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社会学部講義科目

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社会学科導入科目 40108 冬 月曜日2時限  木曜日2時限 2単位

倫理学概論

担当教員:上野 大樹
【教授言語】

日本語

【学部・学年の指定】

学部生

【授業科目の目的と概要】

本講義では、倫理学(規範倫理学)と政治哲学の諸理論と歴史を概説し、同時に応用倫理学的トピックについても適宜とりあげる。
応用倫理学上のさまざまな事例について複数の規範倫理学的立場からの分析が行えるようになること。また、応用倫理学的な分析能力を養うにとどまらず、倫理学と政治哲学の諸理論を単なる分析ツールとして並列的にとらえることを超えて、歴史(思想史)のなかに位置づけ統一的かつ多面的に把握できるようになること。

【授業の内容・計画(回数・日付・テーマ等)】

本講義では、倫理学(規範倫理学)と政治哲学の諸理論と歴史を概説し、同時に応用倫理学的トピックについても適宜とりあげる。
こんにち倫理学が大学で講義され研究される学問として正当性を担保されるためには、少なくとも二つの歴史・社会的な状況にたいして適切に応答できなければならない。第一に、18世紀ごろから今日にいたる「近代」という時代の道徳的課題に応えることが求められる。伝統社会では一般に共同体の一体性を重視する集団主義的メンタリティが優位にあり、共同体が個人に課す倫理規範は、それがなぜ守らなければならないのかを問いなおす契機を欠いたまま、ただ自明で自然なものとして受けとられる傾向にある。これに対して、近代の倫理・道徳は、当然のものとされてきた規範的権威の正当性を根底から問いなおす批判精神によって特徴づけられる。社会的に当たり前のものとされている価値観や慣習がどのような理由でそう考えられているのかを明らかにし、そこにじつは正当な理由が見出せない場合にはそうした社会規範を批判し個人をそこから解放していくという課題は、現代の倫理学にとってもなお重要な意味を帯びている。近代的な批判的思考の涵養が、倫理学の第一の目的である。だが第二に、これまでの近代社会が直面してきた問題とも大きく異なるすぐれて現代的な道徳的課題、つまり「ポストモダン」ないし「後期近代」という時代の要請に真摯に応答することも、今日の倫理学には求められる。あらゆる倫理的・道徳的な規範に批判の眼差しをむける近代的精神は、それが全面化した結果として、そもそも社会の全成員が受け入れるべき倫理など存在しないのではないかという深刻な疑念を呼び起こす。こうしたシニシズムやニヒリズム、あるいは価値相対主義が密かに蔓延するのが、ポストモダン社会の最大の特徴である。そうした時代状況のなかでは、特殊な社会規範から個人を解放していくことがより普遍的な倫理・道徳の実現へとつながるというストーリー(大きな物語)じたいも自明視することのない、その意味で現代的な倫理学を構築することが必須要件となるのである。従来の倫理学のテキストでは必ずしも十分に扱われてこなかったポストモダン的課題への応答にも時間を割くことで、本講義では、「結局のところ人それぞれ」にもかかわらず「学問的に正しいとされる倫理学理論」を講壇から押しつけてくる擬似学問だという倫理学への不信にも正面から取り組む。
本講義では、功利主義・義務論・徳倫理という規範倫理学の主要な理論を、応用的事例にも触れながら順次解説していくとともに、歴史的なアプローチ(思想の歴史であるから「思想史」的アプローチ)を通じて三者の連関についても論じる。近代初頭の啓蒙思想においては、現在のようにこの三つを競合関係にある規範理論として理解するのではなく、道徳哲学を形づくる三つの構成要素として位置づける見方が存在した。思想史を参照することで、現代の規範理論にはらまれる盲点に検討を加えることも、本講義の重視する点である。

[ 計画(回数、日付、テーマ等) ]
第1回 規範倫理学の三つの立場についての一般的説明、およびメタ倫理学について。
第2回 応用倫理(1):医療・生命倫理
第3回 リベラリズムにおける正義と善の調停:ロールズの正義論と社会契約論
第4回 リバタリアニズムと古典的リベラリズム:分配的正義と交換的正義・匡正的正義
第5回 リベラル・コミュニタリアン論争:共通善としての正義と自由
第6回 消極的自由:バーリンとポスト全体主義の社会哲学
第7回 積極的自由:アーレント、テイラー、現代共和主義
第8回 コミュニタリアニズムと徳倫理学:人権と尊厳
第9回 アリストテレスの徳倫理学(1):慎慮の実践哲学
第10回 アリストテレスの徳倫理学(2):現代のアリストテレス主義
第11回 功利主義と厚生経済学
第12回 道徳哲学の義務論的転回:カントと現代リベラリズム
第13回 応用倫理(2):ヘイト・スピーチと言論の自由

【テキスト・文献】

【教科書】
・品川哲彦『倫理学の話』、ナカニシヤ出版、2015年。
※本講義では扱いきれない倫理学・政治哲学の理論も網羅された最適の概説書。価格も単行本としては良心的なため、各自購入すること。なおリーディング・アサインメントとしても、一部の章を指定する予定。

【参考文献】
・大澤真幸『「正義」を考える』、NHK出版新書、2011年。
※規範倫理学ないし政治哲学の三つの立場について簡便にまとめられている。新書で安価なので、購入を勧める。

・マイケル・サンデル、鬼澤忍訳『これからの「正義」の話をしよう』、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2011年。
※三つの規範理論上の立場についてある程度立ち入った議論が展開されている。政治哲学ブームをつくりだした「ハーバード白熱教室」の文庫版。

【キーワード】

 

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