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電子版『一橋社会科学』刊行の辞

電子版『一橋社会科学』刊行の辞
新たな船出にあたって

2009年9月24 日
一橋大学大学院社会学研究科長 落合一泰

 一橋大学社会学研究科は、電子媒体主体の紀要『一橋社会科学』の刊行を開始する。
 2006年創刊の『一橋社会科学』は、これまで紙媒体で発行されてきた。ここで発行形態を改める主たる理由は、つぎの2点である。第一に、厳格な査読制度を維持しつつ、投稿から刊行にいたる時間の短縮を図ること。第二に、予算に制約のあるなかで、論考がより多くの読者の目に触れる手段を講じること。
 紙媒体では、一定数の論考が同一の編集段階に達して初めて印刷製本に取り掛かるため、足並みが揃わないと刊行に遅れが生じる。それでは論考の鮮度やオリジナルなアイデアを重視する分野の投稿を数多く望むことができない。また、本誌は予算的制約から小部数発行であり、国内の主要学術機関・図書館等への寄贈をおもな公開方法としてきた。そのため、その機関へのアクセスをもたない限り、読者が本誌を目にすることはむずかしかった。
 そうしたなか、2007年に一橋大学の研究・教育活動の成果をインターネットで広く世界に発信する一橋大学機関リポジトリ制度が始動した。『一橋社会科学』PDF版に対しても附属図書館を通じ外部からのアクセスが可能になり、刊行から1年程度でアクセス数が発行部数を超えることが分かった。この事実に意を強くした本研究科は、本誌の電子媒体化と論考の逐次刊行化を図り、上記問題点の解決を目指す決断を下したのである。
 国内において、電子媒体を主体とする社会科学系学術雑誌は、いまだ少数である。しかし、本誌に関しては、この改革が執筆者・読者の利益の維持拡大および国立大学法人の研究科紀要としての学術的・社会的使命の遂行につながると信じる。本誌のこの新たな船出が成功し、執筆者・読者から倍旧の支持が寄せられることを期待してやまない。