学問の手引き



1 基礎的な考え方

2 基礎的な技術

3 学術的な探究の技術
3-1 レジュメの作成

3-2 書評

3-3 学術論文の書き方




1 基礎的な考え方

1-1. 「情報のための情報」と「問題の木の成長」

 以下の文章は、大学の講義や教員を利用しつつ、自分で勉強するために有益と思われることをメモ書き程度にまとめたものです。ほとんどは私の個人的な経験に基づくもので、大学や講座の公式の見解とは関係がありません。

(1)情報のための情報

 講義で学ぶことや、教科書に書いてあることは、本やノートやインターネットを参照すればいつでも手に入れることができます。大学で学ぶ知識のほとんどは、暗記する必要はないと思います。大学でまず学ぶべきは、以下のようなことではないでしょうか。

・知の全体の見取り図

 個別の知識がどう関連して、全体としてどういう体系を作っているのか。自分の知りたい情報はどこに分類されているか。新しい情報、今すぐに必要な情報は、すぐに古くなってしまいます。大学で学ぶ「最先端の議論」もやがて古くなったり、乗り越えられたりします。しかし、知の分類や体系はそう簡単には変わりません。

・知の臨界

 何が「すでに分かっていること」で、何が「まだ議論になっていること」(答えの出ていない問題)か。この境界線を知ることはきわめて重要です。

 答えの決まっている情報を知っただけで満足したり、まだ答えの出ていない問題を、答えが決まっているかのように錯覚したりしていないか。たとえば、「フランス革命はいつ起こったか」、「55年体制はいつ終わったか」などは、常識として知っておくに越したことはありませんが、重要度の低い知識です。「なぜ起こったのか」「なぜ終わったのか」については、複数の学説があり、それらの対立点を知ることの方がはるかに重要です。

・信頼できる情報

 何が信頼できる情報で、何が信頼できない情報か。たとえば、メディアやインターネットで流通している情報、twitterで流通している情報などが、すべてきちんとした根拠に基づいているとはかぎりません。

 自分が頼りにすることのできる情報は、どこにアクセスすれば、どのリファレンス(参考書、辞書、統計、図書館)を参照すれば手に入るのか。情報の信頼性をどう見分けるか。こうした「情報のための情報」をできるだけ多く知ることは、大学で学ぶ主要な目的のひとつと言えると思います。

(2)問題の木の成長

・問うに値いする問題とは何か

 学問では、答えが一つに決まる問題、すでに明らかになっている問題は、あまり重視されません。そうした問題は「情報のための情報」を知っていれば対応できるからです。

 学問において探究する価値のある問題とは、答えが一つに決まらないこと、立場が分かれていること、専門家の間で議論になっていることです。

 答えの決まっていない問題とは、何らかの形で現在の知のあり方、社会のあり方の根本や前提とかかわっているような問題です。言いかえれば、どの立場を選択するかで、その人のものの見方や社会とのかかわり方が規定されてしまうような問題です。たとえば、「よいデモクラシーとは何か」「戦争は絶対悪か」「市場の自由と平等のバランスをどうとるべきか」「消費税はどの程度の水準が望ましいのか」「大学で職業教育をどの程度重視すべきか」などなど。

 こうした問題をできるだけ多く発見すること。それらを探究し、少しでも探究を前に進めること。可能なら、何かひとつでも「新しい問題」を自分で発見すること。

 このように知的成長とは、問題に対する「答え」を知ることではなく、価値ある「問い」を数多く自分の中に抱え、「問題の木」を成長させることです(※)(※※)。

(※)科学哲学者カール・ポパーの言葉。ポパー『果てしなき探求』(ちくま学芸文庫)を参照。

(※※)哲学者のパートランド・ラッセルは次のように言っています。

「人間は、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、ますます運命に左右されることが少なくなる。」(ラッセル『幸福論』第11章)

・どう問題と取り組むか

 「問うに値いする問題」と取り組み、自分なりの立場を選択し、「新たな問い」を発見するためには、一定の学術的な調査・探究の手順を知ることが必要となります。「3 学術的な探究」を参照。


1-2. 特定の立場を選ぶ

 あらゆる問題について、暫定的にではあれ、自分なりの立場を選択し、「自分の意見」を持つ努力をすることは重要です。意見や立場は変わってもいっこうにかまいません。むしろ意見が変わることは、望ましいと言えると思います。過去の自分との一貫性にこだわる必要はありません。

 上述のように、社会科学で扱われている問題には、単一の正しい答えは存在しません。「正解」を探すのではなく、一定の手続きを用いて、自分なりの立場を選択し、それを一定の理屈で説明できるようになることが、社会科学を学ぶ目的のひとつだと思います(※)。

(※)この点について詳しく知りたければ、社会科学の古典であるマックス・ウェーバー『職業としての学問』(岩波文庫)を参照してください。

参考リンク: 名古屋大学スタディチップス。大学での学び方、基本的な考え方を分かりやすく説明している。教員用に「成長するチップス先生」というページも公開されており、教員の教育能力を判断する一定の基準になる。


2 基礎的な技術

2-1. 本の選別

 人が一生のうちで読める本には限りがあります。大学を卒業して職に就いたら、読める本はますます限定されます。限られた時間の中でよい本と出会うためには、「読むに値いする本」と「読むに値いしない本」を区別する目を養うことが必要です。

 以下では、その区別のための基本的な技術をご紹介します。

(1)本を判別する目を養う

 「読むに値いする本」とは、「知的な見取り図を与えてくれる本」と「まだ答えのない問題を探究している本」です。まずは「見取り図を与えてくれる本」を読むことをおすすめします。一般に「名著」「古典」と呼ばれているものは、どちらかに相当します。

 では、読むに値いする「名著」をどのようにして知ればよいのでしょうか。

・大きな本屋を訪ねる

 小説やハウツー本しか置いていない小さな本屋、教科書しか置いていない大学生協などに行くだけでは、残念ながら「本を識別する目」は養われません。できるだけ大きな本屋を定期的に訪ねることをおすすめします。

 本屋でやることは、関心のある分野の本を手に取ってみること、よく見かける本をチェックし、著者や題名を覚えること、古い本なのに新刊書店においてある本をチェックすることです。

 本屋によって置いてある本の種類が異なります。できれば、複数の大きな本屋を定期的に訪ねることをおすすめします。たとえば、新宿の紀伊國屋書店、お茶の水の三省堂書店、池袋のジュンク堂書店、東京の八重洲ブックセンターなど。

・古本屋を訪ねる

 学術的な本を扱っている古本屋は、貴重な情報源です。ある程度「目利き」の人がやっている古本屋には、その分野の「古典」「名著」がたくさん置いてあります。

 まずはこれらの本を立ち読みし、複数の古本屋で値段を比較し、徐々にその分野の「読むべき本」のタイトル、著者などを覚えていくことが出発点です。やがて自分なりの「知の地図」ができてくるはずです。

 文化的に優れた地域には、必ず古本屋街があります。東京でいえば、神保町、早稲田(高田馬場)など。

(2)本の選別に役立つ情報

・名著を紹介する本

 「〜の名著」「〜の100冊」などのタイトルがついた本は、特に初学者にとって有益ですので、手元において参照する価値があります。(佐々木毅『現代政治学の名著』中公新書、岩崎稔ほか編『戦後思想の名著50』平凡社など。)

・本の雑誌と本の新聞

 新しく発刊される本は膨大な量にのぼり、それらを自力でチェックすることは不可能です。以下の手段を用いることで、「読むに値いする本」をより少ない労力で知ることができます。

a. 毎週発刊される『週刊読書人』『週刊図書新聞』という書評新聞をチェックする。これらの新聞には、半年に一回「上半期(下半期)の収穫」と題する特集号もあります。

b. 毎週日曜の『朝日新聞』、『読売新聞』、『毎日新聞』、『日経新聞』の書評欄、夕刊の論壇時評欄などをチェックする。

c. 学会誌の書評欄をチェックする。政治学なら『年報政治学』、『国際政治』、政治・社会思想なら『政治思想研究』、『社会思想史研究』、社会学なら『社会学評論』、歴史学なら毎年6月の『史学雑誌』の特集「〜年の回顧と展望」など。
 学会誌の書評は、仲間内で誉めあっているだけのものも少なくないので、すべて信用できるわけではありませんが、厳しい批評がなされたり、広い視野から位置づけがなされている場合もあり、ある程度の参考にはなります。

d. 出版社の月報『みすず』『UP』などには、毎年1月号に文化人による読書案内や推薦本の特集があります。

(3)新刊本について

 読書にあてられる時間のうち、古典・名著に多くを割いた方が、結果的には効率がよいと思います。ただし「読むに値いする本」を見分ける目を養うためには、ある程度新刊本にも接する必要があります。

 私は、新刊本のほとんどは、本屋での立ち読みですませてかまわないと思います。自分の関心に関係する本棚に行き、目に付いた本の目次、序論、結論、著者の経歴をチェックします。

 目次を見て、構成が混乱しているもの、一貫性のないもの、本文の改行が多いもの、脚注の付いていないもの、脚注が極端に少ないもの、他の人の議論にまったく触れず、主観的印象を述べているだけだと思われるもの、情報源が不明であるものは、読まなくてもよいと思います。これらはあっという間に忘れ去られ、多くの場合、あとに何も残さない本だからです。

 タイトルと中身がずれている本も、信用できないものがほとんどなので、読まなくてよいと思います。

 著者の経歴を見て、特定の党派や立場に属していると推測できる場合は、同じ分野の議論のごく一部を代表しているにすぎないことに留意します。

 情報が整然としているもの、図表や年表が付いているもの、情報量が多いもの、脚注がしっかり付いているもの、誰かが勧めていたもの、有名なもの、あたらしく発刊(再刊)された古典・名著は、目に留まったら、購入しておいて損はないと思います。序論などで同じ分野の全体の議論状況をきちんと整理し、自分の立場を位置づけている本は、おそらく信頼できる価値の高い本です。これらは手元に置いておけば、今読まなくとも後で読む可能性が高くなります。


2-2. 情報の蓄積と整理

(1)アウトプットの重要性

 本を読んだり、よい言葉に出会ったりしたときには、その情報を自分の手でアウトプット(書き出すこと)し、整理・蓄積していくことをおすすめします。ある程度の量の本を読んでいくと、以前読んだ本の内容はどんどん忘れてしまうことに気がつくと思います。自分がインプットした情報は、アウトプットしなければ、いずれ消失してしまいます。知的な情報を整理し、蓄積するための自分なりの方法をはやく身につけておくことは、長い目で見ると非常に重要なことです。

※twitterなどは情報の「フロー」であって「ストック」ではありません。

(2)情報整理のツールを使う

・コンピューターを使う

 自分の作成したレポート、読書ノート、本のレジュメ、メモ、ネット上の情報、日ごろ思い浮かんだアイディアなどを、一つのコンピューターに蓄積していく。コンピュータを買い換えてもこれらをコピーして蓄積しつづける。要するに、自分なりのデータベースを構築する。この作業に早く着手すればするほど、「ストック」として残るものが多くなり、消失する情報が少なくなります。

 一台のコンピューターの代わりにネット上のクラウドを用いても構いません。大事なことは、一カ所にすべての情報を集約し、いつでも検索できるようにしておくことです。

 講義のプリントやゼミで使ったレジュメ、手書きのメモなど、データ化されない情報も数多くあります。これらはScan Snapなどを用いてPDFにしておくことが有益です。コンピューターとスキャン装置を早い段階で購入することは、自分なりのデータベースを構築するための初期投資として、けっして無駄にならないのではないかと思います。

・情報カードを使う

 コンピューターが一般化するまで、日本では「大学カード」と呼ばれるB6版のカードを用いて情報整理が行われてきました。以下はカードを用いた発想法、情報管理法の古典で、その考え方は今日でも参考になるところがあります。一冊目はビジネスでも使われるKJ法の解説、二冊目は人類学者による発想法、三冊目はジャーナリストによる情報整理法。

○川喜多二郎『発想法―創造性開発のために』中公新書、1967年

○梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波新書、1969年

○立花隆『「知」のソフトウェア』講談社現代新書、1984年

 野口氏の本は「押し出しファイル方式」による書類整理のノウハウ本。立花氏の本は知の巨人と称される読書家による読書論。

○野口悠紀雄『「超」整理法―情報検索と発想の新システム』中公新書、1993年

○立花隆『ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論』文春文庫、1999年

(3)本の読み方

 本の読み方には、「情報として読む」方法と、「古典として読む」方法があります。どちらも重要であり、対象となる本によって使い分ける必要があります。

※本の読み方については、内田義彦『読書と社会科学』岩波新書、1985年を参照。古い本ですが、古典の読み方については、渡部昇一『知的生活の方法』講談社現代新書、1976年も参考になります。

 たとえば、内田は「古典としての読み方」について、次のように述べています。

「新しい情報を得るという意味では役立たないかもしれないが、情報を見る眼の構造を変え、情報の受けとり方、何がそもそも有益な情報か、有益なるものの考え方、求め方を――生き方をも含めて――変える。変えると言って悪ければ新しくする。新奇な情報は得られなくても、古くから知っていたはずのことがにわかに新鮮な風景として身を囲み、せまってくる、というような「読み」があるわけです。」(『読書と社会科学』12-13頁)

 およその目安は、本屋での立ち読み7割、情報としての読書2割、古典としての精読1割くらいではないでしょうか。

 「情報として読む」場合には、気になったところだけを抜粋し、カードやコンピューターに蓄積します。

 「古典として読む」場合は、細かく線を引いたり、要所要所で要約、感想を本の中に書き込み、一度読んだあとで詳しいレジュメを作成し、それに対する疑問点、論点などを書き出す。こうした作業をつうじて、自分なりの「問題の木」を作りあげていくことができます。


2-3. 生活のオーガナイズ

(1)勉強場所を確保する

 すでにご承知かと思いますが、「ここに来れば本を読む/勉強できる」という場所を確保し、儀式のようにルーティーン化しておけば、スムーズに読書などに入れるようになります。

「ほとんどの学生は、勉強のための決まった時間だけでなく、決まった場所を持つことが有益であることを理解している。勉強と知的な作業のために、いつも決まった机と椅子を使いなさい。この場所は、そのうち勉強を意味することになるであろう。決まった時間、決まった場所に座ることは、自動的にあなたにとって作業や勉強への準備となるであろう。」(A. W. コーンハウザー『大学で勉強する方法』玉川大学出版部、1995年、36頁)

(2)環境を作る

 とりわけ若い時代の知的成長は、個人の素質よりも、周囲の環境に決定的に影響されます。知的に優れた環境に身を置くこと。知的に優れた人とつきあうこと。日常的に、最近読んだ本、見た映画・芸術、政治的・社会的問題について議論できる関係を作っておくこと。

 こうした環境を整えるためには、読書会がきわめて有益です。自分で読書会を企画し、貼り紙を張って広く参加者を募集することで、知的に優れた人と出会える可能性が高くなります(※)。

(※)知的に優れた人の自伝を読むと、若いころの勉強の仕方を知ることができて参考になります。いくつか例を挙げておきます。ミル『ミル自伝』、シュリーマン『古代への情熱』、湯川秀樹『旅人』、福澤諭吉『福翁自伝』、大杉栄『自叙伝』、田中美知太郎『時代と私』、北杜夫『どくとるマンボウ青春記』など。

参考リンク: 橋本努(北海道大学)氏の「学生生活のヒント」。橋本氏は『学問の技法』(ちくま新書、2013年)という本も出しています。


3 学術的な探究の技術

 以下では、学術論文を書けるようになるための手順を、段階を追って略述します。

3-1. レジュメの作成

(1)レジュメとは何か

 レジュメとは、対象となる本や論文の構成と要点を的確にまとめ、それにたいする疑問点・論点を提示したものです。レジュメを作成し、口頭で報告することは、学術的な文章を予断を入れずに正確に理解し、自分の言葉で説明するための訓練に相当します。

(2)レジュメの作り方

・図式化

 レジュメで最も重要なことは、文献の構成を図式化(チャート化)し、明示することです。全体の論理構造がひと目で分かるような工夫が必要になります。

 例 矢印、太字、四角で囲む、波線など

 文献の構成が一貫していなかったり、見出しが付いていなかった場合は、自分で再構成したり、よりよい「見出し」を付けたりすることも必要になります。

 例 新聞の紙面: 大見出し → 小見出し → 概要 → 本文

・箇条書き

 レジュメの基本は、文章ではなく箇条書き(体言止め)です。直接の引用は全体のキーワード(と核心的な文章)のみにとどめ、できるかぎり自分なりにまとめなおします。

・ページ数をつける

 自分用のレジュメであれ、報告用のレジュメであれ、適時ページ数を入れて、文献のどの部分を要約したのかを明示しておくことをおすすめします。自分で論文を執筆するさい、何ページの要約であったのかがレジュメに書いていないと、もう一度本を読みなおすことになってしまい、大変非効率です。

・論点の提示

 それ以外に注意すべき点として、文献の内容と、自分の意見や論点を区別する、という点があります。疑問点や論点は、要約とは区別し、最後にまとめるようにします。

 なぜレジュメの最後に論点を入れる必要があるのでしょうか。文献の内容を理解するだけでなく、著者の主張をより発展させ、現代の問題と結びつけたり、他の本の議論と対比したり、自分の立場から批評を加えたりすることは、将来自分なりの「リサーチ・クエスチョン」を立てるための出発点となるからです。


3-2. 書評

 書評とは、対象となる本の内容を正確に要約し、おなじテーマの研究史の中に位置づけ、最後に自分の視点から批評を加えた文章を指します。書評を書くことは、学術論文を書くための最初の訓練に相当します。

 書評の形式はおよそ以下のとおりです。(学術的な書評のサンプルを知るためには、学会誌の書評欄、『週刊読書人』、『週刊図書新聞』などをご参照ください。)

(1)導入(1〜2割)

 本のテーマ、その背景、著者の紹介など。専門的な書評の場合その分野の一般的な議論状況を示す。

 例 「近年〜の分野では、○○論と××論が主たるアプローチを占めてきた。本書では、△△論というアプローチを用いてこの問題に取り組み、〜〜を明らかにしようとしている。」

(2)構成と要約(6割)

・全体の構成を示す。

 例 「本書は三つの部分から構成されている。第一部では〜〜を論じ、第二部では〜〜を検討した上で、第三部で〜〜を展開している。」

・次に各部分の要約を行なう。引用ではなく自分の言葉で説明しなおす。

 例 「第一部では、筆者は次の二点を論じている。第一に…、第二に…。」

・内容を要約するだけでなく、どういう社会科学的な理論を用いているのか、どういう資料に依拠しているのかをまとめればさらによい。

(3)批評(2〜3割)

 本書の意義を要約し、疑問点や対案を提示する。「感想」を書いたり、「今後の活躍に期待したい」などの漠然とした印象を書くのではなく、本書の内容をさらに発展させるための具体的な批評や提案を行なう。

 例 「評者の感じた疑問点を二点指摘する。」 「本書の内容を発展させるには、次の点に関するさらなる考察(検証)が必要である。」「このテーマにかんして、○○は著者と逆の議論を展開しているが、本書では十分な論駁がなされていない。」 「著者は〜〜の資料に依拠しているが、重要な△△の資料を参照しておらず、データに偏りがある。」


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