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2009年度第2回コロキアム 報告書

最終変更日時 2009年07月09日 18時17分

ジュニアフェローの経験から学ぶ――博士課程での研究戦略と研究職への就職――


1. 概要

  1. 日時: 2009年6月10日(水)4限(14:40?16:10)
  2. 場所: 第2講義棟307教室
  3. 告知方法: ポスター掲示,院生・教員一斉メール,各共同研究室ML(再告知も含む)
  4. 報告者: 戸高七菜先生(教育社会学)、マーク・ウィンチェスター先生(アイヌ思想史)、酒井裕美先生(朝鮮近代史)
  5. スタッフ: 企画と司会進行:佐藤、進行補助:荒木淳子先生、設営:荒木先生,佐藤

2. 目的

  1. 今年度より本研究科のジュニアフェロー(特任講師)として活躍する3名の先輩方にご登壇いただき,博士後期課程在学時の研究戦略や博論執筆のスケジュール,研究・生活とのバランスについての経験を共有していただく.
  2. 各報告を通じて,多様な研究分野やアプローチの視角から,質の高い博士論文の基準や執筆のノウハウについて理解を深める.
  3. ジュニアフェローとして採用されるために必要な研究戦略について考える場を提供する.

3. 期待される成果

  1. 博士後期課程でのライフコースを,博論執筆,学会報告や投稿論文の執筆,(史)資料収集,私生活とのバランスとのかかわりで理解することができる.
  2. ジュニアフェローになるための博論執筆に求められる研究水準やそのための諸活動(博論執筆のスケジュール)について,異なる専門分野やアプローチをとる3名の登壇者の講演をもとに理解をすることができる.
  3. 留学生にとっては,外国人研究者として日本で研究活動を継続するためのノウハウを得ることができる.日本人学生にとっては,在学中の海外での留学や研究活動に関するノウハウを得ることができる.
  4. ジュニアフェローとしての在職期間中に求められる活動を,研究(投稿論文や書籍の出版)および教育(本学開講科目の担当)の両面から理解できる.

4. 内容

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5. コロキアムの要約

  • 本コロキアムでは,本研究科で昨年度博士号を取得した若手研究者3名に.博士論文提出までに至る過程を,「入口」(進学,修士論文の加工と発展),「中身」(FW・史資料収集,学会報告,投稿論文執筆,博論執筆),「出口」(就職やその後の研究の発展)を軸に報告していただいた.
  • 導入セッションでは,佐藤が司会として社会学研究科の2005年度から2008年度までの学位取得者数および2006年度から2009年度にかけてのジュニアフェロー制度への申請者/採用者数を提示し,両者の相関関係を指摘した.その後,ジュニアフェロー制度の概要に触れ,「研究」と「教育」それぞれの領域で在職中に求められる諸活動を説明した.
  • 登壇者による報告は,各自が事前に作成した博士後期課程在学時における研究活動に関するフローチャートをもとになされた.各報告の概要は以下のとおりである.
  • 第一報告者である戸高七菜講師(教育社会学)からは,博士論文を3年以内に書き上げた経緯について説明がなされた.とりわけ,進学当初より指導教員が2008年度に定年退職することを肝に銘じていたことから,博士論文執筆を優先したことが強調された.戸高講師は,D1の冬にすでに博士論文計画書の作成を開始し,D2では先行研究の再整理を集中して行ったのち,D3に進級してからは指導教員から集中個人指導を受けた経験を説明した.なお,戸高講師は在学中には学会報告を2回,投稿論文の執筆は行わなかった.他の諸研究活動を控えたことが,結果的に効率的な博士論文の執筆につながったという.
  • 第二報告者であるマーク・ウィンチェスター講師(アイヌ思想史)も,3年以内に博士論文を提出した.ウィンチェスター講師は英国出身であるが,修士論文・博士論文ともに日本語で執筆した.将来は日本の大学での就職を考えていることと,アイヌを対象にした外国人による研究活動(とりわけ研究成果を対象者集団に公表しないこと)にある種の不満を抱いた結果であるからだという.ウィンチェスター講師は,文献資料を中心に論文を執筆した.博士論文に必要な文献は英国での学部時代および本学での修士課程在学中にほとんど収集したようである.したがって,博士後期課程在学中にはD1のころに行った補足資料調査を除き行っていない.そのかわりに,D1の時点で博士論文計画書の執筆を開始し,同時に各種研究会や国内・国際学会での報告および翻訳活動を積極的に行った.なお博士論文の提出は一週間前に行ったようである.
  • 第三報告者である酒井裕美講師(朝鮮近代史)は,2001年度に博士後期課程に入学した.在学中には如水会の交換学生として韓国に1年間留学,その後3年半にわたり日本語講師として勤務した経験をもつ.酒井講師は数多くの投稿論文や翻訳を出版しているが,博士論文とあわせてその多くを韓国で執筆したことになる.酒井講師は,交換留学は韓国語を飛躍的に上達させるためのよき機会であり,また韓国での客員講師・兼坦教授としての在職経験は経済的・時間的な面で研究活動を継続する一助となったという.

以上