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2009年度第4回コロキアム 報告書

最終変更日時 2009年11月24日 11時21分

研究職志望者のための教育・研究業績書作成講座

1. 概要


1. 日時:2009年10月26日(月)11:15?12:45
2. 場所:第2講義棟405教室
3. 参加人数:21名(うちアンケート回答者16名)
4. 告知方法:ポスター掲示,院生・教員一斉メール
5. 報告者(報告順)

  • 西野史子先生(雇用政策,労働社会学).社会学研究科専任講師
  • 中村寛先生(文化人類学,人種関係論).多摩美術大学造形表現学部専任講師・本学大学院社会学研究科地球社会研究専攻非常勤講師
  • 佐藤仁史先生(中国近現代社会史).社会学研究科准教授

6. スタッフ

  • 企画と司会進行:佐藤
  • 進行補助:梶村泰久氏(RA)
  • 設営:梶村泰久氏(RA),佐藤


2. 目的――各報告者の事例にもとづき以下を理解する.

1. 教育・研究業績書の構成およびその業績リストとの違いについて理解する.
2. 教育・研究業績書の作成に必要な用語を理解するとともに,何をどこまで業績として記述しアピールするかを理解する.
3. 着任後の抱負等に関する書類をどう作成し,何を強調するかについて理解する.
4. 以上を各研究分野の実情に即して考察する.

3. 期待される成果

  1. 教育・研究業績書の作成において,申請先機関の分野や教育理念,申請するポストの職務内容に応じた自己アピールの方法について理解することができる.その際に,何をどこまで記述するのか,現職の教員の眼からみて適切な分量と表現技法について学ぶことができる.
  2. 単著と共著,著書と学術論文といった,研究業績にかかる基本的な用語の定義や区分について的確に理解することができる.
  3. 教育実践上の業績(教育内容・方法の工夫,作成した教科書・教材・参考書など)をどのように表現するかについてヒントを得ることができる.
  4. 競争的資金を活用した調査経験や実務経験についてのアピールの仕方を学ぶとともに,科研費等の調査研究プロジェクトへの参加の重要性を再確認することができる.

4. 内容




5. コロキアムの要約


  • 本コロキアムでは,研究職人事の審査の際にも求められる教育・研究業績書や履歴書,研究計画書や講義計画書の作成方法について学ぶ場を設定した.今回は,現役の若手教員3名を招聘し,それぞれの経験から,大学教員の採用にかかる応募書類の作成方法と留意すべき点についてお話しいただいた.本コロキアムでの各報告の要旨は以下のとおりである.
  • 事例報告1は西野史子講師による報告である.本報告では公募に申請する際に重要な点として,(1)公募の際に「足切り」に遭わないように,80点程度の論文を数多く出版することと,(2)「弱い紐帯」の効用,つまり積極派の学内外の友人の影響を適度に受けることが強調された.
  • 業績書作成に際してのポイントは,プロトタイプの作成,つまり「時系列」で研究・教育のすべてを網羅するものをまず書いてみることである.そのうえで,実際の書類の作成段階においては,応募先の読み手を意識した記述方法を取り,また公募の分野に応じてプロトタイプを削る,あるいは膨らませる作業が必要となる.また,業績書には「ひとつのストーリー」に加えて「柔軟性」が求められる.つまり,研究の中心線を明示したうえで,そこから枝葉をつける作業である.枝葉の部分には,着任後に複数の役割が期待される若手の応募者が,隣接分野での教育にも対応が可能であることをアピールすることが提起された.
  • 事例報告2は中村寛講師による報告である.本報告は,自身の経験にもとづき,講義計画書などの作成の際に必要な諸活動や心構えに焦点をあてた.とりわけ,申請・受験前に教員,友人,志望するアドバイザーに研究の相談を持ちかけることが基本であることが提起された.こうした待つ力,溜める力,巻き込まれる力などは,各種奨学金や公募への申請のみならず,文化人類学や学際的研究を継続するにあたって必要であったという.
  • つぎに面接の対策や授業シラバス・履歴書の作成についてであるが,報告者は5分程度の面接の練習が必要であると提起する.さらに,履歴書や授業シラバスの作成については,複数の人に原稿を見てもらい,その作成方法を学び,出し続けることが肝心であるという.書類を準備することで,これまでの仕事を振り返るきっかけになるからである.
  • 事例報告3は佐藤仁史准教授による報告である.本報告は,研究歴と研究計画書の作成に関して,非専門領域の研究者が読んでも内容を理解できることが重要であると強調した.とりわけ,研究計画書の作成においては,大きな研究動向や研究史の潮流のなかに自らの研究を位置づけ,手堅いメインテーマに加えサブテーマでも冒険を行っていることをアピールすることが重要な作業となる.また,講義計画の作成においては,担当予定科目にもっとも関連する分野の概要と,それを明確に切ることのできる概念を用いて,講義計画を組み立てるのが重要となる.
  • 申請書作成の前段階では,書類の原稿や論文を非研究者の友人にみてもらうことが重要である.また,「疑似公募」としての日本学術振興会の特別研究員制度や民間助成金への申請を積極的に行うことも必要であることが提起された.

6. アンケート回答者(参加者21名中16名)の内訳


 表1:専攻別構成       表2:学年別構成     表3:性別構成


7. 満足度および参加者からの声


本コロキアムは,博士後期課程の院生の実際的なニーズに応えるような内容構成をとっており,またこれまでのコロキアムに比べて活発な質疑応答が行われたことから,各参加者にとって充実したコロキアムであったことが覗える.

 表:満足度について(実数)


※アンケートの回答者からの声は,本ウェブサイトの「学内向け」(要ログイン)をご参照ください.

8. 今後の課題

  1. 今回の導入ガイダンスでは報告資料のハードコピーを配布せず,パワーポイントのみで報告を行った.参加者からは不満の声が上がり,それに応えるため,後日院生一斉メールで配信するという事態となった.今後は報告の際にはハードコピーを配布し,また現行の10分から15分程度に導入ガイダンスの時間を延ばすことで,駆け足の説明にならないように留意する次第である.
  2. やむをえない理由がほとんどであろうが,資料のみを持ち帰る,あるいは参加はせずに友人や後輩にレジュメの残部の調達をお願いする院生たちが散見された.コロキアムの内容に対して院生たちの関心があるのは喜ばしいことだが,学内外から貴重な時間を割いてお越しいただいた登壇者の方々に対しては失礼かもしれない.院生の抱える諸事情を理解したうえでこの点を今後の方策としてどのように考えていくか,意見を賜りたいと思う.

以上