社会学研究科について

一橋大学大学院社会学研究科は、1953年の創設以来、すでに半世紀以上にわたり、社会科学・人文科学の幅広い分野を横断する教育と研究の拠点として、多くのすぐれた人材を輩出してきました。21世紀を迎え、学術教育、経済、行政、市民社会といった領域を問わず、高度の専門知識や多様な能力が人びとに求められるようになっています。また、中核的な研究者や高い学識をもつ職業人の流動性は、国境を越えつつ、ますます高くなっています。社会学研究科の目標は、専門知識はもちろん、企画力、調査力、問題(イシュー)と学問分野(ディシプリン)の統合力などを身につけた、どのような場においても十分な能力とリーダーシップを発揮しうる研究者・社会人を養成することにあります。

こうした課題にこたえるため、大学院社会学研究科は総合社会科学専攻と地球社会研究専攻という二つの専攻を設けています。両専攻はそれぞれに特色ある教育実践を展開してきましたが、2023年度の組織改編により有機的に統合されることになりました。

社会学研究科は、教育、研究の場としての男女共同参画社会形成の実践にも重きをおいています。女性教員比率は31%[2021年5月1日現在]と、一橋大学全体でも最も高く、大学院の女性学生比率も49%[2021年5月1日現在]と高い数字を示しています。今後も男女共同参画の環境整備に努め、女性教員比率のいっそうの向上と女性学生の積極的受け入れを目指します。 (注記:「女性教員比率」は、特任教授を含む教授、准教授、専任講師において女性教員が占める比率)

社会学研究科の教育

社会学研究科は、大学院教育の質的充実にも力を注ぎ、研究者や専門職業人としてのキャリア形成を支援してきました。高度知識社会の要請する、高い学識を持つ社会人と研究者の育成を目指し、博士学位取得者数は大きく増加しています。また、さまざまな専門的スキルを身につけた大学院修了生が、経済界や行政、ジャーナリズムから市民社会に至る幅広い領域で活躍しています。

1)テーマを深く究める
大学院生は4つの研究分野(社会学研究分野、共生社会研究分野、歴史社会文化研究分野、超域社会研究分野)のいずれかに所属し、少人数の演習(ゼミナール)を基盤に、それぞれの指導教員の指導のもとで学習・研究を進め、自身の研究テーマを深く専門的に学んで修士論文に仕上げます。すべての大学院生が、対象領域の高度な学識を持つ指導教員のゼミナールのほか、周辺領域の教員のゼミナールを「サブ・ゼミナール」として選択することができます。

2)さまざまな方法を学ぶ
社会学研究科では、他大学ではいくつかの研究科に分散して置かれている社会学、哲学・思想、歴史学、教育学、政治学、社会人類学、社会心理学などの学問を、同一専攻内で多角的に学び、対象に接近するさまざまな専門的方法を体得し、総合的視野と多元的思考を身につけることができます。

3)高度なリーダーシップを養う
21世紀の社会は、グローバリゼーション、地球的格差や差別、情報ネットワーク化、環境と開発、科学技術の発展と倫理、余暇とアメニティ、少子高齢化、ジェンダー・世代、多文化社会化など、従来の個別社会科学では解きほぐし難い大きな問題を抱えています。社会学研究科では、専門性と総合性をあわせ持ち、国際的視野から最先端の問題を捉える、人間性豊かな研究者・指導的職業人の育成をめざします。

社会学研究科の教育プログラム

社会学研究科には、4つの研究分野をそれぞれ構成する演習・講義群のほかに、「先端課題研究プロジェクトと学際共創研究」と「リサーチワークショップとリサーチコロキアム」というユニークなプログラムが置かれています。

1)先端課題研究プロジェクトと学際共創研究
「先端課題研究プロジェクト」は、異なる学問領域を専門とする教員と大学院生が共同して遂行する、問題志向的・課題志向的な学際研究プロジェクトです。各プロジェクトは3年を単位とし、専攻内では常に3本のプロジェクトが同時進行しています。総合社会科学専攻の大学院生はいずれのプロジェクトにも参加することができ、教員や他の大学院生とともに研究を推進します。プロジェクトに参加すると、様々な領域の先端的な研究成果に触れることができるだけでなく、問題志向的・課題志向的な研究の進め方、リサーチワークや分析、プレゼンテーションの方法などを、実践的に学ぶことができます。単年度の履修も可能です。また、2023年度からは、東京外国語大学大学院総合国際学研究院の教員・院生と一緒に共同研究を行うプロジェクト「学際共創研究」もスタートします。

2)リサーチワークショップとリサーチコロキアム
リサーチワークショップは、修士課程の学生が、修士論文の作成を支援するためのプログラムです。リサーチワークショップは、修士課程2年次生の必修科目として設定されており、研究分野ごとに運営されています。修士論文を執筆する大学院生は、各研究分野の全教員の出席のもと、修士論文に関する発表を行い、そこでの質疑応答等を参考にして自らの研究を捉え直し、論文の完成に取り組むことができます。このプログラムにより、指導教員による個別指導に加え、自身の研究領域を超えた多面的・組織的な指導を受けることができます。リサーチワークショップは、年4回開催され、4月はガイダンス、6月は構想発表会、9―10月は中間発表会、2月は最終試験の場となります。すべての大学院生はオブザーバーとして参加することができますので、修士課程1年次の時から参加しておくことを推奨します。

リサーチコロキアムは、リサーチワークショップの博士課程版で、博士論文の作成を支援するためのプログラムです。リサーチコロキアムは、博士課程の単位としては設定されていませんが、博士論文提出のための要件となる必修の研究会です。博士論文を執筆する大学院生は、通常、2年次の2月末頃に開催されるリサーチコロキアムで、博士論文へ向けた研究の進捗を報告します。リサーチコロキアムには各研究分野の教員が集い、事前に提出された報告ペーパーをもとに報告と質疑応答が行われます。すべての大学院生はオブザーバーとして参加可能です。分野の教員から幅広く助言を得ることができる機会ですので、是非うまく活用してください。



大学院社会学研究科分野

  • 総合社会科学専攻
    • 社会学研究分野 (社会学史、社会理論、政治社会学、計量社会学、文化の社会学、都市社会学、国際社会学、ジェンダー・セクシュアリティ研究)
    • 共生社会研究分野 (教育社会学、文化精神医学、スポーツ社会学、社会政策)
    • 歴史社会文化研究分野 (日本史、アジア史、アメリカ史、ヨーロッパ史、社会思想史、哲学・倫理学、文芸思想、言語社会学)
    • 超域社会研究分野 (社会心理学、社会人類学、政治学、環境と社会研究)
  • 地球社会研究専攻