社会学研究科紹介

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総合政策研究分野

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1 総合政策研究分野へようこそ

 総合政策研究分野では、主に労働政策・医療政策・社会福祉政策・社会保障政策・コミュニティ政策の諸分野およびこれらを横断する課題に関する社会科学的研究を行っています。
 今日の日本社会は、少子化・高齢化の進展、経済停滞、地域社会の弱体化などの結果として、これまでに経験したことのない新たな局面に立ち至っています。このような状況において真に必要とされるのは、対症療法的改善策や、諸外国の経験の無批判な導入ではなく、政策を導く「羅針盤」としての展望的知識です。そして、このような知識の産出こそ、本来政策の社会科学に求められているものであり、当研究分野が目指しているものです。
 そして、今日我々の社会が直面する問題は、ある特定の専門分野を超えた総合的な性格を帯びていることから、研究者には一つの分野に精通することと同時に、諸分野を越境する識見も必要となります。そこで、当研究分野では、指導教員制度や、分野教員全員による修士論文指導制度(リサーチワークショップ)、政策の社会科学研究のための土台作りに資するような講義・演習の設定を通じて、学生のニーズに対応すべく教育体制の整備に努めています。

2 科学的アプローチの重要性

 当研究分野では、政策に求められる展望的知識を生み出す政策の社会科学を標榜していますが、そこから派生する特徴として、科学的アプローチに対する姿勢があります。以下、この点について、二点述べておきます。
 第一には、当研究分野が、政策提案に対するテクニカルなアプローチよりも、政策課題の根源にある事象の本質や社会構造の存在を突き止めるという、科学的=記述的アプローチを重視しているということです。もちろん、政策の社会科学を志すにあたって、何らかの社会問題や社会的課題を解決したいという実践的動機が存在していることは自然なことです。だが、その動機を、問題の現象についての深い洞察のないまま解決法や政策提案へと結びつけようとしても、表層的な提案に留まるしかありません。対象たる現象をとことん深く洞察し記述することで、究極的に最も有効な政策提案に到達できると私たちは考えています。
 第二には、科学的アプローチによって、特定のイデオロギーや思想に囚われ、結果として誤った政策立案に固執してしまうことを避けるという姿勢を、当研究分野が重視しているということです。科学的アプローチは、自分の世界観からすれば、認めたくない現象であっても、それが事実であるなら、事実として自分の世界観に取り込むことを要求します。このような研究姿勢には、絶えず自らの思い込みや独善を事実に基づき正すことによって、自分の世界観を磨き上げることができると同時に、誤った事実認識に基づく政策提案の危険を排除することができるという二つの大きな効果があります。ときに、自らの信念を実現する方法を研究しようとして大学院に進学してくる人がいますが、本研究分野の教員は、その方法の研究の前に、その人の「信念」がどのような事実に立脚しているのかを検証することを求めます。それは、上に述べた本研究分野の科学的アプローチに関する基本的姿勢に由来しています。

3 修士課程の目的

 当研究分野の修士課程の主要な目的は、修士論文作成のプロセスを通じて知識を生み出すことおよびその意義を理解することです。
 修士論文は、既存の知識を吸収したり、評価したりするだけでは書き上げることはできません。そこでは、何らかの知識を生み出すということが求められます。知識を生み出すということがいかなることなのかを知ることが、学生が受ける最大の利益であるかもしれません。総合政策研究分野における修士課程プログラムには、講義・セミナー・研究会などがありますが、それらはいずれも、学生が知識を生み出す存在となるための活動を、さまざまな角度から支援することを目的として提供されています。

4 修士課程における2年間のイメージ

【修士課程1年】
 総合政策研究分野の院生の多くは、修士課程の最初の1年を、修士論文にふさわしい問いを見出すことに費やしています。本研究科に進学するにあたって、研究計画の提出が義務づけられていますが、この研究計画がそのまま修士論文へと結びつく学生は少ないのが実態です。実際、「良い問い」を見つけることが、修士論文作成において一番の難所であり、教員の側としても、それを修士課程に進学した時点でクリアできることを求めてはいません。教員たちは、最初の1年間でじっくり専門分野についての見識を高めてもらうことで、修士論文で、政策の社会科学にとってより意味のある「良い問い」を発見し、それに本格的に取り組むことができるようになってもらいたいと望んでいます。
 指導教員の主催する講義やゼミ(副ゼミも含め)を中心として、幅広く勉強するとよいと思います。いずれにしても、政策の社会科学においては、指導教員や当研究分野教員だけが教えを請うべき「先生」ではありません。自分の専門分野において、なにがしかの大切なことを知っている人はすべて「先生」と心得て、教えを受けるべきです。その際、指導教員や当研究分野教員への気兼ねは一切無用です。
 なお、当研究分野では、修士課程1年生にも、2年生向けのリサーチワークショップ計4回への参加を強く奨励しています。それによって、修士課程1年が終了した段階で、求められる修士論文の水準や、大まかなスケジュールについて理解することができると思います。

【修士課程2年】
 2年生向けのリサーチワークショップは、修士2年生全員に義務づけられているもので、これに参加しなければ、修士論文を提出することはできません。
 当研究分野では、1)当研究分野所属教員全員による指導の実現、2)積極的な修士論文作成への動機付け、3)「壁」に当たっている修士2年生に対する支援の観点から、独自の方式を採用しています。当研究分野の院生にとって特に目標となるのが例年6月下旬に実施される第2回リサーチワークショップであり、このときまでに、修士論文にふさわしいリサーチクエスチョンの提示が求められます。
 順調にゆけば、9月の第3回リサーチワークショップを経て、1月に修士論文提出の運びとなります。2月に開催される第4回リサーチワークショップは、提出された修士論文の発表の場であると同時に、修士最終試験の場でもあります。
 当研究分野への進学を志す方々には、くれぐれも踏まえておいていただきたいことがあります。それは、多くの場合、修士論文がただちに革新的な研究成果となることはないということです。院生たちには、優れた研究成果を生み出そうという野心をもって挑んでいただきたいのですが、本研究分野教員がより現実的に期待しているのは、知識を生み出すことを経験するとともにその意義を理解することです。知識を生み出すことの意義を良く理解することができた学生は、博士後期課程に進んだ場合、修士論文における視野をより拡げて、真に革新的な研究へと進むことが期待できますし、修士課程で卒業した場合でも、それぞれのキャリアの中で、知識を生み出しながら仕事のできる創造的な人材となることが期待できます。その意味からいえば、一番もったいないのは、修士号を取得することそれ自体を目標として、修士論文の審査を最低限の努力でクリアしようとすることかもしれません。

5 修士論文のテーマについて

 当研究分野の学生による修士論文のテーマは社会学研究科のホームページを参照ください。実態調査(インタビューなどによる質的調査とアンケートなどによる量的調査)で自ら収集したオリジナルデータを活用した論文が多いのが、これまでの特徴です。実態調査の指導は主として主ゼミナールの指導教員によって行われています。もちろん、文献研究を中心に理論系の研究や歴史研究に基づいて修士論文を執筆した学生もいます。
〈最近の修士論文テーマ〉
・老人処遇を規定する社会観念の変動:1945年~1968年における実証研究
・介護労働者の賃金の実態及び人事労務管理の対応
・正社員の年次有給休暇取得行動:仕事特性・個人特性と年休制度利用
・日本における高齢者の自殺
・IT技術者の「取引・配置・運用」に関する実証研究:情報サービス産業の下流工程における「職務」に着目して
・生活保護制度における面接相談の実態と機能
・戦後日本の開業医における病床所有
・日本企業における外国人ホワイトカラーの雇用管理:「雇用形態」に着目して
・中国都市部における住民自治組織に関する研究:北京市社区を事例に
・中堅企業における新規大卒者採用活動の社会学的研究

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