社会学研究科紹介

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社会文化研究分野

1.社会文化研究分野はどんな学問領域を含むか?

 社会文化研究分野は、人間の精神活動によって築かれたさまざまな文化事象のうち、特に、広い意味で言語によって表現された人間の知的・精神的営みの分析を中心的な研究テーマとしています。本分野は多様なディシプリンによって構成されていますが、大きく二つの柱に分けることができます。ひとつは哲学・社会思想のグループであり、もう一方は文芸・言語・民族文化研究のグループです。これらふたつのグループを含む本分野は従って、広い学問領域をカバーする分野であり、各領域のアプローチもそれぞれの伝統に従ってさまざまですが、いずれの領域においても、言語を媒体とした知的営為を検討することが主たる目的であるという点は共通しています。従って学生に対しても、自ら設定したテーマに関して、原典や一次資料を徹底的に読み込み、分析することを基本的な研究姿勢として要求しています。そのため、どの領域においても、自分が取り組む専門にとくに必要な言語を習得することが、何よりも強く求められるところに特徴があります。
 このように本研究分野を構成するスタッフは、その専門領域によってふたつのグループに分かれていますが、問題意識や研究アプローチ、教育方針などを共有し、担当科目も共同で運営しています。

2.研究内容、および講義概要

2.1 哲学・社会思想グループの研究内容、および講義概要
 このグループは、人間の文化的実践を理論的・根源的な観点から分析する哲学および倫理学と、より歴史的、社会的な視点を重視する社会思想とに区分されています。本グループのスタッフの多くはヨーロッパ近・現代の哲学・社会思想を専門としていますが、現在、わが国では哲学・思想に専門的に取り組む講座を持つ大学が少なくなってきているという状況もあり、各スタッフは自分の専門分野をベースにした教育・研究を行いながらも、幅広い問題に対応するための努力を続けています。また、メンバー構成においても、どちらかといえば特定の時代や地域における哲学・思想を固有の専門とするタイプの研究者に、科学哲学や応用倫理学のように問題関心や分析視角からテーマにアプローチする研究者が加わることで、より多様な学生の関心に応えることを目指しています。ここでは、古典的な哲学作品を丁寧に読み進め、解釈を深めていくことはもちろん、対象とする過去の社会の知的・精神的ありようを学ぶために当時のテキストを幅広く探索することも、さらには極めて現代的な問題意識から出発して、哲学的思考を訓練することによって自らの問題関心をより鍛え上げていくことも可能です。少なくともわたしたちスタッフは、ここで学ぼうとする院生に対してこのような場を提供することを理想としています。
 過去の知的営為を学ぶことの目的は、単にそこで展開される内容を理論的側面からのみ把握することに尽きるわけではありません。そうした議論が成立し、意義を持つことを可能にしている歴史的条件を考察することもまた、重要なアプローチのひとつです。それによってわたしたちは、自分たちが生きる社会とは異なる社会をより深く理解することができるだけでなく、現代社会が抱える問題を別の角度から眺めることも可能になるのです。他者を認識することは間接的に自己を認識することにつながります。本分野で学ぶ皆さんには、それらを生み出した社会―歴史的に条件づけられた存在としての社会―を意識しながら、哲学や思想を研究し、社会とその中で繰り広げられる知的営為とがどのように関わり合っているのかを考察することが期待されています。

 本分野での社会思想研究グループの大学院講義は、それぞれの専門に応じてそれぞれ3名ずつの教員が担当する「社会哲学」および「社会思想」が専門講義の柱となっています。これらふたつの科目では、年度ごとに異なるテーマを設定し、それぞれのテーマについてテキストの精読や議論を通じて知識と理解を深めていくことが目的とされています。このほかに、学部学生との共修科目として「社会哲学原典講読」、「社会思想史原典講読」および「哲学特論」が開講されています。このうちふたつの「原典講読」は、後述する「社会文化論原典講読」とならんで、主として言語活動によって表明された人間の知的・精神的営為の探求という、本研究分野の目的に沿って設置された講義です。ここでは設定されたテーマの対応した原典を少人数の授業で精緻に読み込み、正確に解釈するための訓練が行われ、テーマの深い理解だけでなく語学力の向上に役立つことが意識されています。

2.2 文芸・言語・民族文化研究グループの研究内容、および講義概要
 本分野を構成するもうひとつのグループは、人間の豊かな想像力が生み出したさまざまな言語芸術、とりわけ文芸や文化論等を主な研究対象とするスタッフと、言語学を専門とするスタッフ、および民族文化研究をフィールドとするスタッフから構成されています。本グループの特徴は、メンバー各自がそれぞれ特定の学問領域における一般的・理論的ディシプリンの研究に携わると同時に、おのおのがとりわけ深く関わる特定の地域および言語をもっていることです。現在、このグループに所属する5名のスタッフはそれぞれ、イギリスを中心とする英語圏の文芸思想、フランス語圏の文芸思想、ドイツ語圏の文芸思想、ロシアの言語研究、台湾を中心とした中国語圏の民族文化研究を専門としていますが、それに留まらず、こうした専門領域での研究をベースにそれらと日本における文化事象との比較・対象的観点からの研究にも携わり、院生の指導にも当たっています。
 文芸や言語を対象とした研究というと、文学部での研究を思い浮かべる人も多いかもしれません。もちろん、スタッフには文学研究における訓練を積み、その分野の専門家である研究者も含まれています。ですが、社会文化研究分野という名称が示唆するように、文学であれ言語活動であれ、それらが文化という側面から見た社会的機能の一種であることが重視されています。いいかえれば、言語を主要な媒体とする文化活動は社会においてどのような役割を果たしているのか、あるいはどういった社会的状況が言語による文化活動を条件付けているのかといった問題にも強い関心を寄せています。ここで学ぼうとする皆さんにもこうした観点を共有し、研究を進めて欲しいと考えています。

 文芸・言語・民族文化研究グループの大学院講義では、文芸思想スタッフによる「文芸思想研究」と、言語研究および民族文化研究のスタッフによる「文化生成研究」「言語社会学」を専門科目の大きな柱としています。いずれの講義においても、その年度のテーマとして掲げられている言語・文化活動を、その背景となる社会の中に位置づけながら理解することが目的とされています。また、学部共修科目である「社会文化論原典講読」は、すでに述べた「社会哲学原典講読」および「社会思想史原典講読」と同じく、少人数授業の特性をいかし、原典や一次資料を時間をかけて丹念に読み解く姿勢を養うためのトレーニングの場として設置されています。言語研究に関しては、「言語社会学特論」が学部共修科目として置かれています。

3.科目選択のヒント、および履修モデル

 科目の選択に際しては、上述のような研究のグループに応じて、表2.の大学院専門科目を中心にして履修計画を立ててください。これらの科目は原則として毎年開講されます。自分の研究にとって中心となる科目のほかは、その研究にとくに関係する領域や、関係する地域、および研究に必要な言語を考慮して選択してください。学部との共修科目は、各教員が担当科目をローテーションで開講することがあるため、毎年必ず開講されないものもあります。また、一部の科目では、半年の授業を連続して一年間ひとつの文献の講読に取り組むかたちになっています。以下にいくつかの履修モデルを紹介します。

4.学位論文テーマの紹介、研究に際して心がけること

 本研究分野はひとつの分野として共通の教育目標をもっていますが、教員の専門領域や研究教育上カバーする諸領域を含めると、非常にバラエティに富んだ研究活動が行われているといえます。ここでは平成26年度までに提出された修士学位論文のテーマをいくつか以下に紹介します(順不同)。
 こうした一覧からも、本分野の多彩な性格が窺えると思います。従って、本分野での研究は、同じ指導教員の下でも決して単一の目標に向けて行われるものではなく、学生ひとりひとりが自分の真に探求したい問題、関心のある領域を各自十分に見定めることが重要です。その問題を探求するためにはどのような方法がふさわしいか、どのような文献の読解や資料の収集、基礎学習が必要か、などといった研究方法については、教員の指導を仰ぐ必要がありますが、それはあくまでも学生の研究の手助けをするためのものです。

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