2017年度 大学院「社会科学研究の基礎W」



【対象】


修士課程の大学院生向けの選択必修科目。

【目的と概要】

社会科学の代表的な古典や文献を対象としつつ、教員のレクチャーを組み合わせ、社会科学研究に必要な理論および方法の基礎を習得することを目指す。特に、定性的・定量的研究と理論研究をどのように架橋するのかに重点を置く。

講義では、まず「社会科学の方法」として、因果的推論の方法を扱った代表的な教科書のうち、定量的研究に力点を置く教科書、ケース・スタディに力点を置く教科書を読み比べ、それぞれの方法の強みと弱みについて議論する。次に、資本主義論、国家論、社会運動論を扱った代表的な古典や研究を取りあげ、その理論仮説、検証方法の妥当性について議論する。最後に、事例として担当者の専門である政治経済学(福祉国家論)を取り上げ、近年までの研究動向、方法について紹介し、討議する。

この講義の目的は、経験的研究(印刷資料やフィールドワークを用いた実証的な研究)や理論研究を行っている大学院生にたいして、どのように仮説を立てればよいか、どのような手順や方法にしたがって仮説を検証するか、どのようにリサーチ・デザインを組み立てればよいかについて、大学院以降の研究で必要な基準を示すことである。

【授業計画】

以下のテクストの一部を抜粋する。現時点の予定であり、開講までに若干の変更の可能性がある。

1 社会科学の方法

@久米『原因を推論する』
 雑誌『リヴァイアサン』所収の書評

Aジョージ、ベネット『社会科学のケース・スタディ』

2 資本主義論

Bハーヴェイ『新自由主義』

Cホール、ソスキス『資本主義の多様性』

D教員レクチャー:資本主義論の現在

3 国家論

Eウォーラーステイン『近代世界システム』

Fエスピン-アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』

Gアセモグル、ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』

H教員レクチャー:国家論の現在

4 社会運動論

Iメルッチ『現在に生きる遊牧民』

Jタロー『社会運動の力』

K教員レクチャー:社会運動論の現在

5 事例レクチャー:福祉国家論の研究動向

【授業外の学習】

各回で扱う資料の読解と、指定された問いに対する準備。(例えば、「このテクストの仮説はどこに問題があるか。よりよい検証を行うためにはどのように仮説を修正する必要があるか」など。)

【成績評価の方法と基準】


毎回の出席と討議への参加 40%
輪読本の要約・発表 30%
学期末までのリサーチ・デザイン(自分の研究テーマに関する仮説、検証方法を示したA42枚以上のペーパー)提出 30%

以上の合計による絶対評価とする。