【第八回】一橋哲学・社会思想セミナー



【招待講演者】

北村直彰 学術振興会PD(京都大学)

【講演タイトル】

「現代形而上学の方法論と概念的基盤:実在論的観点から」

【日時・場所】

2016年10月21日(金)14:40~

国立東キャンパス 第3研究館 3F 研究会議室 アクセスマップ キャンパスマップ

【概要】

現代の分析哲学における形而上学研究があつかう主題はじつに多様だが、近年の研究において顕著なひとつの動向として、形而上学の目的・方法や、形而上学的な問いと論争それ自体の身分にかんする考察に大きな重点が置かれる、ということが挙げられる。現代の形而上学研究のあり方をあらためて問い直そうとする議論が、いわゆる分析形而上学の内外を問わずさまざまな観点から提示され、「メタ形而上学」と呼ばれる領域を形作っている。本講演は、多岐にわたるメタ形而上学的諸問題のうち、とりわけ伝統的なタイプの実在論的形而上学——私たちの心と独立な世界の基礎的特徴の探究——の可能性に深く関わるいくつかのトピックに焦点をあて、論争の状況を紹介するとともに、今後の探究が進むべき方向を提案することを目的とする。とくに、主として以下の(互いに関連する)論点をとりあげる。

(1)実在論の可能性:形而上学が「世界の基礎的特徴についての探究」であるとはそもそもどのような意味なのか。また、はたしてそれは可能なのか。結局のところ形而上学は、私たちと独立の世界それ自体ではなく、世界についての私たちのさまざまな語り方や、そこで用いられる種々の一般的概念の特徴・有用性にかんする探究でしかありえないのではないか。
(2)形而上学的基礎づけとは何か:形而上学的探究の概念的道具立てとして近年注目されている「基礎づけ(grounding)」とはどのような意義をもつものなのか。基礎づけ、およびそれに関連する諸概念は、形而上学的探究でこれまで用いられてきた種々の様相的概念(付随性など)とどのような関係にあるのか。
(3)形而上学と科学の関係:形而上学の目的・方法は、科学のそれとどのような関係にあるのか。科学とは独立の(あるいは科学に先立つ)自律的な分野として形而上学を捉えることはできるのか。できるとすれば、その自律性はどの程度のものなのか。

また、こうした論点にかんする検討を通じて、メタ形而上学的探究そのもののあり方や、より一般的なメタ哲学的探究におけるメタ形而上学の位置についても考察する。