州北部) 最近改定された入管法の議論の中で、大きな問題を指摘された技能実習生制度だが、改正による滞在の長期化への道に対応した日本語学習のチャン スは限られている。佐賀県の市民たちが学習意欲のある実習生に手弁当で日本語学習と生活面のサポートをしている。
 
北関東にある日系ブラジル人学校を訪問する国際社会学ゼミナールの学部生・大学院生日本の中にある外国人集住地帯をめぐることで、身近なところにある意外な社会のグローバル化とその問題が見えてくる。

 

3 地域研究、地域間比較の重要性

 国際社会学は、国民国家の境界を超える越境的な動きやネットワークの構造に注目し、それが引き起こす変動を分析することを特徴とする分野ですが、同時にそのような流れやつながりの連鎖を拘束する国民国家あるいは主権国家の規制がもつ影響力も重要な研究課題です。また、トランスナショナルな動きを規定しながらその影響により変動する広域地域や国家領土内の社会構造を分析することも研究に不可欠です。
 このため、国際社会学は、単に抽象的に地球的規模でのプロセスや変動を論じるのではなく、各地域における具体的な国民国家の構造やその相互連関の編成について検討し、地域的な歴的構造の文脈について検討したうえで、越境的な流れやつながりとの絡み合いを検討する必要があります。それゆえ、一橋大学の国際社会学では、創立以来、1)EU 統合を巡る変動が進行する広域ヨーロッパと周辺地域、2)経済統合の中で矛盾の噴出する南北アメリカ、3)経済的台頭の中でナショナリズムの高まる東アジア諸地域と日本、といった地域レベルでの人間、商品・資本、文化の移動とその規制の在り方、民族関係や国民国家への帰属様式の分析を重視して研究を進めてきました。
 小井土教授は、北米における国境を越えた競争と投資活動によって経済的統合が進行する一方 、地域内の再編成が引き起こす社会的な格差の拡大の中でメキシコなどラテンアメリカから越境的な人の動きが加速度的に増大してきたことを研究してきました。また、ヨーロッパにおいては、地域統合の進行する中でその南部に位置して移民が拡大してきたスペインにおける多様な移民とマジョリティの共生のための制度形成や国家とEU の2重の規制政策を分析してきました。
 また、新任教員の飯尾講師は、アメリカ合衆国における移民規制の厳格化が移民とその家族、そして移民コミュニティに及ぼす社会的影響について、移民受入国だけでなくその最大の移民送出国であるメキシコを含めて検討してきました。今後は、ポスト・トランプ期へと移行した米国の移民政策の行方に注視するとともに、オバマ政権のもとで開始された若年非正規移民に対する暫定的な権利付与が、かれらの社会移動に及ぼす影響について、移民の社会統合という観点から研究していきます。
 学生の皆さんには、社会学的な視点と国家を超えたプロセスを分析する視野を学びながら、各地域の個性や多様で複雑な編成を知ることは大きな挑戦ではありますが、卒業後現実の国際社会での経済・行政・市民レベルでの活動にかかわっていく際に、そのような広い視野と複合的なとらえ方を学部時代に身に着けることが人生 を通しての大きな基盤を作ることになると確信しています。

 
中南米難民たちへのメキシコ国境都市での支援 (2019 年8 月ティファナ市にて)
トランプ政権は中南米諸国の混乱・政治的抑圧によって北上した中南米諸国出身の難民たちの国境内での審査を拒否し、彼らはメキシコ国境で待機を余儀なくされている。教会やNPO は彼らへの支援機能を果たすが、状況は好転していない。

4 国際社会学を学ぶためのステップ

 こういった広がりと関連をもった国際社会学の学習のためには、次のようなことが必要な手順といえるでしょう。
1)語学への取り組み
特に 1、2 年生に望みたいのは、外国語の持続的な勉強です。高い英語力は、この分野では少なくとも必須と考えてください。読解はもとより、listening comprehension, speaking もできるだけ向上に心がけましょう。関心のある分野によって、当然第 2 外国語の修得も必要です。また、必修の英語コミュニケーションスキル科目で基礎力を高めた上で社会学部独自科目である「Topics in Social Sciences」や「Topics in Global Studies」を積極的に履修し、実践的でアカデミックな英語力を高める努力を継続して下さい。国際社会学のゼミナールでは基礎的な語学力を維持していることを前提にしています。専門書を読むに足る基本的な英語の読解力すら欠けているのでは、この分野で伸びていくことは望み薄です。
2)社会学の基礎を身に付ける
先にあげた国際社会学の多様な対象の分析には、社会学が蓄積してきた様々な道具が大変重要な役割を果たします。このためには、まず「社会学概論」・「社会科学概論Ⅰ・Ⅱ」でその全体の編成を知り、また「社会学理論」でその発展の歴史や様々な理論の系譜を知ることが重要です。さらに、国際社会学の特定の対象にアプローチしていくには、関連する他の専門分野が発展させてきた視点が役立ちます。例えば、国境を越えて移住する人々を理解するには、都市社会学の都市への移動研究や家族社会学の提 供する家族の変化についての理解が参考となるでしょう。
3)国際社会学の広がりを知り、発想を学ぶ
国際社会学の多様な分野の概観は、「国際社会学 I・II」を通じてなるべく 2 年次に行ってください。そして、3 年次以降は個別分野を「国際政治社会学」「国際社会と文化」「国際社会の課題」などで学習してください。
4)関連領域とリンクする
国際社会学と隣接する国際的視点での諸分野を社会学部に限らず学習するとともに、異文化間の関係を扱う人類学などの学問、そして特定地域での民族や文化の関係を扱う授業にも積極的に出ることで、道具箱を豊かにするとともに比較の視点を充実させていくことが必要でしょう。また、法学部の国際政 治理論や国際政治経済なども、マクロの国際的なフレームワークを理解して、国際社会学的な対象のバックグラウンドを知るのに有効でしょう。
5)留学に挑戦する・異文化の中で活動する
国際社会学は、国際政治学や国際関係論に比較して、社会的な現象の発生する現場での観察や聞き取りを重視します。そのためには、早く海外での直接の体験を持つことはもちろん望ましいでしょう。特に、大学時代に留学を通じて、たとえ大学という限られた社会的な場でも、直接他の社会の人々と交流をす ることは重要なことです。また、海外に行かなくても、国内での異文化に接することも貴重な体験です。国際社会学を専攻する学生には、大いに一橋大学の交換留学制度やほかの留学チャンスを利用して、海 外で社会学的な想像力を発展させてもらうことを期待していますし、ゼミの担当教員はそのようなチャ ンスのためのサポートを積極的にしていきます。また、できるだけ国内での異文化に触れる機会も設け ていくことを心がけます。学生自身も、積極的にキャンパスにいる留学生との交流を通じて、日常的な 感覚を磨くと同時に、学外でも外国人をサポートし、また交流する機会を増やしていってほしいと思います。

5 具体的な学年別の履修プラン(太枠の中が国際社会学の科目)

6 最近の卒業論文のテーマ

国際協力における連携がもたらす可能性―NGOの視点から
非正規滞在外国人に対する管理と在留特別許可―「迎えられるべき外国人」とはだれなのか?
イタリア北部地域における出移民・入移民組織とシティズンシップ
「ゲスト」としての留学生―オーストラリアの事例―

6 参考文献

(社会学の中から発想を学ぶには)
コリンズ、R. 2013 『 脱常識の社会学 第二版』岩波書店。
町村敬志 他(編)2019『社会学 新版』有斐閣。
(国際社会学領域)
梶田孝道(編)2005『新・国際社会学』名古屋大学出版会。
宮島・梶田・小倉・加納(監修)2002『講座 国際社会』(全7 巻)東京大学出版会。
小井土彰宏(編)2017『移民受入の国際社会学』名古屋大学出版会。
森千香子2016『排除と抵抗の郊外-フランス〈移民〉集住地域の形成と変容 』東京大学出版会。
吉野耕作1997『文化ナショナリズムの社会学』名古屋大学出版会。

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