2017年度学部ゼミナール


【ゼミの研究分野・領域、研究テーマなど】

政治学、政治理論、比較政治経済学

【ゼミの概要と目的】

1 概要

・このゼミで扱う分野は、政治学、比較政治経済学、政治理論です。

・具体的には以下のような問いを考えます。グローバル化の進む時代にふさわしい雇用・社会保障・教育・家族政策とはどのような政策か。それはいかなる政治的条件のもとで実現できるのか。先進国のあいだでどのような違いが見いだせるか。なぜ日本では政策転換が遅れているのか。市場の自由と国家による再分配のバランスはどうあるべきか。「格差」はすべての国で広がっているのか。望ましい民主主義の形とはどのようなものか。先進国でポピュリズム的動きが強まっているのはなぜか。

・外交・国際関係よりも、グローバル化によって各国の国内政治や政策がいかに変容しているのかを扱います。それらを欧米諸国との比較から、かつ規範的な理論も参照しつつ考察することに主眼が置かれます。

・個別政策の知識を深めるというよりも、日本をはじめとする先進諸国の進むべき方向について、自分なりの大きなビジョンを固め、それを実現するための道筋や戦略を具体的に考えられるようになることが目標です。

2 進め方

・輪読とディスカッション、グループワークが中心です。輪読では、毎回発表者を決め、それ以外の参加者はコメントペーパーを用意し、司会者が中心となって疑問点、論点を整理し、ディスカッションを行います。グループワークでは、2〜3人で関心を共有するテーマを選び、先行研究を踏まえて自分たちの立場を主張したうえで、全員で議論します。

・月1回は4年生と合同で時事問題に関するディスカッションも行います。

3 ゼミの予定

・3年夏学期
 政治学・政治経済学・政治理論、日本と欧米諸国の現状について、幅広く基礎知識を習得することを目指します。教科書、新書から出発し、徐々に専門書へと進んでいきます。夏合宿では、学習のまとめとなるグループワークを行い、希望に応じてフィールドワークを組み合わせます。

・3年冬学期
 より専門的な英語文献を輪読します。その目的は、英語での情報収集に慣れるとともに、学術論文の作成法を身につけることです。11月には筑波大学との合同ゼミを行います。これらと並行して、複数のグループワークをつうじて現代政治の諸問題について理解を深めます。学期末には卒論の研究テーマを絞り込み、卒論研究計画書を提出していただきます。

・4年
 輪読と卒論執筆を組み合わせます。輪読では、3年生と合同で専門書の読解を行います。卒論執筆では、個人指導(チュートリアル)と報告をくり返すことで、学術論文レベルの卒業論文を仕上げていきます。なお過去の卒論の一部は担当者のウェブサイトに公開されています(http://www.soc.hit-u.ac.jp/~takujit/course-of-faculty/dissertation.html)。

【使用するテキストなど】

参加者と相談して決定します。現時点で以下のような本を考えています。

1 先進国の政治の現状
飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書、2007年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2014年
遠藤乾『欧州複合危機―苦悩するEU、揺れる世界』中公新書、2016年

2 政治学の理論と方法
久米郁男『原因を推論する―政治分析方法論のすすめ』有斐閣、2013年
加藤淳子ほか『政治学の方法』有斐閣アルマ、2014年
川崎修、杉田敦編『現代政治理論(新版)』有斐閣アルマ、2012年

3 トピック別の検討
斎藤純一『不平等を考える―政治理論入門』ちくま新書、2017年
ジョナサン・ウルフ『「正しい政策」がないならどうすべきか―政策のための哲学』勁草書房、2016年
柴田悠『子育て支援が日本を救う』勁草書房、2016年
曽我謙吾『現代日本の官僚制』東京大学出版会、2016年
中澤渉『なぜ日本の公教育費は少ないのか』勁草書房、2014年
田中拓道『福祉政治史―格差に抗するデモクラシー』勁草書房、2017年

冬学期は英語文献を輪読します。テクストは未定ですが、2015年度、2016年度は次のようなテクストを読みました。
Pablo Beramendi et al., The Politics of Advanced Capitalism, Cambridge University Press, 2015.
Richard S. Katz, Peter Mair, "The Cartel Party Thesis: A Restatement", Perspectives on Politics, vol. 7, no. 4, 2009, pp. 753-766.
Wounter Van Der Brug et al., "Why Some Anti-Immigrant Parties Fail and Others Succeed: A Two-Step Model of Aggregate Electoral Support", Comparative Political Studies, vol. 38, no. 5, 2005, pp. 537-573.

【卒業論文タイトル事例】

「社会的企業の法人格化を可能にする条件―日伊英の政治過程の比較」
「「改革派」首長の「改革」はなぜ頓挫したのか?―地域政党の分裂原因の検証」
「人間存在の平等―ポスト世俗化時代の規範の正当性根拠」
「世代間格差是正への政策転換の可能性――日英の党組織統一の比較から」
「政治主導の条件――議院内閣制を機能させるために」
「政党組織と政党システム―1990年代以降の日本の政党システム」
「1980年代〜2000年代の労働政策過程の変容―トップダウン型の政策過程を左右するのは誰か」
「日本の男女共同参画はなぜ前進しないのか―資源動員論による女性運動分析」
「地方分権改革を規定する政治過程要因の国際比較分析−1980年代以降の日本・欧州における改革過程の検証」
「ユルゲン・ハーバーマスの討議倫理学―道徳的普遍主義と道徳的相対主義の止揚の成否」
など。

過去の卒論の一部は、「卒論秀作」のページで全文を公開しています。

【選考方法、学生への要望・注意、など】

 志望理由書と面談によります。志望理由書は、これまで勉強してきたこと、ゼミで研究したいことをA4一枚程度にまとめ、面談前日までに教員のメールアドレスにお送りください。面談は教員と4年ゼミ生代表によって行います。

 ゼミでは、教員―学生の関係よりも、学生同士の自由な議論と学びあいの方が重要だと考えています。そうした意欲を持ち、できるだけ多様な価値観やバックグラウンドを持つ方に参加していただければと思っています。